第16話 張り込み?
「まったく……気軽に可愛いとか言うもんじゃない。驚くじゃないか」
「悪かったって。でも
「馬鹿。プレイヤーネームは恥ずかしいし、ちょっと、その名前は駄目」
「カナデは知っての通り私はプロでゲーマーやってるし、その名前もスプリングなんだよ。ゲームイベントなんだから、知られてないとも言わない。中には私の顔知ってる人もいるんだ、面倒事になって欲しくない」
「ああ、そういう。まあ気を付ける。で、
「……メディアに出るときは普段からポーカーフェイス意識してるけど、今日はその予定が無かっただけ。カナデとゲームしてる時も、特に意識してなかったし。普段ポーカーだからその反動が来ただけ」
少し頬を赤らめて
「そうか。結構意外かも」
「そういうカナデは想像通り……というか、想像より良かったかもしれない」
「まあ、わざわざ人に頼んで拘って貰ったしな。多少は」
未だに慣れない短髪の毛先をねじりながら他人事のように
「え、俺なんかまずいこと言ったか?」
「やっぱり、そういうとこはよくないかもしれない。前から思ってたけど!」
「お、おう……」
「な、なんだよ。言い返さないの?」
「事実だろうしな。実際、俺は格好良くもなんともないし」
「そう言う話じゃないんだけど……まあいいや、そろそろ行こ。時間は多くないからね」
そんな二人の姿を少し離れたところから眺める物が二人。
「えっ、あの二人本当に初対面? もしかして今のインターネット上の関係って私が思っているより親密な物なのかしら」
「って、
「
「あ、またいつものぼそぼそだったか。こうなったら中々治らないのよねぇ」
声が聞こえなくなって黙っているのかと思ったら、たまに出るぼそぼそ声がマスクでさらに聞こえにくくなっていたようだ。こうなった心梛 《ここな》は完全に自分の世界に入り込んでいるので中々戻ってこない。
「あー、入っちゃった。中は駄目だね、人多すぎて見失いそう。一先ず
「頬を染めて恥ずかしそうにして何言われたの私だってあんな……え?
「ああうん、これからどうしようかって。二人とも中に入っちゃったし」
「そうだね。出てくるまでカフェで待とうか」
「了解。最後までしっかり付き合うよ」
サングラスとマスクを取った二人は立ち上がり、イベント会場の反対側にあったカフェへと足を運んだ。
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