第8話

 アハハハ!この前は仕方なく俺を殺したことを許したが勝手に全員の軍資金を使うからだ、このバカがよぉ‼アハハハ!


「バリアー、あいつらマジで何なのよ。仲間なのに魔物を前に置いて行くなんて、私一人じゃ死ぬに決まってるのに……。あの世で必ず絶対ぶっ殺す!」

 詩織は疲れ果てて座り込み防御スキルで身を守っているがグリズリーベアは構わず攻撃をしようとした。


「今だ‼フレア!フレア!フレア!フレア!」


「フレア!フレア!フレア!フレア!」

 俺の掛け声に合わせて俺と和はグリズリーベアを挟んで姿を現し火の玉を集中砲火下した。集中砲火を受けたグリズリーベアは必死に暴れて抵抗するが抵抗空しく倒れた。


「大丈夫か?」

 俺は座り込んでいる詩織に手を伸ばした。


 随分と哀れな姿だな、復讐出来てスッキリしたわ~。


「大丈夫か?じゃないわよ、ぶっ殺すわよ」

 詩織は俺の手を取り立ち上がった。


「そう言うなよ。挟み撃ちで強襲するあの友情の囮大作戦か攻撃しては逃げるピンポンダッシュ作戦しかあの化け物に勝つ方法はなかっただろ?」


「最初はピンポンダッシュ作戦のつもりだったが詩織お前が走れないってなったから屑が急遽変更してくれたんだぞ?」


 その通りだ、この顔だけ女は思いやりの心を持つべきだ。というか詩織なら普通にグリズリーベアを倒せたんじゃないのか?


「でもどんな作戦があるか聞いたときに説明しないさいよ!」


「あぁー、それはだなー面倒くさかったんだよ」

 と、俺は右手の人差し指で右耳裏ポリポリと掻いた。


 本当はただただ怯えている姿を見て楽しみたかっただけなんだけど、これ言うと怒るだろうな。


「はああ⁉マジで覚えてなさいよあんたら体力が回復したら絶対にボコボコにしてやるわ!」

 詩織の俺達を見る目に殺気が乗る。


 やばい!どうする?どうすれば俺だけは詩織に怒られないようにできるんだ?そうだっ!


「そう怒るなって握手会やらなくていいからさ」


「言ったわね⁉それなら許す」

 詩織の目から殺気が消えご機嫌で答えた。


「握手会は本当に嫌なんだな……、じゃあ帰るか。」

 俺達はギルドに向かって歩き始めた。


 あー、本当に疲れた。何時間も歩いてそれもこいつらが勝手に金を使ったせいで……。転生二日目からこんなことになって本当に魔王に討伐できるのだろうか?先が思いやられるな。


 二時間程歩きギルドに到着した。


「お疲れさまです。こちら報酬の3万ギラです」

 受付嬢は俺に報酬を手渡してくれた。


 あの化け物みたいな熊を討伐しても三万ギラしか貰えないのか……、やはりあいつらの使った額は異常だな。


「ありがとうございます。あのすいませんパーティーメンバー募集したいんですけどどうしたらいいですか?」


「あそこの壁に条件を書いた紙を張っていれば入りたい方が来ます。」

 受付嬢は任務掲示板の横の壁を指差した。


「ありがとうございます」


「メンバー募集?どうしてだ?」

 和は本当に不思議そうに聞いてきた。


「今日任務に行ってみて感じたけどこのパーティーのアタッカーは魔法使いしかいないだろ、だから距離を詰められたら逃げることしか出来なくなるからな」


 それも詩織が戦えばいいだけの話なのだが……、あの無能の説得は大変そうだから諦めている。


「確かにそうだな。まあ新メンバー加入までは詩織を囮にするか」


「そうだな」


「ムリムリ、あんな思いもう無理だから!」

 詩織は全力で首と手を振っている。


 そうこいつは一切戦おうとしないのだ。


「じゃあ新メンバー連れてくるか、任務に行かなくていいようにお金稼いで来い」


 こいつは本当に顔が良いのだからその顔を活かして金を稼いできて欲しいものだ。


「囮なら屑でも和でもいいじゃない。」


「ダメだ。そうしたら今回みたいに挟み撃ちができないしアタッカーの数が半減して倒せず反撃される可能性が格段に上がる」

 和が分かりやすく説明した。


「というわけだ。早く人が来るように祈るんだな」


「えぇぇ……。」

 詩織は項垂れた。


「お前の唯一の長所の顔を使って勧誘して来いよ」


「その通りよ!私のこの顔があれば一人ぐらい入って来るでしょ」


 詩織は手当たり次第ギルド内にいる冒険者に勧誘するが断られる。


「顔がいいのに断られてるな。」


「当たり前だ。あいつは顔が良すぎるから美人局だと思われてるんだろ」


 そう、顔があまりに良すぎる人に一緒に何かしない?と聞かれれば多くの人が美人局と感じてしまうのは当然だ。


 そこからも詩織は断られても、断られても色々な人に声をかけ続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る