第9話
と、ここまでが昨夜の記憶。彼女と出会って、別れるまでの一間だ。
「なるほどな。君がどのようにして出会い、そして何故その彼女を幽霊だと認識したのか。そこは分かった。というか君は相変わらずだな。呆れさえ通り越して、尊敬の念さえ覚える、なんて陳腐な言い回しは使わない」
アホだ、と。微笑みながらそう言われた。
うるさい、そんなことは分かってる。自分の判断基準にはほとほと嫌気が差しているんだ。
非日常となれば、常識力を多少排してでも受け入れようとする。それで面倒な目にあったことも、数知れず。それは叱翅 纂も知るところだ。
彼女は、そんな俺に嫌な顔一つせず接してくれている貴重な友人だ。世話にもなっているし、これからも厄介になるだろうさ。
今だって、そうなっているんだからな。
「まあ、君の言いたいことは分かった。ただだからといって、やはり解決策が浮かぶわけじゃない。そもそも専門外でな。期待して来たのなら、申し訳ないが私にはどうすることも出来ない」
申し訳なさの欠片も無い表情で、そう言い切った。まあ結局そうなるってのは何となく分かってた。
俺が化野と出会った経緯を語ったところで、何が変わるわけでも何か理解の助けになるわけでも無い。
ただ、教室のど真ん中で、俺は立ち尽くす。
「先程の続きだ。幽霊は人間が発生させている生体電磁場の変化に呼応して、認識出来るようになる。幽霊が持つ磁場の歪みと人間の意識、ここでは同調回路か。それらがシンクロすることで、観測することが出来るわけだ」
つまり世の霊感がある人間たちは、その場にいる霊と同調出来たから、観測者足り得たっていうことか。よく分からないけど、そう解釈しておく。
「まあ私には分からないことだが、折角来てくれたんだ。このまま返しても、魔女の名折れだろう。その幽霊である彼女がどういった末路を望むのかは私には分からないが、君に出来ることを提案させてもらうとするのなら」
随分ともったいぶった言い方をするのは、変わらない。それに分かったように知った口を叩くのも、彼女らしい。そしてその絶対的自信も、俺の心に安堵を与える一因となる。
性格に難はあるが、頼りになるのは事実だ。
いつも通り、叱翅 纂は語る。当たり前のように。そうすることが日課であるように。
口を開いて解決策を口にした。
「彼女、化野 幽の起源を探せ。死んだ要因、出来ればそれが望ましいな」
デリカシーの無ささえ、それをどうにか出来れば、俺としては尚良いんだけどな。
しれっと、一番聞き出し辛い部分を聞いて来いと言われた俺はこれまたいつも通り、溜め息で返したのだった。
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