巫女幼なじみと夏休み

「神様いねえかなぁ」


「普通、巫女の前でそれ言う?」


陸の呟きにツッコミを入れたのは、夏咲神社かさきじんじゃの巫女であり、陸の幼なじみでもある日咲 舞ひさき まいである。


「というか、なんで上まで来たのよ?お母さんいるから下で待ってくれてても良かったのに」


舞がいう上とは神社の事であり、逆に下は家のことを指している。神社と家は距離的には近いものの、神社の方は山の山腹と麓の中間ら辺にあり、登るのに17分ぐらいかかるため地味に苦労するのだ。


「お前に会いに来たんだから、下にそりゃあこっち来るだろ?」


「そ、そうだけどさ//暑かったりするじゃん...///」


舞は髪をいじりながら、顔を赤らめそっぽを向くが、陸はそれを疑問に思いながらも話す。


「会話するだけでも楽しいんだよ」


「そっ!///」


舞は竹箒を陸に投げる。


「危な!」


陸はそれを無事キャッチすると舞が言う。


「早く終わらせて下いくわよ!//」


「わかった」


舞はそそくさともう1つの竹箒を倉庫から持ってくると、2人で神社の掃除をするのだった。

しばらくして、無事掃除が終わると2人は倉庫に竹箒を入れて、階段を降り始める。


「それで、なんで神様いないかな?とか言ったのよ?」


「退屈...って言ったらあれだけどさ、なんか二次元的な事起きないかなって...」


「なるほどねぇ...」


舞は少し陸より先に階段をおりると、後ろを振り向き陸の方を見る。


「たとえ起きたとしても、陸が思ってるような事にはならないと思うし、できないと思う。多分、それが出来る人物は普段それをしてる人と神様に選ばれ人なんじゃないかな?」


舞は風でなびく髪を手で抑えながらそういった。


「それに...」


舞は唇に人差し指を当てて、少しの間、2人は黙り込む。

その間に蝉の何声や暖かい風が吹き木が揺れる音などが聞こえた。


「こんな音がなり続ける日常の方が好きなんだ」


そう言って舞はニコッと太陽のように眩しい笑顔を向ける。


「確かに...そうだね」


陸はゆっくりと同意すると、ゆっくりの階段を下りる。

そして、何時も思っていた疑問を聞いてみた。


「なぁ、いつも思ってたんだけど。なんで上にいる時、いつも巫女服なんだ?確か親からは普段着でいいと言われてるんだろ?」


「神様に会いに行くからね念の為よ」


彼女はそう言っているが、本当の理由は別にあり。それは陸はこの服装が好きなことを知っているからだ。

舞は昔から陸のことが好きなのだが、正直になれない性格と陸の鈍感ぶりが合わさり、親友からあまり進展していないため、少しでも近ずいて来れるように巫女服を着ているのだ。


「まぁ、その服装似合ってるからいいと思うけど、あまり無理はするなよ?」


「う、うん、ありがと」


急な攻撃に舞は少しテンパりながらも、2人は階段を下りる。しばらくして一番下までついてそのまま家に着くと、2人はリビングに向かい冷蔵庫からアイスを取り出した。


「はいこれ」


舞は陸にバニラアイスを投げ渡すと、陸は慌ててキャッチする。


「あぶねえなぁ...」


「いいじゃん、手伝ってくれたお礼だよ」


「サンキュ」


とりあえず2人は椅子に座るとアイスを食べはじめる。


「そういえばさ、今年も踊るの?」


「踊るよ〜」


踊るとは、祭祀の時する踊りつまりは神楽の事である。夏咲神社では、毎年8月7日の夜中に、豊作を願い、自然に感謝をするため神楽を踊るのだ。そして夏咲神社の舞では、最後にひまわりの種で作られた油を太陽が登る方向..つまりは東を見ながら、神楽鈴に垂らすという儀式を最後に行うのがポイントだ。


「でも、最近見てくれる人がめっきり少なくなっていってね..」


舞は少し遠くを見るような目でそう語る。


「俺が生きてる限り何度でも見てやるから、気にすんな!というかオタクとしても見ておかないとダメだと思う!」


陸のその言葉に、舞は無意識で笑みを浮かべた。


「そう言ってくれてありがとう」


「気にすんな、俺が見たいだけだし」


そんな雑談を続けながらもアイスを舐め終わると、舞は普段着に着替えるため上の階へ向かっていた。

そして今日は沢山くだらないことを語りながらゲームをする日になったのだった。

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