第23話 水族館
「わぁぁぁっ、お魚、可愛いね」
「そうだな」
水族館にやって来てみると、想像よりも空いていた。まあ人気だったり評判がよかったりするような水族館ではない。おかげで混雑した中を細々と見る羽目になることはなく、
ふと気になって隣の
と、しばらく眺めていると
「あっ……」
小さく口を開いた直後、頬を赤くして後退り。
急にどうしたんだろうと思っていたけれど、小さな水槽を二人で覗き込んでいたものだから距離が近くなり過ぎていたようだと
「な、な、ぁっ……」
「悪い、ちょっと近すぎたな」
「いぁ、そんなこ、とっ」
あわあわと口を開いたり閉じたりしながら目を回し、
でも、そんなに驚くことか?
「えっと、大丈夫か?」
「ちょ、待ってね。すぅー、はぁー、すぅー、はぁー。……も、もう大丈夫っ」
深呼吸の後にそういった
「流石に混んで来たな」
「そうだね。やっぱりイルカショーだけは人気なんだ」
「だけって言うなよ……」
ゴールデンウィークが翌週に控え、わざわざ普通の休日に水族館に来る人は少ないかと思っていたのだが、イルカショーが始まる時間になると人が増えてきていた。そうは言っても埋まったのは会場の座席の半分ほどになる。
少し下の方を見てみると、かっぱを被った子どもたちが嬉しそうにはしゃいでいた。それを見て
「楽しそうだね」
「前に行くか?」
「う、ううん、着替えも持ってきてないから。でも、私も小さい頃はあんな感じだったのかな、って」
「確かに、俺もあんな感じだったかもな」
イルカショー。もちろんイルカが見せてくれる動きも見ものなのだが、当時は水がかかって来ることが純粋に楽しみだったように思う。イルカが何をしているかなんて、しっかりと見た覚えが無かった。
そういえば、あの頃は素直に全力で楽しめていたのだろうか。今の
「あ、そろそろ始まるみたいだよ」
そういえば
そんなことを聞く気にはなれなかったけれど、ただ、隣でイルカショーの始まりを今か今かと待つ
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