幼馴染は猫でした(打ち切りました)

さすふぉー

プロローグ 幼馴染は猫でした

「猫だった!」

「は?」


 地獄の様な夏の暑さも和らいできた9月の半ば、開口一番に、幼馴染の猫山霞ねこやまかすみが馬鹿みたいな事を言いだした。


「霞?人間はな、猫にはなれないんだぜ」

吹雪ふぶきぃ……私はなぁ……」

「……なんだよ」


 前から馬鹿だとは思っていたがここまでだとは思わなかった。この馬鹿馬鹿ないつものノリに付き合ってやろう、と言うことで霞の言葉を待った。


「私は元から猫だったってことだ……」

「ホントに何言ってんの?」


 霞はもう手遅れだったようだ。



 猫山霞、美しい黒髪ロングが特徴的な美少女で、幼稚園からの幼馴染だ。中々頭がイカれていて、高校時代は「宇宙人」「転生者」とか言われていた。しかしどれだけイカれていても顔が良いお陰で、大体一ヶ月に2回位のペースで告白されていた気がする。全てフッたらしいが。

 数ヶ月前、霞は20歳になった。そんな霞は最近、人間ドックを受けたらしい。理由を聞くと「なんとなく」と言っていた。その人間ドックで、何故か自分が猫だと知ったらしい。これでは人間ドックではなく人間キャットだ。

 そして現在、霞がいつも通り謎発言をしている。まぁ霞の謎発言は慣れたものだが、ここまでだとは思わなかった。ついに最後の頭のネジが吹っ飛んだのだろう。


「なんかさ、私猫だったらしいんだよね。元から」

「うん。そっか」


 俺は考えるのを止めた。もうこれ以上考えても理解出来ないと頭の中で割り切り、適当に相槌を打った。


「ほら見てよ、尻尾。動かせるんだよね。撫でてみてよ」

「しっぽ?だな……」


 霞はスカートの下からモフモフした黒い尻尾?を出し、俺に向けてきた。今までこんなモノは無かったはずだ。俺は恐る恐るその向けられた尻尾に触れた。するとどうだろうか、まるで本物の尻尾の様な温もりがある。


「あんまり触られるとちょっとくすぐったいかも」

「あぁ、ごめんごめん。モフモフしてたもんだからつい」


 触りすぎたようだ。見ると霞は恥ずかしそうに顔を赤らめていた。可愛いかよ。


「でもこれで猫の証明出来たんじゃない?」

「そうだな、尻尾生えてる人間なんていないもんな」

「でしょ?んでさ、お願いがあるんだよね」

「なんだよ」


 急に霞は申し訳無さそうな顔をして言った。対して俺は、どうせいつもみたいに下らないお願いをしてくるんだろう、と思いながらも次の言葉を待った。


「しばらく泊めてくれない?」

「は?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る