第17話 イベント
「おおぉっ!」
目の前に広がる光景に、
「み、見てみなカナデ! これは最高レアリティの槍、ゲイボルグの実寸大の模型だよ! すっごい精巧に作られてる。えっ、もしかしてこれプラスチックじゃなくて本物の金属なの?」
「確かそれ、
「そうなんだよ! ランダムボスからのレアドロップでまだ出現した試しがないんだ! 最高レアリティのS+武器最強、私も欲しいなぁ……」
「
「そりゃそうでしょ! 刀、双剣、大剣。ダガーを逆手で二本持ち、踊るように槍を振る、クローで本気のインファイト! 近接こそ正義! 近づいてこそ戦いだよ!」
「お、おう……」
どちらかと言えばスペクタクルか萌えファンタジーな世界観にいそうな見た目くせして言っていることはハードな戦場の戦士だった。
「あ、私ばっかり武器見てたらつまらないよね。カナデも防具見る?」
「俺は
「あれ、そうなの? もしかして要らなかった?」
「いや、いらないなんてことはないが……」
ライオブの楽しみの一つとしてあるのは、やはり繊細なグラフィックからなる精巧な武器や防具を集めることだ。武器の外観が好きなマニアにとってはたまらないと話題で、今回のオフイベントもそのほとんどはゲーム内のアイテムを実寸大で表現したフィギアや模型の展示会となっている。
「というか、男女比すごいな」
「うっ……私もまさかライオブがここまで女性人気ないとは思ってなかったよ」
「イベントの内容も悪かったかもな」
周囲を見渡してみると、イベント参加者のほとんどは男だ。たまに女の人がいてもぴったりと男の人にくっついている場合がほとんど。恐らくは恋人で一緒にライオブをプレイしているような関係性なのだろう。
「確かに武器展示だけじゃね。キャラクターのコスプレとかだったら女性人気も多少はあったかもしれない」
「あー、ライオブはキャラデザも凝ってるからな。男女問わず好きなキャラの一人や二人、いそうだよな」
「そうそう。私もニケル・フランシスとかオリアント・ゲイルとか好き」
「おいそれどっちも
「まあまあ、そういうカナデはライオブに好みのキャラクターとかいないの?」
「急だな。あー、まあ、どうだろう。あんまりこれってキャラはいないかもな」
「えー、以外。てっきり美少女キャラとか全般好きなのかと」
「人を面食いみたいに言うな」
ショーウィンドーの中身を眺めながら視線も向けずに言ってくる心はる《こはる》に突っ込みつつ、
そういえば、ライオブは続けていた理由は何だったか。アニメや漫画はストーリーはもちろん、応援したいキャラクターがいるから楽しみ続けることが出来ている。ライオブ以外のゲームも好きなキャラクターだったり要素があるはずだ。
対してライオブはどうかと言われると、あまりピンとくる理由が無かった。特段、ゲームに思い入れは無いのかもしれない。
正直このオフイベも、イベントの内容自体に興味があったわけではなかったように思う。
『私が人間の女だって、証明してあげる!』
ヘッドセット越しのその声に誘われただけなのだ。
「俺がライオブやってるのは、
何気なく呟いた
「
「……」
「どうかしたのか?」
どういうわけか話しかけても
「駄目」
「え?」
「今は、駄目。ちょっと顔見ないで」
「どういうことだ? まあ、いいけど」
そんな、
(なんで急に、そんなこと言うの!? やっぱりたらしだ! カナデは女たらしだ!)
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