第7話 先に進めば新たな悲しみが生まれる
3人はともに進み、ドアの前へ立った。
ドアノブはなく、小さな穴(奥には通じていない)が開いているだけの古い木のドアだった。もう数百年は使っていなかった様に見える。
ミリアは最初に扉を押してみた。
開かない。
ルナとミリアは顔を見合わせて、ポケットの中の種を取る。
穴にたねを入れようとした瞬間、「ちょっと待ったー!」今まで無言だった空気が一気に放たれた。周りが少し揺れたかにも思えた。
「待って。そこに紙があるのだ。少し見ておいたほうが良いのだ。」
こんな簡単にいくはずがないと思っていたルルはあたりを見回していたのだ。
冒険者の主へ
ここを通りたければ、幻の花の種を渡すのだ。
ここを通りたければそなたの大切なものが消えるだろう
先に進めば新たな悲しみが生まれるであろう。
と、書いてあった。
「新たな悲しみ?大切なもの?」
ルナは言いましたが、ミリアはなんとなくわかった気がして、汗がヒヤッとしました。
ミリアにとって大切なもの、それは家族。また、島の人たち。
今いる家族、ルナだ。
「ル、ル、ルナ…。」ミリアは恐れながら言った。
「?」ルナは分かってない。
ルルも分かり、口をぽっかり空けていた。
やっぱりやめよう。そう言いかけた時、ミリアはふと思った。
私は、お母さまからの使命がある。そしてルレルラからの願いも。
ここで引き下がったら意味が無い。
しかし、大切なルナが…。
ルナが消えない方法はないだろうか。
「無いね。」突然ルルが、ミリアの心を読んだかのように言った。
「どうして?どうして?どうして?」ミリアは泣きそうになりながら言った。
「フェアリーゴットファザーは大切なものが消えない方法を頑張って考えた。
100年かけて。しかしできなかった、失敗した。
それのせいで、フェアリーゴットファザーは亡き者に…。」
泣きながら言っている。
いつものしゃべり方はもうなくなっていた。
ルルは続けた。
「悲しさのあまり死んでしまいそうだったから、ポジティブチェンジしようと決意した。
だから、不思議なしゃべり方にしたの…。」
ミリアたちと出会った時も、ずっと頑張って悲しみを抑えていたんだ。
そう思うと、ミリアは申し訳ない気持ちになった。
会ってからずっと世話をしてもらい、いつも楽しそうな喋り方で、ここまでついてきてくれたルル。今まで自分が悲しい。不幸だ。と思っていた小さな事が恥ずかしくなってきた。
今のミリアには感謝しかできない。自分の事しか考えていなかった。
「ずっとありがとう。ごめんね。私ばっかり貴方に頼っちゃって。」
ルルは鼻水をすすった。
ルナを見た。
ルナは扉の事で真剣だった。
早く進まなければ。そう思っているようだった。
「お姉ちゃんたち!早く!早く!」
そう言って、二人を急かす。
今にも種を入れようとしている。
「作戦練り直し!!!!まだ種は入れないで!!!!」ミリアは言った。
しかし、ルナには聞こえていなかった。ミリアとルナの間は距離が少しあるのだ。
どうしよう。どうしよう。もしミリアの感が当たっていたのならばルルは消えてしまう。
「やめて!!!!!!!!!!!!!!!!」ミリアとルルが大声で叫んだときには、ルナと扉の姿は消えて、古い螺旋階段が姿を現したのだった…
第七章 終
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