第5話

 私は、学校のカフェテリアでユウカと昼食を食べていた。

 ユウカは、私の前で日替わり定食を食べていた。

 私も今、から揚げ定食についているサラダを食べている。


 私は、じっとユウカを見ながら考えていた。

 

 不思議なことが続く日々。

 知らない世界に迷い込んだり。

 口裂け女?に追いかけられたり。

 老婆にあったり。

 昔の常世町に行ったり。

 …私は見れなかったけど。


 やっぱりこの町は、不思議に満ちていた。


「アヤ?どうしたの?」


 ユウカが心配そうに聞いてきた。


「ふふっ!ユウカ。実はね。」


 私は、ユウカに話すことにした。


「えっ?なになに?」


 ユウカも興味津々みたいだ。


「実はね、部活を創設しようと思ってまーす。」


 私はそういった。

 そう、これまでの不思議なことはこれからも起きそうだ。


「常世町の不思議な出来事を調べる部!」


 私はユウカにそういった。


「へー、面白そう!私も賛成!」


 ユウカも賛成してくれたみたいだ。


「じゃあ、ね。初めに部の名前を決めないと…」

「えっと、じゃあ、不思議部?」


 ユウカはそういった。


「うーん。なんか……。」


 私は考えた。


「そうだ!『常世部』なんてどう?」


 私がそういうと、ユウカが笑った。


「それ、いいね!」


 私たちは笑い合った。

 そして、二人で声を合わせた。


「じゃあ決定ね!」


 こうして、私たちの部活は始まったのだった。


 放課後。

 オレンジ色の夕日が校舎に差し込む中。

 私とユウカは、職員室へと向かった。

 部活についてを先生に相談するためだ。


「失礼しまーす!」

「失礼します。」


 そう言って、私とユウカは職員室のドアを開けて、中に入った。

 職員室は、先生たちが忙しそうな雰囲気だ。

 

 そんな雰囲気の中で、ユウカと私はさっさと用事を済ますために職員室を進んだ。

 私たちは、担任の先生に相談することにしていた。


「佐藤先生。」


 私は職員にいた担任の佐藤先生に声をかける。

 佐藤先生は、若い男性教師で国語の先生だ。


「どうした、霧島、桃井。何か相談か?」


 佐藤先生が私たちに聞いてきた。


「はい。あのー、私たちで新しい部活を作ろうと思って……」


 私がそう言うと、先生は驚いた顔をした。


「え!すごいじゃないか!」


 先生は嬉しそうに笑った。


「で、どんな部活を作るんだい?」


 私たちは顔を見合わせた後答えた。


「えっと……『常世部』です」

「常世部?」


 先生は、首を傾げた。


「常世部は、常世町の不思議な出来事を調べる部活です」


 私は、先生に説明した。


「そうか……それは常世町らしいな。」


 先生は、どこか嬉しそうに言った。

 そして、私たちにこう告げた。


「よし、わかった。じゃあ顧問は俺が引き受けよう!」


 私たちは喜んだ!


「やったね!アヤ!」


 ユウカが私の手を握った。


 私とユウカは嬉しくて飛び上がりそうだった。

 でも、先生の前だから我慢した。


「ありがとうございます、先生!」


 私たちは同時に言った。


「いやいや、生徒が自主的に部活を作ろうっていうんだから、先生としては応援しないとね」


 佐藤先生は優しく笑った。


「じゃあ、次は何をすればいいですか?」


 ユウカが聞いた。


「そうだな…部としては常に部員を集めないとな。君たちが卒業しても存続できるようにしないとな。」


 先生の言葉に、私たちは顔を見合わせた。

 私は少し考え込んでしまった。今のところ、私とユウカの2人だけだ。


「大丈夫だよ、アヤ!」


 ユウカが私の肩を叩いた。


「きっと面白がって入ってくれる人がいるよ!」


 ユウカの明るい声に、私も元気が出た。


「うん、そうだね!」


 先生は私たちのやり取りを見て、にっこりと笑った。


「そうそう、その調子だ。それと、部室も必要だな」


 先生は少し考え込んだ。


「うーん、そうだな…あ、そうだ!」


 先生が思い出したように話し始めた。


「図書室の隣に小さな部屋がある。今は使われてないな。」

「わぁ!それ、いいですね!」


 ユウカが目を輝かせた。


「じゃあ、そこを使わせてもらえますか?」


 私が聞くと、先生は頷いた。


「ああ、大丈夫だと思うよ。校長先生に話を通しておくから」

「ありがとうございます!」


 私たちは再び同時に言った。


「さて、じゃあこれからやることは…」


 先生が指を折って数え始めた。


「1.部員を集める。2.活動内容を具体的に決める。3.部則を作る」


 私たちはしっかりと頷いた。


「分かりました!頑張ります!」


 職員室を出た私たちは、廊下で立ち止まった。


「よーし!これから作戦会議だ!」


 ユウカが元気よく言った。


「うん!」


 私も頷いた。

 そして放課後の廊下をユウカと並んで歩きだした。


「じゃあ、まず部員集めだね」


 私が言うと、ユウカは頷いた。


「そうだね。どうやって集めようか?」

「うーん…」


 私たちは考え込んだ。


「あ!ポスターを作るのはどう?」


 ユウカが突然言い出した。


「いいね!場所も自由に張れる場所あるし。」


 私も賛成した。

 ちなみにポスターが張れるのは1階の場所にある。


「じゃあ、ポスターの内容を考えよう」


 私たちは下駄箱へ向かって歩きながら、ポスターのデザインを考え始めた。


「『常世町の不思議を探求しよう!』っていうのはどう?」


 ユウカが提案した。


「うん、いいね!それに『常世部、部員募集中』って書こう」


 私たちはポスターのデザインを決めていった。


「ポスターはどこで作ろうか?」


 私が言うと、ユウカは急に明るい表情になった。


「じゃあ、私の家で作ろう!」


 そういうわけで、私たちはユウカの家に向かった。


 学校を出た私たちは、まっすぐにユウカの家へ向かった。

 ユウカの家に着くと、ユウカのお母さんが出迎えてくれた。


「いらっしゃい、アヤちゃん」

「こんにちは」


 私は挨拶をした。

 幽霊のお母さんなんだよなぁ、と思いながら。

 ユウカの部屋で、私たちはポスター作りに取り掛かった。

 色とりどりの画用紙、マーカー、のり、はさみを使って、ユウカと二人で作業を進めた。


「できた!」


 しばらくして、私たちはポスターを完成させた。

 部員募集中、常世部。

 そして、不思議を探求などと書かれたポスターだ。

 カラフルで怖い雰囲気ではない。


「明日、学校に持っていこう」


 ユウカがそういった。


「うん!」


 私は同意した。

 満足するポスターを作製できた私たちは、そこで解散した。


 翌日。

 ユウカは、昨日作成したポスターを学校に持ってきていた。

 佐藤先生に相談すると、放課後にポスターを張ることになった。


「ここに貼ろう」


 ユウカが1階の掲示板を指さした。


「うん、いいね」


 私たちは丁寧にポスターを貼った。


「これで部員が集まるといいな」


 私が言うと、ユウカは明るく笑った。


「絶対集まるよ!」


 ユウカは、私にそういった。

 ポスターを張り終わったとき、私たちを呼ぶ声が聞こえた。


「桃井、霧島。」


 佐藤先生が、呼んでいた。


「はい。先生?」


 私がそう返事をした。


「常世部の部室が決まったよ」


 佐藤先生はそういった。

 そして、先生は私たちを連れて、廊下を歩いていく。


「先生が言っていた、図書室の隣ですか?」


 私は、先生に確認した。


「そうだよ。」


 先生はそう言った。そして、私たちは佐藤先生についていった。

 すると、そのまま図書室の隣の小部屋へ案内してくれた。


 部屋の前についた。

 プレートには資料室と書かれていた。

 先生は部屋のカギを差し込み、解錠した。

 そして、引き戸を開けた。

 佐藤先生は、その部屋へ入っていった。

 先生に続いて、私たちはその部屋に入った。

 

「ここが部室!」


 ユウカが嬉しそうに言った。

 広い窓からは夕日が差し込んできていた。


 部屋は、資料が詰まった棚が四方にある部屋だった。

 部屋の中央には長い机、その周囲には椅子があった。

 確かに狭いかもしれない。


 でも、エアコンもついていて、窓から差し込む光が明るい。


「ありがとうございます、先生!」


 私たちは感謝の言葉を伝えた。


「ああ、これからしっかり活動するんだぞ?」


 先生はそう言った。

 それから、先生から部室についての使用法を聞いた。

 この部室である資料室のカギは職員室にあること。

 そして、部室を使用した後は、必ず職員室に来てカギを返却すること。


「いいかな?桃井、霧島?」

「分かりました!」


 私たちが佐藤先生にそう答える。

 すると佐藤先生は、さっそうと部屋から出て職員室へと戻っていった。 


 佐藤先生が職員室へと戻っていったあと、私たちはさっそく部則作りに取り掛かった。


「えーと、まず『常世町の不思議を探求する』かな」


 私が言うと、ユウカも頷いた。


「それから『部員同士仲良く協力する』とか?」


 私たちは話し合いながら、部則を決めていった。


「よし、これで部則は完成だね」


 最後に、私たちは活動内容を具体的に決めることにした。


「不思議な噂を検証するとか、どう?」


 ユウカが提案した。


「いいね!あとは、不思議を調べるのもいいかも」


 私たちは楽しみながら、活動内容を決めていった。


「これで部活動準備は完璧だね!」


 ユウカが嬉しそうに言った。


 私たちはこれからの活動を思い描きながら、部室を見回した。

 ……埃っぽい。

 長年使われていないのだからしょうがない。

 

「…掃除しよっか。」

「うん。」


 ユウカと私は掃除を始めることになった。 

 その日は、資料室の掃除をすることになった。


 私たちの常世部は、こんな感じで始まったのだ。



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