第33話

土曜日、朝から偏頭痛を感じた麻由子は鎮痛剤を飲みソファーに座った。掃除も洗濯もマメに仕事から帰ったらしているので、今日はやらなくても良いだろう。寝つきもあまり良くなかったので、疲れが取れない。テレビも点けずスマホも見ず、ただぼんやりと座っていたら娘の羽菜が起きてきた。


「おはよ、なんか疲れ気味?ママ」


「そんな事無いよ、軽い偏頭痛が来ただけ。これは元々あるから仕方ないの。薬飲んだからじきに楽になるよ」


「ママって最近、綺麗だよね」


「え、そう?昔は酷かった?(笑)」


「ううん、私には昔も綺麗に感じる。でも昨日チャンネル変えた時見かけたドラマでさ、主人公が『私が綺麗じゃなくなったのは、子育ても家事も仕事もあなたに丸投げされていたから』って泣いてたの。それ見た時、ママが私が小さい頃ピアスもネイルもせず髪も染めてなかったのは、私が生まれたからかって思ったの」


中学一年になった羽菜は、初潮も来て驚く程体つきが女性らしくなった。長い手足にくびれた腰、それでいて程よく脂肪が乗る体。のみならず思考も大人になって来たと麻由子は最近よく感じる。


「私を育てるのと引き換えに、ママは自分の自由を数年捨てなきゃならなかったんだって」


「やだ、そんな事に罪悪感感じてたの?羽菜を欲しくて産んだのは私だよ、欲しくて産んだ子の為に数年全力で向き合うのはどこの母親も同じだし、子供が育つ喜びを得られて幸せだったよ」


麻由子は一度立ち、羽菜をカウンターに促すと自分は台所に入りケトルに入っている湯をカップに注いだ。ルピシアのティーバッグを二つ出し、一つずつカップに入れる。


「私をお洒落させないように縛り付けていたのは、羽菜じゃなくパパ」


カップを一つ羽菜の前に置くと、麻由子は羽菜の隣に座った。


「羽葉は小さかったから覚えてないだろうけど、あの人は私のやる事なす事ケチを付けて、少しでも気に入らないと手を上げた。だからピアス一つ付けるのも許されなかった。倒れて気性が変わった今はもう、私に自由が戻ったから恨んで無いけどね」


言い終えた麻由子は出来上がった紅茶を一口飲むと、羽菜の髪を撫でた。


「私は、やる事は全て手を抜かずにやるわ。何も出来なくなったあの人の代わりに家の維持を全て一人で請け負う。代わりに自由にもする、好きなファッションをして好きな場所に出掛ける。誰にも縛られない。心配無用よ」


「ママ、なんかかっこいいね」


「みんなそう言ってくれるのよね、実際には楽天的なだけなんだけど。あなたも自由であってね、誰かに押し潰されず思うまま生きて。ただ自分に課された責任は放棄せず、ある程度縛りのあるその中で出来る限り自由に」


羽菜は了解!と言うと自分も紅茶を飲んだ。今日は羽菜を誘い久しぶりに外にランチに出掛け、ついでに羽菜も自分も読んでいる漫画の新刊を買うべく、麻由子は羽菜を誘い支度をした。


自分が綺麗になったのだとしたら、理由は二つ。一つは自分に自由が戻ったから。もう一つは自分を甦らせる者があったから。


しばし誰からも水も栄養も与えられなかった自分。鉢植えなのでどこにも行けず、鉢から逃げ出せない中自分に罵声を浴びせたり枝を折ったりする夫から苛められ、ますます自信は失われ枯れていくばかり。昔はそれでも季節が来れば美しいとまで言わずとも花を咲かせる事も出来ていたが、今ではそんな力も全く無くなった。


折られてぶら下がった枝が風に揺れ、見るも無惨な姿だった自分の前に、一人の男が現れ優しく声を掛けた。その男が放つ精液という栄養まで得ると、乾燥しきって死に向かうばかりだった麻由子は活力を取り戻した。以来定期的に、枯れ始めると麻由子には優しい言葉や精液が与えられ若さと活気が爪の先にまで満ちる。


ただ羽菜を気晴らしに連れて行った翌日の夜のこの日は、麻由子に与えられたのは言葉や精液だけではなく…


「あ…変な感じ」


スティック型の一回使いきりの蜂蜜の、プラスチック容器が麻由子の膣内に挿入された。和弘が力を込めると蜂蜜が膣の中に押し出される。和弘は出し切ると容器をベッドサイドに放り麻由子の足の間に顔を突っ込んだ。舐めながら指を入れ愛撫していると、膣から漏れた蜂蜜で外性器まで甘くなる。


「美味しい、それに指入れるとローションと違う感触で、粘度が高いからその感触もいやらしい」


感想を言いながら愛撫する和弘に、麻由子も


「こんな事初めて…蜂蜜、中に入れられるなんて」


と呟いた。


「まゆの全身を蜂蜜で甘くして責めたかったんだ」


和弘は挿入した指に付いた蜂蜜と愛液の混ざったものを、麻由子の乳首に塗り付け吸い付いた。そしてゆっくりと自分のものを挿入する。体を密着させると麻由子の体に付いた蜂蜜で和弘の体もベタついた。


「凄い、身体中甘くてベタベタになりながらのセックスとか興奮する」


和弘は普段は温和で表情も柔らかいが、セックスの最中はいつも目がつり上がり肩はいかり獣のように豹変する。麻由子は自分を支配する最中別人のように変わる和弘を見るのが大好きだった。そして麻由子の中に精を放った和弘は、自分のものを麻由子の膣から抜くと蜂蜜、潮、愛液、精液の混ざった液を指を差し入れ掻き出し


「舐めて」


と麻由子の口の前に持って来た。命令はするが、あくまで本当に麻由子が嫌がる事なら無理強いしない。なのでいきなり口に突っ込む事はせず選択は麻由子にさせる。また麻由子とて自分のものまで混ざりあった液など進んで舐めたくはないが、拒絶する程ではないしムードを壊したくも無いので進んで舌を出した。麻由子が拒否しないと分かった和弘は、今度は麻由子の口内に指を深く入れる。


「どんな味がする?」


「んっ…く」


棒付きの飴を舐めるように和弘の指をしゃぶった麻由子は、指から口を離すと


「蜂蜜の味は強いけど、かずの精液の味も私の愛液の味も消えてなくて、ちゃんとそれぞれ感じる」


と感想を述べた。


「指舐めてる顔も、感想もエロくて最高。今度はこっちもしゃぶって」


目の前に射精したばかりで半勃ち状態になっている和弘のペニスも突き付けられる。言われるまま口に含むと、こちらも蜂蜜が纏わりついていて甘い。


「甘い…美味しい」


目を細めながらしゃぶるうち、先程果てたばかりだというのに麻由子の口内でまたペニスが勃起し始めた。蜂蜜はかなり味が濃いものだと思っていたが、やはり和弘の出すいわゆる我慢汁というものと混ざりあっても、我慢汁の味は認識出来る。それくらい味が蜂蜜よりはっきりあった。そして和弘の精液は独特の味が強い方で、実は普段も麻由子は飲み下すのに難儀している。精液の味は和弘が一番味が強く、次が裕志、癖を感じないのは大輔だった。抱き方も外見もそれぞれ全くタイプが違うが、精液の味も三人違う。


和弘は硬さが十分になったら、麻由子をもう一度寝かせ一度目の射精から全く休まず二度目の挿入をする。壊れる程強く突かれ、泣き声にも似た喘ぎを麻由子は漏らした。興奮しきった和弘が、麻由子の首を軽く噛む。猫科の動物がメスが逃げないよう首に噛みつき挿入するように、獣と化した和弘は麻由子の首を噛み体を掴み激しく交尾した。


普段は優しく、逆に事の最中は優しくなくて構わない。肉欲も支配欲も少々変態的な願望も、皆さらけ出し自分を使って思うまま果てて欲しい。麻由子のややマゾヒスティックな性質は和弘のしたい放題する全てを受け入れ、したいと思う方、されたいと思う方どちらもの悦びに変えた。

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