1話 猫の幼馴染はキャットフードを食べない
霞は昼食の蕎麦をすすった。
「やっぱ人間の食べ物は美味しいね〜キャットフードなんて食ってらんないっすよ〜」
「このキャットフードどうしよ」
霞は猫だからという理由で親からも見放され、元から少なかった友達も更に減ってしまったらしい。親からの仕送りが止まり、今までのようにアパートで一人暮らしができない可能性が出てきたため「泊めてくれない?」とか聞いてきたらしい。流石にそんな話を聞かされて「ごめん無理」とか断れるほど俺は冷たい奴ではない。一ヶ月くらい泊めることにした。
霞は猫だからキャットフードを食べるのかと思ったが違うらしい。先程急いでキャットフードを買ってきて、一口食べでギブアップした。猫と言えど人の形だからか、人間の食べ物が好きらしい。
「もうちょっとキャットフード美味しかったら食べたんだけどね〜ちょっと人の口には合わないっす」
「お前猫だろ」
俺達は蕎麦を食べながら談笑していた。開けた窓から入る涼しい風が夏の暑さを和らげてくれる。来年は新しい扇風機でも買うかと考えていると、霞がある提案をしてきた。
「今度さ、温泉旅館行かない?」
「温泉?」
「そ、私高校でまともな青春とかしてこなかったじゃん?」
「まぁ、そうだな」
確かに霞は高校時代、変人扱いされていたので友達は少なかった。部活に所属していたわけでもなく、チャイムが鳴ると同時に俺と一緒に爆速で帰宅していた記憶がある。
「じゃ、今度温泉行くか」
「やった!」
俺は蕎麦が無くなった皿を台所まで持っていった。
「俺洗っとくから」
「まじ?助かる〜」
俺は一人暮らしをしているので、家事は全て俺がやっている。しかし霞が居候することになったので、家事は分担できるようになるだろう。家賃を払わない代わりに家事をする、文句は言えないはずだ。
他の家事も終えて一段落ついた。霞はずっとゴロゴロしていた為勿論家事は全て俺がやった。
「なぁ、2人で暮らすならルールとか決めないか?」
「ルール?……まぁ、決めたほうが良いか」
そこから俺達の話し合いが始まった。結果として、家事の6割を霞が、残りの4割を俺がやることになった。他に、「家賃は全額俺負担」「水道代、光熱費は俺が9割負担」「食費は全額俺負担」など、霞にとってかなり有利なルールにした。本当はもっと厳しくしても良かったのだが、これは俺の優しさだ。
「そういえば、明日って何曜日?」
「月曜日だな」
「そっか〜吹雪さ、明日の講義何コマ取ってる?」
「確か……4かな?」
「その中で休んだらキツイのは?」
「無い」
何故こんな事を聞くのか疑問に思ったが、俺は気付いた。多分、「じゃあ明日休んで遊び行くぞ!」とか言うのだろう。霞はそういう奴だ。
「つまり明日休んでも無問題って事だね?」
「まぁ……そうだけど」
確定演出だ。俺は次の台詞を完璧に予想して、霞の言葉を待った。
「じゃあ明日休んでデート行くぞ!」
幼馴染は猫でした(打ち切りました) さすふぉー @trombone1123
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