第11話
「そんなしょうもない手が効くと思ったの?早いところ終わらせてレベッカちゃんに感謝されたいからさっさとやるわよ。プラスステータス」
詩織は自分自身に全の力上昇のバフを掛けた。そして手に持っていた杖を地面に投げ捨て左手に持っていた剣を鞘から抜いた。
「バフ魔法掛ければ僧侶が冒険者に勝てると思ってるのかよ、それに僧侶は教えで刃物を振るうことを禁止されてること知ってんだよ、ざまあみろ、マヌケ!」
カルロスは詩織に向かって飛び掛かった。対して詩織は背後から吹いて来た追い風に乗り目にも止まらぬ速さで動き剣を一振りしてカルロスの体を上下で二つに切り分けゴーレムを破壊した。後からゴーレムを切った『ザンッ‼』という音が闘技場内に響き渡った。
レベッカは驚き口をポカーンと開けている。
「言ったでしょあいつ剣道八段つって俺らの国では最上位の剣道の資格持ってるぐらいには強いから」
そうあいつは滅茶苦茶強いのだ。だがあいつはウルフドッグの時も、グリズリーベアの時も戦おうとしなかった。あいつの怠慢な行動にはいずれ後悔させてやる。
「ケンドウ……?良くわからないですがすごいですね」
レベッカは首を傾げ、困惑の表情を浮かべた。
おいおい、ここにはアイドルオタクばかりが転生したのか?何故アイドル文化を広めて剣道を広めてないんだよ。ここは魔王によって脅かされているんだから戦力アップにつながる剣道を広めろよ。
「音が行動の後からするとはすごいものですね」
ローレンさんは口元を手で隠し呟いた。
「レベッカちゃん見てたー?どうだった私?惚れた?惚れた?」
闘技場ステージ上から聞こえるように大きな声で言ってピースサインをした。
「かっこよかったです」
「ドュハハハ、お礼なら体で払ってくれればいいわよ」
詩織は自分自身の体を弄りビクビクと体を痙攣させる。
キモッ!こいつとんでもない下心をもって助けたんだな。
「僧侶が剣使うなんて卑怯だろ」
と、カルロスがステージ横から叫んだ。
どこがだ、バカ!
「うるさいわね!誰が何使おうと自由でしょ雑魚!」
「くそっ‼」
カルロスは地面を何度も蹴った。
「ショウシャハシオリセンシュデス」
ジャッジゴーレムが詩織サイドの旗を上げた。
「それじゃあ雑魚共まずはレベッカのペンダントを返してもらうわよ。」
詩織はダズの持っている黄金のペンダントを指差した。
ふー、これであと一勝すれば目的完了だな。もしかしてこれ余裕なのでは?
「チッ、ほらよ、ジェイ次頼むぞ」
ダズは首を素早く捻り、舌打ちしてペンダントを詩織に投げた。
あいつ感じ悪いな、あとで泣かしてやる。
「あぁカルロスの分は俺が取り返してやる!」
ジェイは強い覚悟を胸に手を力強く握った。
「すまねえ…」
カルロスは下を向き申し訳なさそうに言った。
「気にするな。僧侶あそこまで強いなんて誰も想像できないだろ?」
ダズはカルロスの肩に腕を回し励ますように言った。
「ほらレベッカ取り返したわよ」
詩織はステージ上から走り降りてレベッカにペンダントを手渡した。
「詩織さんありがとうございます」
レベッカは詩織に頭を下げてペンダントを受け取った。詩織はレベッカが頭を下げている内にレベッカの背後に回り抱き着いた。
「あの詩織さん?」
このバカは何やってんだ?
「気にしないでレベッカちゃん可愛いわね。和この勢いに乗りなさいよ」
気にするに決まってんだろ、バカ!和が止めないから俺が止めないといけないのか……。
「はなれろーしおりーぼせいにのみこまれるなー」
俺は面倒くさそうに棒読みで言い、詩織をレベッカから引き剥がした。
「和作戦は分かってるな?」
と、俺は人差し指と中指で自分の両眼を指し次に和の両眼を指した。
「勿論だ」
和はそう言い残しその場を後にし、ジェイは覚悟を決めステージに上がった。
五分後
ジェイは一向に対戦相手が来ないことに少し苛立っている。
「まだか、まさかビビって逃げたんじゃないだろうな」
ジェイは腕を組み、指でとんとんと、二の腕を叩きながら言った。
「トイレに行くって言ってたからもう少し待ってくれ」
と、俺は苛立っているジェイをなだめた。そしてジェイの背後に突如として、和の姿が現れた。
「フレアフレアフレアフレアフレア」
と、和はジェイの後頭部に杖先を当てて杖先からジェイの後頭部にゼロ距離で火の玉を連続で放った。ジェイの姿をしたゴーレムの頭は丸焦げになった。
「いよっしゃー!」
和は嬉しい感情を前面に表しガッツポーズをした。
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