第一四話 初めての最高ランク・スキル
討伐を達成すると同時に。
くずおれたドラゴン・ゾンビの亡骸が、煌めく粒子となり……
二つのアイテムへと変化した。
「じ、事前に聞かされてはいたけれど……実際に目にすると、驚いちゃうわねぇ……」
アイテム化する魔物に対し、ノルンが初見の反応を見せる中。
俺はまず、獲得した戦利品の片方……禍々しい長剣をレオナへと差し出しながら。
「こいつの名は、魔剣・ジーク=ヴェラリオ。切れ味が鋭いのは当然だけど……アンデッド系の魔物に対する特効効果が付与されてる」
これさえあれば、物理攻撃が効かないような相手であろうと問答無用でぶった斬ることが可能となるだろう。
「こいつを君に託す。上手く利用してくれ」
「っ……! い、いいの!? こんな上等なもの、もらっちゃって!」
「うん。俺はこいつで十分だしな」
愛用の魔剣を見やりつつ、俺がそのように受け応えると、
「えへへへへへ」
それはもう嬉しそうに、頬をダルンダルンにしながら、戦利品を受け取るレオナ。
そんな姿に微笑ましさを感じつつ……
「ゼクス君のお目当ては、そっちの方みたい、ね?」
「あぁ。これでしばらく、俺達は無敵になれるんじゃないかな」
言うや否や、俺は手元にあった戦利品の一つ、スキルブックを開いた。
刹那。
スキルブックが黒いモヤとなり、我が身へと吸い込まれていく。
そして――
『パッシブ・スキル、《ウェイクアップ・スリー》を獲得しました』
『メイン・スキル、《テイム》の効果により、使役物が同パッシブを獲得しました』
新たに獲得したURランクのスキル。
その効果を簡潔に言い表すとするならば……
コンティニュー機能である。
原作において、生命力が尽きた際のペナルティーは近場の街に戻されるか、あるいはボス部屋の前に戻されるか、二つに一つなわけだけど。
ここはあくまでも原作をベースとした現実世界。
よって、生命力がゼロになったなら、その瞬間、キャラクターロスト……つまりは、死亡ということになるだろう。
だが、今回ゲットしたパッシブがあれば。
「俺達は今……三回死んでも、復活出来る」
そう。
名の通り、《ウェイクアップ・スリー》は生命力が尽きても、三回までは全回復した状態で復活することが可能となる、チートスキル…………だった。
というのも、このスキル、エンドコンテンツに対する救済措置として実装されたもので、実際、当初はこいつのおかげでかなりの難易度緩和となっていた。
けど、アップデートを重ねるごとに難易度調整が入っていき……
最終的には、《ウェイクアップ・スリー》がエンドコンテンツに挑戦するための前提条件といった感じで、落ち着くこととなった。
最初のうちはガチの救済策であり、チートスキル扱いだったわけだけど。
最終的には、そこらへんの雑魚ですら、エンドコンテンツにおいては即死級の攻撃を連発するようになったため……
全盛期に比べると、ちょっとばかり株を落とした感は否めない。
しかし、それでも。
「さ、三回まで……!」
「死んでもいい、って……!」
プレイヤーの俺からすると、どうということのない効果ではあるのだけど。
彼女達からすれば、信じがたいほどの反則能力に感じられるのだろう。
まぁ、とにかく。
「――想定する最強ビルドに一歩、近付いたってところかな」
◇◆◇
屋敷へと帰ってからすぐのことだった。
父の側近にして執事を務める老爺から、次の伝言を受ける。
「ヴィクター様はゼクス様に、御前試合の参加を望まれております」
あ~、うん。
わっかりやすいな、マジで。
きっと様々な手を使ってこちらを消耗させ、そのうえで、ローグに勝たせるって腹づもりなんだろうけど。
まぁ、そうだな。
別に断る理由もないし、俺は執事へ次の言葉を投げた。
「父に申し伝えておいてください。ゼクスは此度の御前試合にて、優勝してみせると」
俺の意思は、父の望みに反するものであろう。
だが、それでいい。
俺は既に十分な力を得た。
しかしてなお、将来的なリスクは残っている。
そう……
我が家は本編にて、思っクソやらかすのだ。
それこそ、一族郎党が処刑になるほどの、大事を。
当然、そんな展開は阻止するつもりだけど、しかし俺とて神ではない。もしかしたならそっちのプランが失敗する可能性もある。
よって今のうちに。
俺の価値というものを王侯貴族達に知らしめて。
最悪、この家からおさらばしよう、と。
そんなことを考えている。
簡単に言えば、別の家に養子入りするってことだな。
「……御言葉の方、承りました」
執事が去った後。
丸一日が経過して……
翌日。
いつものように朝餉を摂っていたところ、不意に食堂のドアが勢いよく放たれて、
「ゼ、ゼクス様っ! お、おおお、お客様が、お見えですっ!」
使用人の一人が、めっちゃ焦った様子で、こんなことを口にした。
「い、今すぐ! 正門前へ、お出迎えを!」
なんか知らんが。
どうにも、無視出来ないほどの大問題って感じ、だったので。
俺は彼女の言う通り、レオナとノルンを引き連れながら、正門前へと足を運び――意外な人物と、対面した。
「っ……!」
今まさに、馬車から降りて、こちらと目を合わせた、その人物とは。
「あら、ゼクス様。わざわざ出迎えてくださるだなんて。……ふふ、少しは脈があるということかしら」
なぜだか嬉しそうに微笑む、美しい少女。
ローグの婚約者であるはずの、公爵令嬢様。
――ソニア・ツヴェルク、その人であった。
~~~~あとがき~~~~
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