第三話 よっしゃあ!
我が身には、プレイヤー権限という、ある種の異能が備わっている。
各種ステータスを確認出来ること。
成長システムが原作に準拠していること。
これらはプレイヤー権限によるものだ。
そこに加えてインベントリ機能やファスト・トラベルを再現した異能も備わっており……
後者の力で以て、俺は王都へと瞬間移動した。
ファスト・トラベルは実に便利だが、細かい場所の指定は出来ない。
原作プレイ時に足を運んだことがある街やダンジョンへ飛ぶことは可能だが、戦術指導者のもとへひとっ飛び、みたいなことは不可能ということだ。
それが出来るなら、ルブルス相手に土下座することもなかったろう。
さておき。
俺が王都へ向かったのは、ある奴隷を購入するためだ。
「……居てくれると、いいんだけど」
呟きつつ目的地である商店へと足を運ぶ。
かなりの高級店だが、こちらの手持ちを思えば全商品がリーズナブルに感じられる。
そんな店舗へ入ってからすぐ、カイゼル髭が特徴的な店主が一つ、問うてきた。
「奴隷の引き渡しには隷属の魔法が必須となりますが……習得はされておりますでしょうか?」
この世界における魔法は、高等魔法と生活魔法の二つに分類されている。
前者は魔導系のメイン・スキルの持ち主しか習得出来ない一方で、後者は誰でも扱うことが可能だ。
そして隷属の魔法は、生活魔法に属しているわけだけど。
「えぇ。習得済みなので、問題はありません」
プレイヤーは原作スタート時、生活魔法の全てを習得した状態となっている。
それを再現したのか、プレイヤー権限を持つ俺の身には、転生を自覚すると同時に生活魔法の全てが刻み込まれていた。
「では……本日はどのようなものをご所望で?」
かなり……いや、とてつもなく、気恥ずかしいのだけど……
「娯楽用の奴隷。それも、一〇代前半から後半あたりを、見せていただけますか?」
娯楽用というのは、まぁ、いわゆる性奴隷ってやつだな。
こちらの言葉に対して店主は特になんの反応も示すことはなく、
「かしこまりました」
淡々とした調子で、道案内を行う。
さて、問題はここから、だな。
彼女はかなりランダム性の高い存在として設定されている。
プレイヤーによっては奴隷になる前の段階で彼女と出会うこともあるし、逆にプレイ開始の時点で奴隷になっているということもある。
その結果いかんで発生するサブイベントも大きく変化し、得られる報酬にも違いがあるのだけど……まぁ、そこはどうでもいいとして。
頼むから居てくれよと、願わずにはいられない。
何せ彼女を使役出来たなら、その時点で、俺はローグを遙かに超えるほどの力をゲット出来るのだから。
「お客様のご要望ですと……このエリアが、適当となりますな」
ショーケースに入れられた、少女の奴隷達。
そのほとんどは亜人種である。
高級店なだけあって、誰もが見目麗しく……そして、エロい。
皆、肌色率がとてつもなく高い衣服を着せられており、客であるこちらを目にした瞬間、セクシーなポーズを取ってアピールしてくる。
……金銭的には、全員を購入したっていいわけだけど。
俺はなんとか煩悩を抑え込みつつ、目的の彼女が居ないか、探し始めた。
そうして、およそ五分が経過した頃……
「っ……!」
見つけた。
紅い髪を腰まで伸ばした、獣人族の美少女。
あどけない美貌に微笑を宿した彼女は、その名をレオナという。
彼女の体つきは一〇代前半とは思えないほどのグラマラス・ボディーで、男好きする女体というものを体現しているかのようであった。
ちなみにだけど……
原作には、R-18モードが存在する。
それをオンにしたユーザーの人気ランキングにおいて、レオナの順位はトップクラスであり……俺もたいへん、お世話になった。
「お客様。そちらの奴隷を、ご希望でしょうか?」
「えぇ。お値段はいかほどで?」
「御覧の通り、そちらの奴隷は傷物でして……それ相応に、勉強させていただきます」
店主の言う通り、レオナは現在、右腕と左足を欠損しており、義手と義足を装着した状態となっていた。
原作において彼女を購入した際は、まず、私生活を彩るコンパニオンとして扱われる。
その後、ある条件を満たすことによって、レオナは最強の衛士へと変貌するのだ。
衛士というのはいわゆるオトモ機能であり、特定のNPCとパーティーを組んで冒険が出来るというもの。
ソロ専の初心者が中盤までお世話になる、そんなシステムなわけだけど……
まぁ、とにかく。
「この子をぜひ、購入させていただきたい」
「かしこまりました。では、主人としての権限を引き継がせていただきます」
店主と俺が同時に隷属の魔法を用いて、なんやかんや良い感じに設定を行い……
これにて、レオナは俺の奴隷となった。
「当店には休憩用の部屋が設けられておりますが……ご利用になられますか?」
「えぇ、お願いします」
別に、そういうことするために借りるわけじゃないけどね。
……まぁ、もし望み通りの展開にならなかったら、そういうことをするかもしれんけど。
ともあれ。
レオナを連れて休憩室という名のヤリ部屋へ足を運ぶ。
「……まさにラブホって感じだな」
なんだか変な気分になってくる。
部屋中に充満しているアロマの影響だろうか。
と、そんなことを考えた、次の瞬間。
「ご主人様~♥」
レオナがベッドへ寝転がって……股を開き、誘惑してくる。
その姿にはグッとくるものがあったけど、その一方で。
哀れにも、思う。
なんせ奴隷というのは隷属の魔法だけでなく、洗脳の魔法も掛けられているからな。
そうして主人に絶対忠実な人格へと、創り変えられてるってわけだ。
元来、レオナはガッチガチのツンデレタイプ。
今の彼女はそうした人格を、性奴隷のテンプレート的な内容へと書き換えられているのだ。
……確かに一八禁モードではお世話になったけど、それは洗脳を解いて信頼値マックスにした後の話。
可哀想なのは抜けない理論により、俺の心は急速に冷え込んでいった。
「とりあえず、パラメーターを確認するか」
プレイヤー権限を用いると同時に、こちらの目前へウインドウが顕現する。
果たしてそこに記載されていた内容は、次の通り。
生命力:40000
魔力:35000
筋力:50000
敏捷:48000
魔攻:20000
魔防:35000
つよい(確信)。
もしも彼女を使役出来たなら、このバカ高いパラメーターの二割がこちらのそれへ加算される。
そこからさらに。
「……頼むぜ、神様」
祈りを捧げつつ……
俺はレオナへと《テイム》スキルを発動する。
その結果は。
『対象を使役することは出来ません』
無情にも、メッセージウインドウが、現実を突きつけてきた。
……最悪だ。
もう、俺に打つ手は……
『使役限界数を超過しています』
『アスタリアに対する使役効果を無効化しますか?』
……えっ?
ま、まさか。
「ア、アスタリアを、使役物から除外、する」
と、そのように発してから、すぐ。
『使役可能な数が一になりました』
『対象:レオナを使役しますか?』
…………よ、よ、よ。
「よろしくッ! お願いしまぁあああああああああああああすッ!」
「あはははは♥ お願いしなくたって、もうあたしはご主人様のモノ、だよ♥」
なんか誤解してるレオナを無視しながら、俺は彼女へ《テイム》を行使する。
そして次の瞬間。
『対象:レオナの使役に成功しました』
歓喜のあまり、目の前が真っ白になる。
そんなこちらの、すぐ近くにて。
ベッドに寝転がっていたレオナが一瞬、小さな苦悶を漏らした後――
「えっ……? な、なくなったはずの、手足が……?」
《テイム》の効力によって使役された存在は、その時点で全てのマイナス要素が消失する。
これにてレオナは完全に元通りとなり……
性奴隷から最強の衛士へと、変貌した。
そこに加えて、さらに。
『使役物のパラメーターが一部、プレイヤーに加算されます』
メッセージウインドウを確認すると同時に。
体の奥底から、とんでもないパワーが込み上げてきて。
「うぉおおおおおおおおおおおおおッ!? み、漲ってきたぁああああああああああああああああああああああッ!」
「っ……! あ、あたしも、もう限界だよっ♥ ご主人さまぁ~んっ♥」
レオナを無視しつつ、俺は自らのパラメーターを確認する。
生命力:8005 (8000UP!)
魔力:7005 (7000UP!)
筋力:10005 (10000UP!)
敏捷:9605 (9600UP!)
魔攻:4002 (4000UP!)
魔防:7002 (7000UP!)
目にした瞬間、俺は無意識のうちに叫んでいた。
「しゃっせぇええええええええええええええええええええええええいッッ!」
「え~? まだ出してないでしょ~? あたしのな・か・に♥」
レオナのことをガン無視したまま、さっきから表示されっぱなしのメッセージウインドウへと目をやる。
そこに記されていた内容を目にしたことで、俺は再び、歓喜の雄叫びを放った。
「よっしゃああああああああああああああああああッッ!」
そこに記載されていたのは。
使役物が有する力……メイン・スキルを始めとしたそれを、共有するといった内容。
果たして。
レオナがその身に宿していた、メイン・スキルとは。
「――《 剣聖 》ッ! ゲットだぜぇええええええええええええええッッ!」
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