第26話 お帰り
「あら、お帰り」
「ただいま」
「どう、楽しかった?」
家の前で分かれ、一人家のリビングに入った
「
「私は
「そんなこと言われても、分からん」
「ふ~ん、
自室に向けようとした足を、思わず止めた。
「……楽しかった。久しぶりに泳ぐ魚を見たし、イルカショーも迫力があった。たぶん、楽しかったよ」
「よろしい。それで? お土産は?」
「お土産って……別に遠出したわけでもないんだが」
「ばーか、あんたからは期待してないわよ。どうせ
こいつ、エスパーかなんかか。
見つからと面倒だからと思って鞄の中にしまっておいた、あそこの水族館限定のクッキーセットを取り出す。
「あとで父さんと母さんにだけ渡すつもりだったんだけどな」
「なによ、私が一人で全部食べちゃうみたいに言わないで」
「ほとんど食べるだろうが」
「否定はしないわ」
「もう少し悪びれたらどうなんだ……」
「断りはしたんだけどな。いつもお世話になっているからって聞かなくて」
「良いことじゃない。いつでも行けるかもしれない、特段珍しいものじゃないかもしれない。でも、気持ちを行動で示すって言うのは難しいことなのよ?」
「自分がどう思っているか、相手にどう思って欲しいのか。それを誠心誠意行動で示す。
「そういうもんなのかねぇ」
「友人をもの同然に捉えている
俺は本当に、友達をもの同然に捉えているのだろうか。だとしたらそれは、極めて失礼で最低なことなのではないか。
「何を感知がしているか分からないけど、安心しなさい。友達をもの同然に考えている人は世の中に五万といるわ」
「……でも、だからっていいことではないだろ?」
「いいかどうかはさておいて、世の中には人以外のものを愛し、人以外を心底大切にし、人以外を生涯かけて守ったり高めたりする人がいる。人を人と思わないことは、必ずしもそれ即ちその人のことを蔑んだり侮辱しているってことではないわ」
クッキーを食べる乾いた音が響いて、
「ただそれが、少しだけ虚しいことだって気付くまでは、別に続けてたっていいのよ。
「……そうするよ」
「クッキーいらないの?」
「やめとく。でも、残しておいてくれよ」
「当然でしょ。ご飯前だし、これ一枚にしておくわよ」
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