第67話 相互理解
「と、取り乱してしまって、申し訳ありませんでした。ぐすっ」
未だ涙目の
「その、すみませんでした。言い過ぎました」
「いえ、先生こそごめんなさい。と、というか恥ずかしいのでなかったことにして欲しいです」
「分かりました。そうしますね」
「はい、お願いします」
はにかんでそう答えた義弘先生は、切り替えるように頬を軽く叩いてから口を開いた。
「さて、それでは個別面談を始めましょうか。先ずは突然押しかけてしまってごめんなさい。ご迷惑ではなかったでしょうか」
ローテーブル一個挟んだ向こう側に、私服姿の先生がいる。
中々に不思議な感覚だ。そういえば、
ここが初めての女性ではなく初めての人と言うのが若干悲しい部分だったりする。
「迷惑か否かで言えば」
「い、言えば?」
「どうせ友達もいないし予定も無いのでまったくそんなことはありません」
「先生、安心していいのか少し分からないです」
義弘先生は戸惑い顔だった。
「でも、ちょっとだけ安心が勝っているような気がします」
「と、言いますと?」
「はい。
噂……って、ああ、女遊びが激しいって話か。
「ですが、そうではないようで安心です」
「まあ、そうですね。俺は友達がいないので」
「ですから悲しいことを言わないでください」
別に悲しいことでもないのだけれど。
「ちなみに先生は雛沢君は嘘をつくような人じゃないと信じています」
「先生、それは罪悪感を植え付けて喋らせる話術の類じゃないですか?」
「いえ、違います。断じて違います」
「ああ、そうですか」
「それで、実際のところどうなんですか? 女の子と一緒に遊びに行ったのは本当なんですか?」
「まあ、それは本当です。ちなみにその子は彼女ですね」
「そうですかそうですか。……彼女!?
「なんでそんなに驚くんです?」
流石にひどいと思う。
「い、いつからですか!?」
「ちょうどその日に告白されました」
「そうだったんですか!? もしかして、今まで目撃情報があった子も?」
「たぶんその子ですね」
「ち、ちなみに他にの女の子の目撃情報があったというのは? 二股なんてしてませんよね?」
「たぶんですけど、それ
「そ、そうですよね。先程
「そのはずですよ。俺としては全く不順異性交遊をしているつもりはありません」
「そうですか、良かったです。あ、もちろん先生は信じていましたよ?」
いい笑顔でそういった先生のことを、果たして信用してもいいのかは少し悩みどころだった。
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