第21話 出席確認

「え? 雛沢ひなざわ君来てくれるの?」

「まあ、一応」


 LHRのあった翌日。言うなら早いに越したことはないだろうと思った心奏かなでは座席表を入念に読み込み、一日中そこに座っているのを確認してから意を決して新嶋心奏かなでと思われる女子に声をかけた。

 反応を見るに、本人だろう。


「ほんとっ? もしかしたら来てくれないんじゃないかって思ってたから、すっごく嬉しい!」

「それならよかった」


 来てくれないんじゃないかって思っていたというよりは、どうせ来ないだろと思っていたんじゃないかと心奏かなでは思う。昨日心羽みうにも言ったのだが、早速歓迎されていない空気を感じた心奏かなでだった。


「それじゃあ詳しい日程とか色々決まったら教えるね。楽しみ」

「分かった、頼む」


 あーいや、少しぶっきら棒すぎるか。


「……お願い。俺も楽しみにしてるよ」


 ……言ってみると案外恥ずかしいもんだな。顔を隠すように踵を返すと、後ろから少しだけ明るくなった声で返事が聞こえた。


「うん!」


 

「楽しみにしてる、か」


 本当はもう少し経ってから誘うつもりだった。色々なことが決まってからの方が誘いやすいかなと思ったけど、まさか決まった次の日には行くと言ってくれるとは。嬉しい誤算とはまさにこの事だろう。


 制服のボタンを中途半端に外した心音ここねはベッドの上へと飛び込んだ。


「やっぱり、休日はアウトドア系とか?」


 雛沢ひなざわ君に対して初めて抱いた印象はよくいるインドア派のオタク、って感じだった。けど、最近雛沢君を見ているとそう言うわけでもないのかも、と思うようになってきた。

 二週連続で外で顔を見たし、熱心なオタクっぽい空気も感じない。教室で静かに本を読んでいるのも、どちらかと言えばそれしかやることが無いから、のように見えて来た。


 髪の毛を切っていなくて身だしなみを気にしないような人なのかと思って見ればすぐに切っているし、私服のセンスも悪くはない。話してみればどもったりすることも無くきっぱりと物事を言ってくるし、今日に限って言えば少し口調も柔らかかった。

 もしかすると、仲良くなるのに時間がかかるだけなのかもしれない。


「よし、目的だった雛沢君は来てくれるみたいだし、クラスの半分くらいは来ることになるのかな~。流石に雛沢君を一日中見てることは出来ないだろうけど、機会を伺って話し掛けてみないと」


 そのためにも、クラス会の準備はしっかりとしよう。天気予報を確認して、バーベキュー用の道具を持っている人にはそれを持って来られるか確認して、心美ぴゅあちゃん先生に持ってきてもらうものもしっかり伝えないと。

 普段のノリで手を上げたらクラス長になっちゃったけど、案外楽しいものなのかもしれない。


「よしっ、少し頑張ってみようかな」

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