第二章〜from here〜
Stage5〜学園の変革〜
桜並木の中、新しい制服に身を包み、シーズン学園へ足を進める。
そう、今日から俺はシーズン学園の生徒だ。
未だに信じられない。実技試験でドリライをした時、二人の歌とダンスに張り付くのに精一杯だった。
現に試験官達は俺のあたふたした、動きに心配している様子がちらほら居た。その邪念が、バランスを崩して転びそうになった。
あの時は必死で、失敗はもちろんしたくなかった。なりより観客は夢を見ている最中だった。
夢を壊したくなかった。転倒は防げたが、声が漏れて恥ずかしい思いした。
あの後、西園寺には叱られた。それは姉さんを思い出す様な物だった。
「あの二人も合格したんだろうな」
初めてのことだらけで、不安の中のチームドリライは本当に楽しかった。
西園寺のダンスや巴の歌声に鼓動した、あのドリライが出来ない。と思うと。寂しいまである。
だが、マイナスなだけではない。これからはドリライで溢れる毎日になる。楽しみしかない。
「きゃあ~グリモワールよ」
「コユキ様もいる!」
「コユキ様~」
門をくぐると、生徒達が黄色い声を上げていた。騒ぎの元を見ると、三人組の男女が手を振りながら歩いている。
誰だ ?制服を着ているから、先輩だと思うが、この歓声。三人組本当に高校生か?
考えている内に人だかりが出来てしまい、身動きが取れなくなった。
「ああの!押さないでください」
周りに声掛けるが、それは空しく俺の身体は倒れこんでしまった。入学から災難だ。心が少し沈み込んだ時だった。
「大丈夫ですか?」
顔を見上げると、銀髪にクリアな琥珀色の瞳。容姿に一瞬、伊集院さんを思い浮かべてしまった。しかし、制服姿で性別も女性だ。別人に気づくまで時間が掛かった。
「あ、ありがとうございます」
「いえ、生徒達がごめんなさいね」
ふわりと笑みをこぼす先輩は、ファンでもない俺でも、先輩の良さに惹かれてしまう。
手を取り立ち上がる。幸い怪我がなくてほっと、すると、先輩は手を何度か叩く。
「みんな、今日は入学式よ、後輩が沢山来るからしっかりね」
先輩は生徒達に声を掛けると、応えるようにに大きく返事した。この先輩は一体何者か、生徒の知名度から相当人気があるのだろう。
「じゃあね、これからの活躍期待しているね」
手を振った後、先輩はその場から離れた。さて、俺も入学式が控えている。講堂へ向かおう。すると、他の生徒が離れている中、一人だけ、立ち止まっている生徒が居た。
「入学早々大変だったな !」
元気な声で話しかけたのは、ミルクティー色の髪色が似あう男子生徒だった。
「あぁ「お前一年生か!」ちょ…「俺も一年生なんだ!!」話を聞け!」
なんなんだ。ぐいぐい来る男子生徒に話をする猶予がなかった。しかし、彼の太陽のような笑顔に嫌みがなく、不思議とイラつきはしない。
「すまん、すまん一年が全く居なくてさ〜嬉しくてな」
「気持ちはわかるけどな」
軽く笑う姿に本当に悪気がなかった様だ。ドリライにかかわるようになって、ユニークな人が多いとしみじみ思った。
「あっ自己紹介忘れてた。俺は
「早乙女ハルキだ。よろしく一枝」
「よろしくな !ハルキ 」
差し出された手を握る。災難に見合われたが、良い出会いが出来た。すると、一枝は思い出す様に先程の光景を話した。
「やっぱグリモワールの人気はすげぇよな」
「グリモワール ?」
一枝の発言からして、グリモワールは先程の先輩のチームだろう。入学するにも難関の学園に、更にトップのグリモワールとは何だろうか。
「グリモワールを知らないのか?」
「すまん」
入学前に行事は確認したが、学園のチームまでは把握してなかった。そこで、一枝は嫌な顔せずグリモワールについて説明を始めた。
「グリモワールは、さっきの先輩たちチームだ。リーダーは伊集院コユキ、学園長の妹だ」
「伊集院さんの!?」
「そうだぜ、グリモワールは二年生で結成されたチームにも関わらず、去年のイベントは、全部優勝したんだ」
シーズン学園のイベントは、学期終了時に開催される学校行事。主にチームドリライで観客の投票で勝敗が決まる。
「確かにそれぐらいすごいなら、あの人気は納得だ」
「俺もイベント全制覇目標だから、すごいよな〜そろそろ俺たちも講堂に行こうぜ」
一枝は俺の手を掴み、走り出す。まるでジェットコースターに引っ張られる様な、早さに止めるのは無理だった。
「お、おい !」
一枝に引っ張られ、俺達は校内を駆けた。そして、一枝の行動あって、あっという間に行動へ到着した。
結構距離があったのに一枝は、息一つ上げることなく、にこにこと笑っていた。
「気持ちよかった。校内も桜がきれいで楽しかった~」
「ハァハァ、景色みる余裕が…あったのかよ…」
あんなスピードの中、良く景色が見れたものだ。俺なんて、追いつくのにいっぱい、いっぱいだった。
しかし、休憩は束の間目を離した時には、一枝は講堂へ入って行った。
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今日は姉さんの特訓をしているのか?と疑うほど沢山走った。一目散に消えて行った一枝の後を追って、今やっと席に座れた。
「すまんすまん、別に置いて行こうとは、思わなかったんだ」
「それは、分かった。今度からは待ってくれ」
「分かった!」
返事は百点。本当に分かっていることを信じたい。さて、ドタバタになったが、やっと入学式だ。
今まで退屈に感じる式も、自分が目指した学園なので、心がつい踊ってしまう。
入学式は進行役を合図に開始された。最初は学園長である。伊集院さんからの挨拶だ。しかし、表情は試験時と比べ険しい。
「新入生の皆入学おめでとう。学園長の伊集院ユキヒトです。まずは、こちらを見ていただこう」
もっと、入学式らしい、喋りをすると思いきや、
背後のプロジェクタに、年代ごとのグラフが紹介される。
「これは学園のイベント出場の比率。一年生の出場は一割も満たない」
今表示されているグラフは上位は三年生、下位は一年生。つまり一年生はイベントの出場の割合が
圧倒的に少ないのが現状だ。
「今まで、イベント出場者はほとんど二年生からだ。この現状は一年生の若い才能が、影に隠れることが多い」
一年生はイベントに出場はしない。それが当たり前だった。話を聞いて、試験を共にした西園寺や巴の実力が、埋もれない提案は良い改革だ。
「イベント出場権は、参加権利がある者に絞る。獲得方法は構内の予選、学外のオーディションだ。この企画に多くの企業に協力を要請した」
一年生にもチャンスがある。その言葉に一年生達はざわつく。モニターに映し出された協賛企業は、
ドリライの運営会社、衣装会社、中には食品会社と様々なジャンルがあった。
「ドリライは進化し続けなければならない。それは一年生だろうと関係ない」
一年生だろうと関係ない。伊集院さんの変革は俺の背中を押すようだ。やっぱり、ドリライは夢で溢れている。
「みんなの若き才能に期待している。以上」
会場は多くの拍手で溢れた。今までにない。学外を巻き込んだイベントは、上級生たちも期待に胸を膨らませていた。俺もそのうちの一人だった。
こんなチャンス絶対にない。まずは一学期の締めに開催される。ファーストイベントの参加権獲得だ。
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【シーズン学園のイベント】
学期の締めの行事。主にチームドリライをする。観客の投票で勝敗が決まる。
優勝者は大手事務所の契約。スポンサーなど多くの待遇が約束される。
今年度は学年関係なく、参加権を獲得すれば良い方向に変えた。
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