第60話 出来ること
注文した飲み物とスイーツが届いた。
「コーヒー好きなのか?」
「好きって言うか、エナジードリンクがあんまり好きじゃないから仕方なく飲んでいるうちに、自然とね。最近じゃ飲み物はコーヒーか、たまに果汁100%のジュースを飲むくらいかな」
「へー、炭酸飲料とかは飲まないのか?」
「うん、全く飲まない。前までは色々飲んでたんだけどね、何時からか飲まなくなってた」
高校二年生にしてブラックコーヒーを素で嗜むようになるとは。見た目に反して中々乙だな。いや、乙なのか? 適当なことを言ったかもしれない。
苦いものを子どもが苦手にし、時として大人が嗜好品のように楽しむことがあるのは大人になると味覚がマヒし、苦みを感じにくくなる、もしくは美味しいと感じるようになる体、と聞いたことがある。それが本当かどうかは定かではないが、もし本当なのだとしたら
だとしたら生活態度が問題なので改めるように苦言を呈して差し上げようか。友人の為に何かをすることくらい厭うことはない。
「そういえば、相談事って何なんだ?」
「ん? ああ、その事。まあちょっと、少しだけ話しにくいことなんだけどさ。最初にさ、私の言葉にどう思っても、その、私を嫌いにならないで欲しい」
それは子どものような発言ではあったが、
正直なところ、ここまで真っ直ぐな気持ちを向けられると困ってしまう。
どうせならすぐ後ろにいるであろう
少し前までの
「もちろんだ。嫌いになんてなるわけないだろ?」
「そ、っか。ありがとう」
たぶん、そのはずだ。
「やっぱりカナデは優しいよね。人が良すぎるんじゃない?」
「そんなことはない。俺は誰かに好かれるような性格じゃないし、誰かに優しく出来るような人間じゃない。出来ることをやってるだけだよ」
「出来ることを、ね。それじゃあお願いしようかな」
思い悩む様に目を伏せた後、吹っ切れた笑顔を浮かべた
「カナデ、私の彼氏になってよ」
それは、相談というにはあまりに一方的な物言いだった。
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