種も仕掛けもなりすまし
もしかしたら……あの姫様みたいに透明になってしまうかもしれない……………早く………どこ?あのじいさんは………どこ?
必死さゆえか、足の重みは完全になくなり、全力疾走でじいさんの所へたどり着いた。
「人喰いじじいーーー‼︎」
じいさんは、ぎょろっとした瞳でこちらを見ながらヘドロの塊を貪っている。
「返して‼︎その気持ち悪い塊!」
「俺が見つけたんだから、これは俺のものだ」
じいさんに詰め寄るひなをよそに、後ろ向いてヘドロの塊を隠すように貪るじいさん。
一体どうしたらいいの………?
あの透明なお姫様………
じいさんに向かって何かを言うって言ってたっけ………
そう‼︎私は嘘をついてたんだ………
ひながお姫様が言っていた言葉を思い出した途端に、じいさんの動きが止まった。
そしてひなはお姫様が気付かせてくれた事を声に出して叫んだ。
「じいさん。私、嘘ついてた‼︎」
動きが止まったじいさんは、形相を変えて慌てた様子でひなの方に向かい襲いかかってきた。
「言うなーーー‼︎それ以上言うなーーー‼︎」
ひなは後退りしながらも、じいさんに向かって叫び続けた。
「私は自分の心に嘘をついてたし、勝手に幸せだと思い込んでただけだった」
ひなの言葉を聞いたじいさんは、喉に何かを詰まらせるように苦しみ始めた。
苦しみ悶えながらも、ひなを捉えようと必死で襲いかかってくる。
「全部嘘‼︎バスケだって、本当は心の底から好きって言う訳じゃなかった。ただ好きになろうとしてただけだった‼︎」
思いのたけを言い放ったひな。
すると、ヘドロの塊が動き出し内側から黄金の光が湧き出てきた。
まるでヘドロの塊が光で洗われるかのように綺麗になっていった。ヘドロの塊が、黄金の光に包まれたと同時にひなの方に向かって動き出した。
そして、じいさんの体に異変が起きた。
体内で消化されるはずだったヘドロが光と化し、じいさんの体内からも四方八方へ光が飛び出してきた。
まばゆい光に目をそらしながらもじいさんの様子を伺うと、なんと、じいさんの体がみるみるうちに液状化していったのだ。
顔も、体も透明な液体に変化し、水の中に溶けるように消えていった。水たまりのように、地面にへばりついたかと思えば、液状化したぬるぬるの物体が四角い枠のような形になり、あっという間にモダンコースターの車体に変化していったのだ。
あっけに取られるひなだった。
空中に案内人やら………
透明なお姫様やら………
人喰いじじいやら………
ここだけ明らかに次元が違う世界………
フリーズしている脳は、考えることもままならず、無言で立ち尽くしていた。
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