第15話

「最近、スマホばっかり触ってるけど、勉強大丈夫なの?」


母さんはリビングのソファで寝転がってスマホを触っている僕を見て、呆れた顔をしている。あの日以来、僕は仮面アイドルにのめり込んでいった。


「大丈夫!」


僕は母さんの呆れた顔なんて露知らず、スマホの画面に夢中になっていた。



 マスカレード・アマリリス、通称『マスリリス』。半年前ぐらいにできたまだ新しいアイドルで、一応、大きめの事務所に所属しているらしい。そこら辺はよくわからない僕だが、そんな感じらしい。特徴と言えば、『仮面』。メンバーみんな仮面で目元を隠してパフォーマンスする。加えて、アイドルらしからぬカッコよさ。黒を基調とした衣装、突っ走るような楽曲、キレのあるダンス、どれをとってもかっこいいの一言。一人一人に宝石が割り振られているみたいで、それも憎らしいほどにかっこいい。メンバーの名前もそれぞれの宝石にちなんで名づけられているらしい。全員で十六人いるみたいだけど、僕はグループ全体が好き。そういう人を『箱推し』っていうみたい。僕はマスリリスの箱推しってことになるのか。



マスリリスと出会ってから、僕の生活はマスリリス一色となっていった。帰ってくると自分の部屋でマスリリスの動画を見まくる生活。もう見てない動画がなくなりそうになったときには出会ってから一週間が経っていた。

今日も今日とて、ベッドでうつ伏せになり、頬杖を突きながらスマホでMVを見ていた。このMVなんてこの一週間で何回再生したのか分からないぐらい再生しているが、今日も変わらずMVを見ていた。


『ピロンっ』


そんな時、スマホの通知音とともに、スマホ上部に通知の内容が現れた。


『ライブ開催のお知らせ!』


僕の指は脳が指示を出す前に動いたような速さで通知を開いていた。



『二枚目シングル発売記念ゲリラライブを開催します!』



「ライブやるんだ…」


僕はつぶやきながらスマホをスクロールしていく。


「日程は一週間後か……。あれっ?ここってうちからそう遠くないな。当日券で入れるみたいだし、行ってみようかな!」


僕の気分も口角とともに上向きに傾いていた。都会近くに住んでいると、どこに行くにしても人が多いし、テニスでも強い人ばっかりで嫌になっていたけど、生まれて初めて都会の近くに生まれてよかったって思ったかもしれない。少し傾いてきた日差しと程よい小風が少し開けた窓から緑色したカーテンを揺らしている。

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