第28話 ありふれた日常
「
そして
「あら、
「ううん、別に。ただ今日は、皆で一緒に登校しない? って」
制服を着こなし、髪を完璧に整え、万全の準備を整えた状態で
「急にどうしたのよ、まあ準備は間に合うけど」
「そうだよ、どうした
「えっと、
「嫌じゃない、まったく」
「それなら、よかった」
「それじゃあ、
「ええ。ちょっと待っててね」
そう言って
しばしの沈黙が流れて、
「ね、ねえ、
「ん? どうかしたのか?」
少し油断していたせいで上擦りかけた声を、何とか抑える。何か話題を振ろうとしていたところだったので不意を突かれた感じだ。
「あの、さ。ちょっとだけ、聞きたいことがあったんだけど」
「あ、ああ。なんでも聞いてくれていいけど」
「そ、そう? それじゃあ……」
どうしたのだろうか。先程からずっと
「
「付き合ってる?」
聞き覚えの無い響きを口にしてみる。付き合う、付き合うってあれか。交際しているかと聞かれているのだろうか。
スプリング、つまりは
「あり得ないあり得ない。あいつとはそんなんじゃない」
「そうなの? でも
「あー、それは……」
どうなんだろうか。客観的に見てみれば自分磨きをするのは恋人が出来たことになるのだろうか。もし
一緒に居づらくなるのだろうか。
もしかして
「……別にちょっと気が向いただけだ。言われて、やってみようと思っただけ。それ以外何もない」
「ほんと?」
「心配するようなことは何もないから、安心してくれ」
そういえば、笑顔ってどうやって作るのだろうか。前までは笑えていたこと、自分が笑えないわけじゃないことは知っていたけれど笑おうとして笑うことは一度も練習したことが無かった。
変な笑顔になっていなければいいんだけど。
「しばらくはまだ、ずっとこのまま変わらないだろうな、俺は」
「……そっか、それなら、よかった」
その時の
嬉しそうに描かれた、綺麗な笑顔で呟かれた言葉を。
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