第62話 周囲の人々
ちなみに
「俺、どうしたらいいだろうか」
「そんなのあんたの好きにしなさいよ……」
呆れ気味に言った
「私はね、出会って早々に付き合って欲しいなんて言ってくるやつ、大抵詐欺師だと思っているわ」
「ひっどい偏見だ」
「でもね、あんたが騙されてもいいって思うなら、それもまたいいことだと思うの。だってそうでしょう? 人は失敗から学ぶものよ」
「失敗を前提で語るな……」
って、待てよ?
「なんだ
「ええ、もちろんよ。最後に洗濯するのはあんただもの」
正直意外だった。てっきり苦言を呈されるか、真っ向から否定されるかのどちらかかと思った。いや、苦言を呈されてはいるのだろうか。だとしても、
「そう、だな。何事も経験だもんな。なんだかんだ言って
「ええ、そうしなさい。私と……
「
「ほ、本当に大丈夫か? うわ言を言い始めたけど……」
「重症だけど、大丈夫よ」
言い淀みながらなのは、普段に増して様子がおかしいことを
「まあただ、ちょっと心配なこともあるわね」
「まだ噂は消えてないでしょ? それが加速してもいいのかって話よ」
「ああ、その事か。いや、それに関しては俺よりも
「何でよ、当事者はあんたでしょ?」
もしそうなのだとしたら、俺は俺なりの責任を取ろうと思う。と言っても、大したことは出来ないんだけどな。精々が俺は大丈夫だと力説してやることくらい。
「なあ
「藪から棒に何よ。覚えてるけど」
「あれってさ、なんでだったと思う?」
「本当に急な話ね。でも、どうしてかしら。当時は勉強に意欲があった、ってわけでもないでしょうし」
「実に簡単な話だ。あの頃の俺は好奇心を隠そうとしていなかった」
「好奇心を? でも、それが何だって言うのよ」
好奇心。それは理性で抑えるのが難しい欲求の一つだ。知りたい、やってみたい、見てみたい。そういう子ども心の権化を
「俺にとって気になることは探求の対象だ。物欲は壊滅的に無い俺だが、知的欲求は人並み以上にあると思っている。今の時代、誰に迷惑をかけるでもなく満たせるからな。でも、当時の俺はどうだろう。調べ物をする手段も知らず、先生に聞くことしか出来なかった。授業中気になったことがあればその度先生に質問していたのを、
「そうね。今じゃ全く考えられないけど」
「そこだよ、そこ」
「いや、どこよ」
勿体ぶるんじゃないわよ、とイラつきながらに訪ねてくる
「今は別の方法で欲求を満たせるからしていないだけで、俺は授業中だろうが気になることがあったら質問をするはずだ。それは何故か。一言で言えば、俺は基本的に周囲の人間をいないものだと認識しているから」
「いないものって……あんた、コミュ障ここに極まりな発言止めなさいよ」
「うっさい。いいか? つまり、だ。俺にとって噂なんて無いようなものって話だよ。まったく気にしてない、それを伝えたかっただけ」
端的に言ってもよかったのかもしれないけど、出来るだけ
「そう。なら、私も気にしないわ。あんたの好きにしなさい」
そして、何様だと言いたくなるような上から目線でそういった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます