第12話
「フレアフレアフレアフレアフレア」
と、和はジェイの後頭部に杖先を当てて杖先からジェイの後頭部にゼロ距離で火の玉を連続で放った。ジェイの姿をしたゴーレムの頭は丸焦げになった。
「いよっしゃー!」
和は嬉しい感情を前面に表しガッツポーズをした。
「ナイス和」
「よくやったわ、和」
と、俺と詩織は和の見事な勝利に拍手を送った。
よしっ、俺の言った通り和が動いて勝った。これで俺達の完全勝利だ。
「え?なんか卑怯じゃないですか?」
レベッカは不安そうに俺と詩織の顔を見た。
「いやルールは守ってるから」
俺は手を振り全く問題ないことをアピールした。
「そうよ、ルールを守って戦ったんだから問題ないわ」
詩織がレベッカの肩に腕を回し安心させた。
「ふざけんな‼ルール違反だろこんなの無効だ‼」
と、ジェイはステージ横からジャッジゴーレムに訴えた。
「ルール違反だぁ⁉どこにスキルを使った状態でステージに入ってはいけないってルールがあるんだよ。えぇ⁉」
和はチンピラのごとくオラ付いた口調で言った。
「ルール守ってるからってやっていいことと悪いことがあるだろ⁉」
ジェイはチンピラっぽい和に対してチンピラな口調で言い返した。
「お辞儀してる女の子の首切ったことを許容してるくせに何言ってんのよ、筋肉バカ」
と、詩織が右手を口に添えステージ横から野次を飛ばした。
「そうだぞ、筋肉馬鹿」
俺も楽しそうなので右手を口に添え、野次を飛ばした。
それにしても詩織の言う通りだな自分たちも似たようなことやって勝ったくせに無効になると思ったんだ?バカなの、ねえバカなの?
「ショウシャハカズセンシュデス」
とジャッジゴーレムは和サイドの旗を上げた。
「ジャッジゴーレムが言うんだ仕方ねえ何取られても俺が取り返してやるから安心しろ」
ダズが励ますように力強くジェイの肩を叩いた。
「そうしようぜ。俺らは二人とも負けちまったんだからな」
カルロスがもう片方のジェイの肩を叩いた。
「取り込み中悪いが今回はダズお前を貰う、それで次の試合は不戦勝でこっちの勝ちだ」
と、俺は勝利の笑みを浮かべてダズを指差した。
「な⁉」
ダズパーティー、レベッカ、ローレンさんは俺の発言に驚きを隠せず口から言葉が漏れた。
「お前をこっちのパーティーにスカウトするだから次の試合に出場者がいないよって俺たちの勝ちっていうことだ」
ダズは俺の言葉を聞き絶望して倒れこんだ。
「ということは屑さんたちの完全勝利ですね。なんだか卑怯な気がしますが」
ローレンさんは首を傾げいまいち納得は出来ていない様子だ。
「それじゃ可哀そうだからダズお前は要らないから元のパーティーに戻っていいぞ」
俺は手でしっしっと払いのけるジェスチャーをした。
「は⁉」
「兄貴」
「ダズさん」
倒れているダズにジェイとカルロスが駆け寄る。
まだだ……俺を小バカにしていた復讐はここからだ!
「そして三戦目の勝利で貰うものはこっちが貰うものはダズお前の家だ」
「は⁉家?そんな生きていけなくなる頼む別のものにしてくれ」
と、ダズは俺に頭を下げて懇願した。
「何言ってるんだ?何でもって言ってただろ」
俺は腰を落としダズと目線を合わせて言った。
フッフッフこの俺に勝負を挑むからこうなるんだよ、このバカがよぉ‼
「でも家は…」
ダズは絶望で頭が回らなくなり言葉を詰まらせた。
「そうだぞ、卑怯な手を使って勝ったくせに」
カルロスが言葉に詰まったダズを庇って言った。
「何言ってんだ?お前らだって卑怯な手を使ってレベッカに勝ってペンダント取ったんだろ?ジャッジゴーレム頼む」
と、俺はダズを指差しジャッジゴーレムに命令し鍵を奪い取らせた。
「あ…あぁ…」
ダズは絶望で言葉を失い座り込んだまま点を仰ぎ見ている。
「それじゃ行くか」
俺達はダズに背を向けて歩き出した。
「いくらなんでも卑怯だったのではないですか?」
レベッカは立ち止り俺の袖を掴んで言った。
この子は随分と道徳的な人間だな。人に騙されることが多くて大変そうだ。
「そんなに心が辛いなら卑怯な人間に対して相手の得意な分野で戦って勝っただけだと思えばいいんだよ。」
俺はレベッカの手を袖から離した。
「確かにそうですね。相手の得意分野で勝負して勝ったと思うと悪いことした気分になりませんね。」
と、レベッカは手を顎に当てた。
この子は本当に大丈夫か?将来とんでもない詐欺に引っかかるんじゃないのか?
俺達はギルドの外に来た。空は薄い橙色に染まり太陽は真っ赤になって地平線に沈み始めている、すっかり夕暮れだ。
「またどこかでお会いしましょう」
ローレンさんとレベッカは口をそろえて言い、俺達とは反対の帰路に就いた。その後すぐ後ろから誰かが走って来る足音がした。
「あの皆さん!」
振り返ると後ろにはレベッカがいた。
「私を仲間に」
「勿論いいわ」
「黙れバカ!今明らかに感動的なシーンだっただろ。レベッカもう一度言ってくれ」
と、俺は詩織の額をチョップしどうぞ喋り下さいと言わんばかりにレベッカに手を向けた。
「えぇ……、恥ずかしい。あの私を仲間にしてもらえませんか?今回のことで分かったのです。真面目な人のままでいたら大事なものを失うだけなのだとだから皆さんの下で勉強させてください」
レベッカは腰を折って深々と頭を下げて、頼み込んできた。。
「夜の学習は私がしてあげるわ」
詩織はレベッカに手を差し伸べた。
相変わらずこいつは空気読めないやつだな……。レベッカは剣持ってたし前衛は出来るのだろうから仲間に加えることは文句はないが人に騙されて金を騙し取られたりしないのかが心配だ。
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