2dy
幼少期はそれでも恵まれていたと思っていたの。
だって比べる家庭がなかったし、子どもの世間って狭いでしょ。
ずっと、気づかないまま、狭い世界で生きていたら、変わらなかったのかもね。
それでも、世界は残酷で、身近にあったのかもね。
こんな家庭が。
ちょっと話がそれちゃったわね。
小さいころは幸せだと思ってたの。
両親もいて、みんな笑顔だったの。
私が気付かなかっただけかもしれないけどね。
その生活が急に変わったの。
ある日突然。
父の体調が悪くなって、母が看病に追われ、
家庭が壊れ始めた。子どものわたしたちの面倒を見るのが大変だったのかもね。
今思えば、突然なんかじゃなかったのよね。
父が仕事に行けなくなって、母がイライラして、私たちに当たるようになってきた。
看病に育児、仕事。母も大変だったのかもね。
少しして、父は自殺した。
うまくいかない家庭も、自分の不調も嫌だったのかもしれないわね。
父が死ん、何かぽっかり、心に穴が開いた気がするの。
それでも、残された家族は、一緒に頑張れると思ったの。
ただ、それは幻想でしかなかった。
母のしんどさはわたしには、すべて、理解できなかったのかもしれないわね。
父のいない寂しさをわたしがいやせると思ったのよ。
だんだん家庭内がよくなくなってきて、
家事をわたしがするようになったの。
母は嫌な思い出のある家に帰ってきたくなかったのかもしれないの。
今はわかるんだけどね。
あの時には、理解できなくて、わからなかったのよ。
それでもたまに帰ってきたの。
それがうれしかった。はじめのうちはね。
だんだんとわたしが死んでった。
そのうち、わたしは傷つくなった。
「うるせえ。お前が悪いんだよ。いいから黙れよ」
母からの気持ちをそのままあてられる。
繰り返されるうちに、心が死ぬ。
あぁ何も感じない。
あざができたって、傷ができたってしょうがなかったの。
母のためになるのなら。
助けを求めるなんて、頭になかったのね。
ただしんどかった。
しょうがないと思ってたのに、なんでって気持ちが消えなかった。
そのうち学校にも行けなくなって。
家のことをすべてやるようになった。
わたしの居場所なんてない。
けど居場所は欲しかったの。
そして、わたしは――――した。
こんなこと言ってはだめね。
まだまだ言えないわね。
急に重くなってしまったわね。ごめんなさいね。
少しずつわたしのことを知ってくれる?
今度はあなたの番。
あなたはどんな幼少期を過ごした?
あぁ、わたしの話を聞いて、悲しくなんてならないでね。
今はよかったって思えるの。
だって今は、幸せなの。
幸せではないけどね。
でも、居場所ができたの。
居場所とはいいがたいところだけど。
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