Stage02〜夢が叶った次の日〜
怒涛のドリライ翌日。現在姉さんに鬼の形相で俺を見ている。ある程度覚悟をしていたが、いざ話すと怖い。姉さんの怖さは、俺が一番知っている。
「ハルキ、この進路を説明しなさい」
姉さんは机上に置いてる進路調査票をトントンと指でつつく。進路調査は親に一度見せないといけない。見せなくてもどうせ、担任のリークでバレる。結果見せるしか無いのだ。
「俺シーズン学園に進学する」
シーズン学園とは、日本で一のプロパフォーマの育成の学園だ。昨晩帰宅後、月曜日に提出する進路調表は、地元の高校からシーズン学園へ進路を変えた。しかし、姉さんはこの進路に良い顔をしない。
「昨日、伊集院ユキヒトさんのドリライを観たんだ。俺もあの人のような、パフォーマーになりたいんだ。頼む姉さん」
「許可しなわ。ハルキ、シーズン学園で卒業後、何人プロパフォーマになっているか、知っているからしら ?」
願いはピシャリと遮らる。姉さんは腕を組み、質問の回答を求めるが、俺の答えはNOだ。対して姉さんはスラスラと、答えを言葉にする。
「良くて20人、悪い世代で0人の時もある。そんな狭き門、ハルキは戦えるの?」
少ない。姉さんの言う通り、プロパフォーマーは誰もなれる物じゃない。ダンスと歌が素人の俺と伊集院さんの実力は、天と地の差だ。けど俺も引かない。俺は自室の机の引き出しを開ける。
「これだ」
机の引き出しからは、大量の楽譜。それは、今までに書き溜めたオリジナル曲。
曲だけは作れるが、完結のない曲達。けど、昨晩のドリライを観て、観客の姿。歌にダンスを体感した。俺がドリライを知れば、未完成の音楽は完成に近づけるかもしれない。
「姉さん俺、隠れて曲作っていたんだ」
楽譜を姉さんに手渡すと黙ったまま、楽譜を見る。怒りもせず、淡々と譜面を読み進めている姿は、逆に怖く感じる。
でも、此処で諦めたら絶対に後悔する。
「学校終わった後、曲を作ってた。でも、一つも完成したことない」
曲を作ることは好きだ。けど、何か物足りなく、全て未完成に終わってしまう。俺はそれが当たり前だと、思っていた。
「でも、昨日のドリライで、音楽の世界が広がったんだ」
今まで、見たことがなかった。あんなにも凄い音楽は、観客と伊集院さんが一体になって、作りあげた夢の時間は俺の考えが変わった。
「だから、俺はシーズン学園で、自分の音楽を完成したい」
姉さんは一通り、楽譜を読んだ後、俺と目を合わせる。鋭い眼差しに俺の心臓の鼓動が速くなる。そして、数秒空いた後、結果を告げる。
「わかったわ、受験しなさい」
今良いと、言った、なら、俺シーズン学園の受験していいんだ !思わず声を上げて、喜ぶ感情に姉さんは「ただし」と付け加える。
「やるからには、トップパフォーマーになりなさい」
やるからには、トップパフォーマー。この意味は俺が伊集院さんのようになることだ。いつもの俺なら、諦める。しかし、今は違う。
「やってやる ! まずは合格だ !」
「盛り上がっている所、申し訳ないけど、貴方の課題は山の様にあるわ」
すると、後ろの本棚から本をどんどん、机上に置き始める。全てドリライに関する書籍だ。
「勉学はハルキ自身が頑張れば、できるけど、パフォーマーの基礎が全くない。だからここにあるものは全部実践できるようにしなさい。」
「すっごい量」
辞書並みの本が多く。タワーができそうだ。基礎の本から、応用。他にもパフォーマーの雑誌。多種多様だ。
「これぐらい出来ないと、入学すらできないわ、怖気ずいたかしら?」
「いや、やる絶対やる」
「よろしい、なら頑張りなさい」
「応 !」
そういえば、このドリライの本がなんで、家の中にあるんだ。姉さん音楽嫌なのに、まぁいいか。
「それと、ハルキお姉ちゃんの楽器を勝手に使わないでね」
「やっぱバレてた?」
「誰がお姉ちゃんの部屋を掃除しているのよ」
「姉さんです」
上手く隠していると思ったけど、姉さんにはバレバレだった。今までの苦労はなんっだったのか、まぁ受験もできるから、結果オーライで良いか。
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あれから、俺はシーズン学園の合格に向けて、猛勉強、練習をした。
以外にも姉さんは、俺の練習を手伝ってくれた。
「ハルキ、今のターンはなに?そんな踊りだと、観客は満足できないわよ」
「わかってるよ」
今まで、作曲をしていたあの公園は、俺のダンスと歌の練習場になっていた。練習に付き合う姉さんは嬉しいが、 言葉がいちいち厳しなー。
「まずは、回る時の足の軸をもっと、地面を意識しなさい」
ダンス未経験の俺は、一番苦戦していた。姉さんは改善点を的確に伝えているに、俺は上手く実践できない。ダンスができないと、学園に合格ができない。
「落ち込んでいても、できないわよもう一度」
「…」
「ハルキあきらめるの?」
「諦めたくない」
姉さんはベンチに座った。隣をポンポンと手で叩き、隣に座る様促す。流れるままに、ベンチに腰を下ろす。
「姉さん昔、ハルキみたいにダンスが、苦手な人を見ていたのよ」
「姉さんが ?なんで ?」
「いつか話すわ」
シンボルツリーの葉が風に揺れ、落ち葉が落ちる。肌が当たる風が冷たく感じる。少し前までは、春だったのに早いものだ。
「それで、彼は苦手なものは、無理って言ったのよ」
「ダメじゃん」
「えぇ、あの時私も怒った。けど、彼ならにダンスに食いついたわ。その姿は、下手でもいいなって、思ったわ」
姉さんが自分の話をしないのは知っている。話すとしても、最低限。そんな姉さんが語る。彼はどんな人だろう。俺はそのダンスが苦手な人に興味が沸いた。
「ハルキは人の失敗を笑う ?」
「笑わない」
「それと同じ、あなたが頑張っていることは知っているわ、だから、もう少し頑張りなさい」
姉さんは柔らかく笑った。いつもは無表情の姉さんが笑うと、本当にお姉ちゃんにそっくりだ。姉さんが学生の時、何をしていたんだろう。その話はまた今度。
そして、今日のダンス練習は無事に終わった。刻一刻と、入学試験は近づいている。
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【
ハルキの姉、物事に厳しく幼い頃はさんざんハルキを叱ったせいか、怖がられている。しかし、夢を厳しくも応援している。
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