第一二話 URスキルをゲットしよう!
グイン・ノルヴァトーレを暗殺した時点で、俺はある大ボスに目を付けられた可能性が高い。
原作においてもレオナのサブクエをクリアすると、一部のメインクエストが少しばかり変化し……難易度が、跳ね上がる。
とはいえ。
しっかりと対策をすれば問題はない。
その一環として、今回。
あるURスキルを、取りに行こうと思う。
「じ、事前に聞いてはいたけれど……本当に、不思議な力、ねぇ……」
ファスト・トラベルを初めて経験したノルンが、驚いた様子で呟く。
その隣で、レオナは周囲を見回しつつ、
「かなり、辺鄙な場所にある村って感じ、だけど」
ここで何をするのか。
そう問い尋ねるような視線に対し、俺は次の言葉を返した。
「この村自体は、特にどうというものでもない。重要なのは……村の近くにある山だ」
果たして、そこには。
ダンジョン扱いされていない、隠し迷宮が存在する。
……いやホント、マジで面倒臭い仕様なんだよな、これ。
ファスト・トラベルは拠点とダンジョンに瞬間移動出来るわけなんだけど、隠しダンジョンはその対象範囲に入ってなかったりする。
だからわざわざフィールドを移動し、入口まで向かわねばならない。
「ふぅ……今回は近場でよかった」
山へ足を運び、中腹まで登った頃。
あえて獣道を行き……洞窟の入口に到達。
ここが件の、隠しダンジョンである。
内部に救う魔者達は巨大蜘蛛だったり、デカいコウモリだったりと、なかなか気持ちが悪く、
「うへぇ~……あたしが嫌いなタイプばっかじゃないの……」
「昔っから苦手よねぇ~。虫なんか特に」
とまぁ、雑談が出来る程度には、相手方の力は強くなかった。
しかし。
それは通常ルートを辿った場合の話。
ある場所に辿り着いた後……
「確か、ここだったよ、なッ!」
俺は壁面に蹴りを入れて、秘匿されていた通路を露出させた。
「ここからはかなり手強い感じになる。二人とも、油断せずにな」
何せこっから先の隠しエリアは、攻略推奨パラメーターが30000前後の設定となっている。
それを満たしているのは現在、レオナのみ。
かなり背伸びをする形での挑戦なので、そこそこのリスクは否めない。
「明らかに、空気感が違うわね」
「えぇ……さっきまでの道中が殊更、生ぬるく感じるわぁ……」
言い合いつつも、周辺警戒を怠ることなく、得物を構える二人。
俺達の携行装備は、全員が近接用のそれであった。
レオナとノルンは高級武具店で購入した長剣。
俺は先のグイン戦で得た魔剣・グラド=エヴィオス。
防具については相も変わらず身に付けてはいない。
ここはそれなりの危険地帯ではあるのだけど、まだ高性能防具を必要とするような段階ってわけじゃないし、むしろ下手に着込むと機動性や視界が悪くなって、逆に攻略難度が高くなるんだよな。
そう……主に、アイツのせいで。
「うげぇ~……デカい蜘蛛だけなら、まだしも……」
「あ~……コレはちょっと、わたしでもキツいわねぇ、正直……」
黒くてヌメヌメしている、名前すら口にしたくもないアイツ。
それが馬鹿ほどデッカくなったら、こんな感じになるだろう。
見た目的には当然、不快感MAXな魔物なんだけど……
能力的にもガチで不愉快である。
「速いわね、こいつッ!」
「目で追うのも、けっこう難しいわぁ……!」
そこそこに苦戦しつつも、なんとか勝利。
この隠しエリアは見た目と性能が不愉快すぎる魔物がボコジャカと湧いており、色んな意味でストレスが溜まる。
しかしながら群れで襲ってくるタイプの魔物は存在しておらず、そこだけが唯一の救いといえるだろう。
……デッカくなった黒いアイツが大挙として押し寄せてきたら、もうその時点で攻略を諦める自信がある。
かくして。
不快指数MAXの道中を、なんとか切り抜けた後。
俺達は開けた場所へ出た。
見るからにボス部屋といった空間。
その中央には。
「あ、あれって……!」
「ド、ドラゴン……!?」
竜種に属する魔物は、いずれも強大である。
この二人にとっても、ドラゴンは畏怖の対象であったらしい。
そして、ぶっちゃけ。
俺もけっこう、スリリングな感覚を味わっていた。
「さてさて。今の俺達に、倒せるかね」
相手方はただの竜じゃない。
眠るように蹲っているそいつは、全身がボロボロで……
いや。
もっと直接的に、腐りきっていると表現した方が、わかりやすいか。
この隠しダンジョンにおける、隠しボス。
それは――
クッソ厄介な特性を有する、ドラゴン・ゾンビである。
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