第18話








 あれから5年の月日が流れた。私は10歳、ネイビーは17歳とそれぞれ順当に年を重ねていた。ネイビーはあのときから変わらず献身的に私に仕えてくれていて、その美少女ぶりにますます拍車をかけていた。


 学校に入るまで後5年となったが、結局お金を稼ぐような方策は思いつかないままここまでずるずると来てしまった。5年という歳月をかけたのに何をしていたのかと思われそうだが、言い訳させてほしい。まず、冒険者ギルドという定番の策が使えなかったのが大きかった。この世界はそれなりに戸籍制度がしっかりしていて、身分関係なく働けるような場所がなかったのだ。それに、そもそも忙しくてあんまり自由な時間が取れなかったからという物理的な制約もあった。こちとら、泣く子も黙る公爵家嫡男ぞ? やらなきゃいけないこと、覚えないといけないことは山盛りで家を抜け出す暇なんてそうそうなかったのだ。幸いこの体は記憶力が良かったのでなんとかついていくことができたが、当初の予定とは大きく違っていた。


 そんな中でも体を鍛えることだけは続けていてそれなりに成果もついてきた。剣術の時間とかもあったため、前世なんかとは比べ物にならないくらい強くなったように感じる。先生たちも『筋が良いですよ』とか『このままなら王国一の剣士も夢ではありません』なんて褒めてくれているので私の剣術の腕前は相当なものなのだ。だから、追放されてもなんとかなるかと考えている。


 もちろん闇魔法も研鑽を重ねていて今までできていなかった魔法なんかも発動できるようになった。特に闇魔法について書かれた本を見つけることができたのが大きかった。そんな風に順風満帆に見える私の人生だったが、現在私を悩ませる大きな問題が一つ存在していた。


「あ~、どうしよう? ネイビーを犯さなきゃならないの無理ゲー過ぎん? マジでどうすればいいかな?」


 そう、私にはネイビーを犯すという下劣きわまる最悪なタスクが残されていた。ゲーム内でルイスの外道さを際立たせるためのエピソードとして、ルイスが10歳の頃からネイビーを性的奉仕をさせていたという話があった。ゲームと違う展開にしたくないため、やろうやろうとは思っているがなかなかその覚悟が決まっていないのが現状だった。


 なるべくネイビーへのダメージが少ないようにしたいがどうすればいいのか全く見当もつかなかった。闇魔法で意識を混濁させて無理やりやるのも手だとは思うんだけど、分かった時のショックが大きいよな。それに、その後もネイビーには仕えてもらわないと困るので、それは最終手段だな。直接ネイビーにお願いするのも考えたが流石にそれは気が引ける。他には……。


 と、まあこんな感じで全然いい方法が思いつかなかった。そもそも、あんな可愛いネイビーがこんな風に花を散らさなきゃいけないなんて最悪すぎる。——あ、そうだ! 闇魔法で操って、犯されたと誤認させればいいんじゃない? いや、でもそれじゃ、それがばれた時にネイビーが嘘つきとか言われちゃうかもしれないか? あ~、ホントにどうしよう?


 そんなことを考えていると部屋の外から『ルイス、いる? 入るよ~』とネイビーの声が聞こえた。とりあえずさっきの話は置いておいて意識を切り替えないと。もうすっかりルイス口調で話すのにも抵抗がなくなっており、最近はぼろを出すことも失くなっていた。未だに頭の中ではを使っているもののすっかりルイスに慣れきってしまったのだと実感する。とはいえ、こんな話ネイビーに聞かれでもしたらやばい。しっかりと意識を切り替えてネイビーを迎えることにしよう。


「ああ、入ってくれ」


 そう許可を出すとすぐに扉が開いて、ネイビーが中に入ってきた。


「もう、準備はできた? あ、ちょっと髪が乱れてるからこっち来て」


 手招きをするネイビーの元に行くと、髪を整えられる。5年前から身長差は縮まったもののまだネイビーの方が大きかった。ゲーム中のルイスもチビだったからもしかしたらネイビーの背を越すことはないのかもしれない。


「これでよしっと。婚約者に会うんだからルイスもしっかりしないと」

「分かっているって」


 そう、今日は私の婚約者が家にやってくる日であった。これまで何度も顔を合わせているため今更緊張などはしないが、昔はルイスの口調を確認するいい相手であった。彼女とのやりとりはあまりゲームで語られていなかったので、適当に付き合えるのも良かった。それにヒロインの一人というだけあって可愛い彼女に会えるのは単純に楽しみだった。そうして私は出迎えるために外へ向かった。







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