Stage07~圧巻のパフォーマンス~
シーズン学園の衣装部屋は、各クラスごとに存在する。広々した部屋だが、衣装が一切見当たらない。
あるのは、何かの読み取り機といくつかのウォールドアのみ。これから、どのようにして着替えるのか、全員が今か、今かと待っている。
「さて、ドリライ前は、衣装に着替える必要がある」
白金先生は壁に設置している、読み取り機にドリカをかざす。すると、「ピピッ」と機械音が鳴る。閉じられていたウォールドアの扉が開いた。
「着替えは、この部屋に入ったら、自動で行われる。その後はステージに移動され、ドリライのスタートだ」
オーバーテクノジーで溢れている。アニメやゲームの世界では、いつの間にか、変身している現象が、自分で体験すのか…
「なるほどなぁ、よっし!トモコ、アタシ達のチームが最初だ!」
「トップバッター!?本当にアヤコちゃん?」
「こんな楽しいことは、早くやるべきだろ!」
チームドリライの順番は、決まっていないので、赤髪の男勝りな、女子生徒が先陣を切った。しかし、対称的に同チームの水色髪の女子生徒はトップバッターに後ろ向きだ。
「タロウくんいいの?最初で」
「別に順番なんて、関係ないでしょう」
「そうか、そうだよね」
言葉の固い、青髪の男子生徒は、トモコの意見を一蹴した。その後、順番は挙手性となり、俺達Aチームは二番目になった。
「では、チームBは合図があり次第、そこで待機、観覧者は私と共にステージαへ向かう」
衣装部屋から距離はそんなになく、案外直ぐに到着した。授業の一環でドリライをするから、移動時間を最小限にした構造なのだろう。席は、自由、俺たちチームAと一枝のチームEで固まって、座る。
「観覧者はドリライバンドを配布する」
白金先生は全員が着席後、教師専用席からドリライバンドを人数分取り出し配布する。久し振りだ。
伊集院さんのドリライ以来だ。しかし、今日からは、それが当たり前になる。学園に入学したことがやっと自覚できた。ドリライバンドを腕に装着し合図を待つ。
今日はドリライが五回も見れるなんて、最高だ。観覧者の準備は完了した。白金先生は通信機を手に持ち、合図を送る。
「チームB準備開始」
合図を言葉にステージ上は明るい照明から、暗い照明に代わる。徐々にライトは中央に集まり、ドリライ開始が近づく。
授業の一環にこんな、大規模なドリライをいとも簡単に可能にする。俺は、今日は驚いて、ばかりだ。
「よっと!センセイ~曲お願いシマース!」
ステージ下から派手に登場した三人は、アヤコの合図に音楽が開始される。
曲は、実技試験と同じだ。しかし、俺たちが実技試験で行ったチームドリライとは、全く違うのだ。
「振付が全く違う」
「アクロバットですか…」
そう、実技試験時もそうだった。振り付けは、あらかじめ決められていたが、アレンジは不可ではない。この意味は、チームのやりたいことなら、なんでもOK。という意味だ。
チームBは歌唱力は勿論学園合格者なので、文句なし、リードボーカルのアヤは二人をぐいぐいと引っ張っている。その中で、派手なアクロバティックを披露している。
「あのアヤって言う子。すげーバク中を多くて、派手でいいなぁ!俺達もやるか ?ヒカル?」
一枝は、派手な振り付けを観て、興奮している。それをチームメイトのヒカルは、呆れた様子で、手を横に揺る。
「冗談はやめて、あんなもの簡単にやれたら、プロダンサーが泣くよ」
二条の言う通り、この振り付けは学生の域を超えている。その中で、歌にも妥協がない。
会場はすでにボルテージが上がっていた。各々GENSOUもドリライバンドから抽出される。
アヤは燃え上がる火玉、トモコからは水玉 タロウ歯車だ。
「よっし決めた!俺はアヤコのドリライパフォーマンスが見たい!」
一枝もドリライパフォーマンスをイメージすると、GENSOUGA抽出された。燃え上がる火玉はステージ中央へ移動される。
火玉がアヤコの前に到着すると、彼女はニッと笑いGENSOUを逃がさないように、強く掴んだ。
「高い!」
「ステージ天井まで上がっていますね」
アヤコはステージ天井の限界まで、高く上がった。すると、突然急降下する。誰もが、地面に激突する。危ない!と声に出すと、アヤコは宙で華麗に回転すると、難なく着地した。
「すっごい緊張したな」
「マジで危険だろ」
「でも、成功したなら、観客は満足するわ」
スリリングでありながらも、成功する。この展開はアクロバットが中心のチームだからこそ、可能なドリライパフォーマンスだ。
「曲は中盤なのにまだ動けるんですね。すごい」
ヒカルの言う通り、曲は中盤。まだ後半のパートが残っている。
先程のドリライパフォーマンスは派手な動きで相当体力を使ったように見える。だが、アヤコは疲れ一つ無く、余裕そうな表情で歌い、踊り続けている。
「この二人何か企んでますね」
注目の的をアヤコからトモコ、タロウに向ける。二人はアイコンタクトを取った瞬間。ステージの端へ移動する。端へ辿り着くと、トモコはGENSOUを掴んだ。
「なるほどな、このドリライパフォーマンスは確かにソロだな」
トモコは側転、バク中を繰り返す。再び舞台中央部へ辿り着くと、空中でフラッシュキック。
周りにはチームのGENSOUが舞い上がる。トップバッターに怯えていたとは、思えないドリライパフォーマンスだ。数秒遅れて、タロウもドリライパフォーマンスをする。
「タロウの場合はステージ中央に移動する。動きに違いを出したな」
トモコと全て、同じだと、課題である。ソロのパフォーマンスの課題に反している。なら、左右対称のドリライパフォーマンスのように見せることで、課題をクリアしている。
「課題はソロに限定って、言ったが、これはチームドリライ。ある程度の一体感は必要だもんな」
「準備は短時間しかなかったのに、素晴らしいです」
全員が圧巻したまま。チームドリライは終了した。白金先生は先ほどのドリライを評価していた。紙にサラサラと書き記し、数秒後には、評価を完了した。
「チームBの評価は終わった。次はチームA準備しろ」
さて、次は俺たちのチームAのドリライだ。西園寺、巴も腰を上げて、ステージから衣装部屋へ移動する。
「今日は緊張していませんね」
巴はいつものように聞いてくれる言葉、緊張はしていない。むしろ楽しみでしょうがないのだ。早くステージに立ちてくて、うずうずしている。
「俺も早くてドリライがしたいんだよ」
「中々言うじゃない。また転ぶんじゃないわよ」
西園寺は勿論緊張という言葉は、知らない。むしろ俺の持ちネタをまた言うほどにだ。今日は大丈夫…のはず。
「転ばない今日も絶対に」
だが、俺は実技試験中は転んでない。転びそうになったんだ。そして、衣装部屋の前に着くと、入れ違いでアヤコと鉢合わせる。
「おっ?次のチームかぁ」
俺の顔を見るなり、がん飛ばされる。初対面でいきなりこの態度は、失礼だな。と頭の片隅に置く。
見られ続けられ、数秒後。アヤコはバカにするように笑った。
「他の二人は良いが、お前ぇ、大したことないだろ」
「は?」
なんなんだ。コイツは。見られて早々にこの言葉と態度。アヤコに反論しようにも彼女は俺の言葉を遮る。
「意欲がねぇんだよ!お前自分を出さないタイプだろ?」
アヤコの言葉に俺は反論できなかった。今からのドリライは、実技試験同様に西園寺がセンターで歌は巴。俺は二人のサポートに徹するつもりだった。
俺は実力がない。当たり前だ。俺が一番のお荷物だ余計なことすることは、チームの蛇足だ。
「なんで、才能を上手に使えないのかねぇ、カゲロウ察してるだろーが、変なプライド捨てろよ」
「自分で気づきを与えることが大事でしょ?」
気づきを与える?西園寺のヤツ。何を隠しているんだ。今からドリライをするのに不安だ。そして、アヤコは西園寺にも言葉で突く。
「お前はあの人のファンだもんな」
「お黙り、それ以上は許さないわよ」
いつも、余裕なペースの西園寺が強制的に会話を終わらせる。アヤコの何でも、知っているような口は心臓に悪い。
「こわーまぁせいぜい頑張れよー」
アヤコは軽く手を振って、この場から去った。西園寺も機嫌が悪い。
巴も悪い空気感に難しい表情をした。険悪な空気のまま、衣装部屋に入室し、ドリカを読み取り機にかざした。
----------------------------------
【
赤髪のポニーテイルがチャームポイント。
男勝りな性格で近寄りがたいが、ドリライの熱は高い。
中学からの同級生トモコとは親友。
西園寺とは、元々知り合い。
GENSOUは火玉
【
水色髪のハーフアップが特徴。常に後ろ向きな性格。
真反対のアヤコとは、中学からの親友。
性格とは、裏腹にアクロバットはお手の物。
GENSOUは水玉
【
青髪が特徴的な男子。口調は常に敬語。
アヤコとトモコは入学試験に知り合った。
そんな中、彼の実力でアクロバットは短時間で慣れさせた。
GENSOUは歯車
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます