第12話 お互いに分かり合う気持ち

しばらく周りの景色は薄暗い闇だった。

少しバラのにおいがするのが気になったが、かすかだったので考えなかった。

少し奥に小さい建物が見える。

なんだろう?ミリアは小走りでその建物に駆け寄った。

建物はさびれ、苔が多雨さんは生えている。

所々で魚が行き来していた。

昔は何かに使っていたのかな?ルアラにそう聞こうと思ったが、

ルアラはもう建物の中に入ってしまっていた。急いで追いかける。

「ここは…!」ルアラが言った。

「ここは、私が幼い時に乳母が連れてきてくれた隠れ家だ。」

隠れ家?どういうことだろう。

あの地図はどうして私たちをここに連れてこさせようとしているのだろうか?

建物に入ってみたら、そこは部屋ではなく長い通路だった。

「そうそう!ここ!ここ!この長い通路の奥に部屋があるのよ!

昔はよくそこで遊んでいたわ。本当はここ、私の家だったのになぁ。王国には月1,2回行ってたわ。娘を遠い小島に住まわせるなんて、みっともない母親だわ!」

ルアラは昔のことを思い出して、楽しそうだった。

が、ミリアはそうでなかった。

さっきからの建物の異様な空気。

心の中が、あの部屋には入ってはいけない。

そう言うかのように胸が締め付けるような痛さ。

そうしているうちに部屋の扉の前までついてしまった。

「よし、レッツゴー!」ルアラが言った。

ミリアはこぶしを握る。

もしかしたら、いやたぶん、この部屋の中にはルレルラがいる。

ミリアの直感がずっとささやいてきた。ミリアは言った。

「やっぱり親子の問題だから、ルアラだけで行ったほうが...。」

しかし、もう手遅れだった。

ルアラはとびらを開けてしまっていた。

「え?」ルアラが正面を向きながら言った。

目の前には今にも壊れそうな椅子に座ったルレルラがいた。

しかし、最初にあった時と様子が違う。

悲しみと憎しみに包まれているかのような空気で、あの綺麗だった顔も今はしわが目立つ。

年老いたおばあさんが座っているかのようだ。

「お、お、お母さん?」ルアラが問いかけた。

しかし返事はない。もう一度ルアラが問いかける。

「ルレルラ?返事をして!」

そう大きな声で叫んだときは、

やっと自分たちの存在に気付いたかのように目を見開いていた。

「ルアラなの?」

「そうだわ。」ルアラが小声で返事をした。

「・・・。ち、近づかないで!!!。」

ルレルラは急に形相を変えて言った。

が、ルアラとミリアは動かなかった。

ミリアが言った。

「どうして。どうして。ルアラにひどいことをしたの?」

椅子がガタリと音を立てて動く。そしてルレルラが静かに話し始めた。

「これは私がルアラを生んだ時のことだった。

ルアラが生まれてからの一か月間。その時は今より仕事が大変じゃなかった。

私のお母さまがまだ政治を行っていたから、私は子供の世話に熱中できたの。

しかしそれは一変した。私のお母さまがなくなったの。

その瞬間、私は女王になってしまった。

私が女王の座を継ぐのはまだ先だと思われていたから、

政治や女王の儀式など全く教えられてなかった。

突然起こった出来事だったから、色々パニックで子供の世話を乳母に放り投げてしまった。

気づいた時にはルアラは13歳になっていた。

下の者達には、子供を放っておくなんて、なんて親なんだ。とか、親失格。などと陰で言われ、恥じ、ルアラを自分から遠ざけた。

今になって、自分は馬鹿な事をしたと思っている。

けど、今更戻ってもいいことはないだろう。

そんな事をいろいろ考えていたら、こうなったのはすべてルアラのせいだ。そう思うようになった。だからよ。これじゃ死んだほうがましだわ。」

そう言って立ち上がろうとした。が、倒れてしまった。

「お母さん!お母さん!大丈夫!?」

ルアラは必死で叫ぶ。ミリアも一緒になって叫んだ。

「死んだほうがましなわけないわ!貴方は言ったわ!今になって馬鹿なことしたと!

自分で分かっているじゃない!わかっているならやり直せばいいじゃない!?

貴方はルアラの事を愛していたんじゃないの?どこまでルアラを悲しませるつもり?」

ハアハア。ルアラも言う。

「そうよ!その気持ちは私に伝わったわ!一緒にやり直しましょう!下の者たちはわかってなかったのよ!!!!!新しい一歩を踏み出さなきゃいけないわ!」

するとルレルラは小さな声で言った。

「でも...。貴方にしたことは...。

一生つぐない続けても足らない事を私はしてしまったのよ。

そして。時が来てしまったわ...。」

そう言ってルレルラは体から紫色の煙を出して、消えてしまった。

「お母さん!おか~さん!!!!!!!!!!!!!!!!!」

ルアラが叫ぶ。しかし、ミリアは何が起きたか分からなかった。

こんな状況で聞きたくなったが、ミリアはルアラに聞いた。

「ル、ルレルラはどうなってしまったの?」

静かにルアラは答えた。

「亡くなってしまったのよ。残念だけど。寿命だわ。母は結構年をとっていたから。」

うわわわわわわわわわわあああああああああああああああんん。

大きな声で泣き出した。

ミリアもつられて泣いた。

そして悲しい一日が終わった。


第十二章 終

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