第10話 2年2組の教室
「じゃあまたね、
「髪の毛切ったからって調子乗るんじゃないわよ」
「そんなことで調子に乗ったりなんてしない」
そして自身の所属するクラス、2年2組へと入っていく。
「
半ば当然のように教室を見渡した
結局ぱっと見で見つけることはできなかった。
「まあ、後でいいか」
土曜日にアニメを見たようだったし、もしかしたらあちらから話し掛けてくるかもしれない。そう思いながら
先週まで読んでいたページを探して、視線を落とす。
読書をしていると周りのことが気にならなくなる。言い方を変えるのなら本の世界へと入り込むことが出来る。雑音が消え、ざわついた教室の笑い声が聞こえなくなる。自分の席でただ一人、自分だけがこの世界にいるんじゃないか錯覚する。
「――君、ひ――」
ふと、やけに近くから声がする気がした。この教室で
そこには、見覚えのあるボブカットの女子生徒がいた。
「あ、やっと気づいた。雛沢君凄い集中力だね」
「え? えっと、まあ」
誰、だっけ。見覚えがあるのは間違いない。それにこのシチュエーション、つい最近……。
そこまで考えて、目の前の彼女が探していた人物であることに気付いた。
「あ、新嶋さん」
「ん? どうかした?」
「ああいや、なんでもない」
「そう?」
見覚えがあると思ったら当然だ。先週、こんな風に顔を見上げたばかりだった。幾らなんでも一週間前に見た顔を、
そう思いながらも、
何だこの前見た時と雰囲気が違う気がした。前はこう、もっと綺麗だったような気がする。今は汚いのかと言ったらそんなことはないし、失礼だから絶対に言わないが。
「それでね、読書中に御免なんだけど、この前教えて貰ったアニメ、すっごく面白かったからお礼言わせて欲しくて」
「そ、そうか? そんなに面白かったか?」
「うん。私、あんまりアニメは見ない人だったんだけど、すっかりはまっちゃった。また今度、お勧めのアニメ教えてよ」
「……分かった。考えておく」
「やったっ、今から楽しみ。ありがとね、雛沢君」
な、なんだ今の笑顔! すっごい可愛かったぞ! え、なんだあれ。アニメでしか見れない笑顔だろ! しかもありがとうって、お礼まで言われた! いや、もちろん今までにだって誰かにお礼を言われたことくらいはある。けれど、なんだろう。新嶋さんい言われるのと他の誰かに言われるのでは、何かが違う気がする。
一体、何が違うんだろうか。
何かが弾むような感覚が、やがて疑問へと変わって行く。今
嬉しいから、笑うんだよな。違うのだろうか。
そんな疑問が渦巻きながらの午前中、
「まあ、いつもゲームかアニメのことばっかり考えてるしいつものことか」
呟きながら鞄からお弁当を取り出して机の上に並べる。普段通りの何気ない行動。昼休みになったら真っ先にお弁当を取り出して自分の席で食べ、食べ終わったら本を読む。完全無欠一人完結の昼休みの過ごし方の完成形だと、
一度でも立ち上がったなら即座に席をとられ、クラスのカースト上位者どもに居場所を取られることが分かりきっているため余計なことはしないのだ。
「いただき――」
「ねえ、雛沢君。隣、いい?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます