第35話 新嶋心音
「……あータンマ、今の無し。忘れて」
「その、変な意味じゃないから。私にも、
「俺の気持ち?」
「そう。誰とも関わりたくないとか、一人でいたほうが楽とか、分かる」
「
いつもクラスの中心人物で、
「私、中学校の頃は雛沢君みたいな立ち位置だったからね、分かる。でもそれが嫌になって、このままじゃ駄目だと思って高校になってからは明るく振る舞うようにしてみた。正直、毎日すっごい疲れるんだ」
「……嘘だろ」
「嘘じゃないよ。まあ、信じたくない気持ちもわかるけどね」
絶対バレないようにしてたし、と言って
「こんなこと、普通は誰にも言わないからね? 皆きっと、誰にも気付かれたくないことも自分だけの秘密にしたいものもあるんだよ。だから、皆こんなことを思っていたも口にはしない」
「じゃあ、なんで俺に言うんだよ」
「言ったでしょ。雛沢君は、たぶん私と似てるから。似た者同士で仲良くしたいって、おかしなことじゃないでしょ?」
確かに同じ趣味を持つ者同士、同じ悩みを持つ者同士で仲良くしたいという気持ちは何もおかしくない。実際、
「そうだな。おかしくはない」
「でしょ? 別に、今の私みたいになれって言うんじゃないよ? 私だって一人でいる時間の方が好きだし、昔の方が楽だった。でも今がつまらないわけでも苦しいわけでもない。何が言いたいかっていえば、選択肢があるべきだって話」
「選択肢?」
「そう。私が選べたみたいに、雛沢君にも選択肢があったほうがフェアでしょ? だから、もし誰かと喋ってみたくなった時が来たら、私に相談して欲しい。逆に今のままじゃ居づらいと思っても相談してよ。私に出来る限りで、何とかしてみるから」
「いやいや、そんなに頼れないだろ」
「そこは、ウィンウィンに行こうよ」
「……要求はなんだ」
これでパシリにされるとかだったら割に合わないのだが。
「そんな警戒するような目をしないでよ。普通に、この前の買い物の手伝いとかみたいなこと。ほら、私クラス長でしょ? その仕事の手伝いとか、どう?」
「それくらいなら、まあ」
「よしっ、なら決定だね」
そう言って、新嶋さんは嬉しそうに笑った。手伝ってもらえることがそんなに嬉しいのだろうか。確かに今回のクラス会みたいなのは大変そうだ。学校では暇を持て余していたし、新嶋さんなら、まあ。
少しでも気持ちを理解してくれるって言うんなら、悪くはない、かな。
「あ、あともう一ついいかな」
「出来る限りのことなら」
「あーいやいや、何かしてもらおうって言うんじゃなくてね? 名前で呼んでもいい? って」
「え? まあ、好きに呼んでくれて構わないけど」
「いいの? じゃ、じゃあ、私のことも名前で呼んで!
「わ、分かった……」
突然声を大きくして、どうしたのだろうか。それに少し興奮気味だし。名前で呼び合うって、確かに親しい感じはするけどそんなに喜ぶことか? いや、新嶋さ、じゃないな。
「それじゃあ、
「っ、う、うん! 改めて、よろしく、か、
そんなに呼びづらいかな、
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