第48話

「かずには突飛なモノより、普段食べるようなお惣菜の方がいいのかなって。そんなので良かったらまた作るけど」


和弘は会う度に弁当を持参して欲しそうだったが、麻由子はあえてそうしていない。作って行くのを“当たり前”にしない為に。一回持参したら、次の二回は『仕事で帰りが遅くなるから作る時間が無い』などを理由に作って行かない。そしてまたこちらから『今日は早く帰れるから作るね』とメッセージする。普段全く料理しない女房を持つ和弘はコンビニか外食ばかりで手作りの味に飢えており、麻由子の料理は何を持参してもいつも喜ぶ。そしてその内容は、ごく普通に自分が女房であったなら食卓に並べるものを選び作っていた。


「甘えちゃ悪いと思ってるんだ、でも本当はやっぱり凄く嬉しい。まゆとまゆのご飯が待ってると思うと凄いやる気出るよ」


和弘からはそう返信が来て、少し後に


「仕事なんか放り投げて、今すぐまゆに会いに行きたい。けどあと数時間頑張る」


とも。麻由子は「私も早く会いたい」と打ち返すと、和弘に持参する弁当を作り始めた。


夜になり、いつものように迎えに来た和弘の車の助手席に乗りホテルへ向かい、部屋に入ったら麻由子はすぐに弁当の入ったトートバッグをテーブルに置いた。が、いつもなら大喜びで飛び付く和弘が、今日は目もくれず麻由子を抱きしめキスをする。


「お腹空いてるでしょ、まずは食べて…」


麻由子が言い終わらないうちに、和弘は麻由子をベッドに押し倒し


「我慢出来ない、まゆを先に食べてから」


と言い乳首に吸い付いた。むしゃぶり付く和弘に押し潰されながらも、麻由子は手を伸ばしなんとか照明を幾分暗くする。その間に和弘は麻由子の服を剥ぎ取り、もう足の間に顔を入れていた。


「シャワー浴びなきゃ」


「そんなのいい、舐めさせて」


和弘が麻由子の両膝を持って閉じないように押さえ、舌を這わせる。その舌使いに、いつも麻由子は数秒で溶かされてしまい言いなりになった。気が済むまで舌で愛撫した和弘は顔を上げると、ベッドサイドに置いた自分のバッグから手探りで何かを取り出した。スイッチを入れるとブーッという振動音が鳴る長細いフォルムのそれは、薄暗い中でも何か容易に分かる。和弘はそれを舌の愛撫のみで充分に濡れた麻由子に挿し入れた。


「あ…!」


今時のUSB充電型、シンプルなフォルムのそのバイブは先端が少し曲がっており、膣内に入れるとその先端がGスポットに当たる。麻由子は人の指では得られない振動を伴うピストンをGスポットに受け、やがて我慢出来なくなり潮吹きした。バイブで掻き回される度何度も潮吹きを繰り返し絶頂し麻由子は快感に溺れたが、それも三度以上になるとやがて少し苦痛になる。上半身を起こし


「もう無理、抜いて…」


と和弘に懇願したが、和弘はそれを無視してなおもバイブで刺激し続けた。麻由子は絶え間なく絶頂させられ潮も吹かされ、始めは甘い喘ぎだった声も最後は


「お願い、もうイカさないで!死んじゃう!」


という泣き声に近くなった。その声に満足した和弘はバイブでのピストンを止めたが、麻由子の中に挿したまま


「抜けないように入れたまま、俺のを舐めて」


と指示した。膣に挿したバイブが抜けないよう屈み仰向けに寝た男のものを咥える事は、普通であれば片手を添えないとなかなか出来ない。だが麻由子は膣を絞めるだけでそれが出来、片手で自分の体を支えつつもう片方の手で和弘が好む乳首への愛撫も出来た。


「凄いな、それ、多分締まりが良いまゆにしか出来ないよ」


和弘は小さく笑いながら言うと、やがてまた自分が上になり麻由子に愛撫を施した。今度は頭が逆、69の体勢で麻由子の膣に刺さったままのバイブを激しく動かし同時にクリトリスを強く吸う。


「あ、やだ、ダメ!」


急に強い刺激を与えられた麻由子がまた潮を吹くと、和弘はその滴る潮を舐め回し


「まゆの体は本当に最高の反応してくれるよ」


と誉めた。麻由子は和弘が潮を舐めている間、自分も舌を伸ばし和弘のペニスから睾丸、果ては肛門にまで愛撫を施した。それには和弘が驚き


「俺こそ仕事行ってシャワー浴びてない体だから、そんなとこ舐めないでいいよ」


と焦る。麻由子はそれに


「平気、ちっとも汚くないもん」


と返すと睾丸に軽くキスをした。元から清潔にしており汗の匂いもしない和弘は、シャワーを浴びなくても麻由子は体のどの部分も舌で奉仕が出来た。やがて和弘が麻由子の膣からバイブを抜き自分のペニスを挿入したが、正常位でピストンしながらいつものように胸を吸いキスマークを付けたり軽く噛んでいた和弘が、一番敏感な乳首にかなり強い力で噛み付いたので麻由子は一瞬悲鳴をあげそうになった。


普段から和弘は興奮が最高潮に高まったりストレスがあると麻由子を噛む癖があるが、いつもはそこまで強い力は入れない。だが今日は千切れるのではないかと思うくらい強く歯を立てた。なんとか叫ぶのは抑えたが、一度ならず二度もされ、麻由子は途中感じるどころでは無くなった。同時に他の女であれば張り倒しているだろう、と思うと笑いはしなかったが腹の中で可笑しくもなった。最近は仕事のストレスがあるような話は聞かないから、今回は興奮が高まり過ぎたが故の事なのだろう。その上麻由子が普段も和弘がキスマークを付けたり噛むのを一切咎めず、許してもいるからこそ。噛まれた痛みに気を散らされはしたが、最後は和弘の太いもので奥を突かれ、いつものように挿入でも麻由子は絶頂した。


「かず、意地悪。もう無理って言ってるのにバイブ抜いてくれないから、シーツがまたびしょびしょになっちゃった」


麻由子が言うと、和弘は笑ってシーツを触った。


「本当だ、だって感じて身悶えるまゆを見てたら止まらなくなっちゃって。あとごめん、興奮し過ぎて強めに噛んじゃった、もうしないよ」


「多分切れてはいないと思うから、平気。興奮してくれていたなら嬉しいよ」


「うん、いつもまゆを抱く時は凄い興奮状態なんだけど、今日とかは特に。一人でするのもずっと我慢してて、まゆの中にぶちまけるって決めてたから。ただちゃんと加減するよ、本当にごめん」


「大丈夫、あ、それより私さ、かずのアレの通常時って実はあまり見た事ないかも」


「会ってる間中、常に勃起してるもんな(笑)」


「今は一回出して、柔らかくなってるんじゃない?」


麻由子が半身を起こし和弘のペニスを覗き込む。


「…あれ、上向いてる」


「まだ半勃ちだよ、ちょっとしたら治まるかなぁ」


「………どんどん大きくなってる」


「あはは、ごめん、ダメだ。触られてなくてもまゆに見られてるってだけで勃っちゃう」


「なんか草原とか滝とか思い浮かべてみて」


「無理、例えまゆに見られてなくても一緒の空間に居るだけで」


和弘は言いながら麻由子の胸に顔を埋めると


「俺のは、まゆがいつも欲しくて欲しくて仕方ないんだ。だから小さく出来ない」


そう言ってぎゅっと麻由子を抱きしめた。くだらない会話をする事も抱き合う事も、例え痛みを伴ったとしても和弘がいつも自分に興奮し強く噛み過ぎてしまう事も会っている間中勃ってくれる事も、麻由子は全てが嬉しかった。麻由子がシャワーに立つと、和弘は「じゃあ俺、ご飯頂くね」と言いシャツとボクサーパンツを履きソファーに座った。今日の内容はTHERMOSのスープジャーには鶏団子、チンゲン菜、春雨の中華スープ。弁当容器には鶏のインゲン巻き、きんぴらごぼう、だし巻き玉子、海老フライ、デザート代わりにカボチャのサラダとシャインマスカットを入れてある。

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