第7話 動くの点の描く軌跡は交わることがある
「へぇ、悪くないじゃない」
「さっぱりするとガラッと印象変わるね」
「でしょ~、たぶん、私に出来る最大の努力よ」
意外と、様になっているのではないだろうか。格好いいまでは行かなくとも、普通くらいには。少なからずダサいと手放しに貶されることが無いくらいには、恥ずかしくないくらいにはなったのではないだろうか。
そんな自惚れを抱くことが許されるくらいにはなれたのではないかと。
「服も心なしか似合って見えるわね。良かったわね
「褒めるならもっとちゃんと褒めろ」
「そうだよ、
格好いい、か。
「世辞でも嬉しいよ。ありがと、
「お世辞じゃないんだけど……うん、どういたしまして」
「それじゃあ、さっさと服選びに戻りましょう。
「分かってる。ただで帰ろうとなんてしない……えっと、幾らですか?」
「ん? カットだけだし、この額かな」
美容師さんが指差した金額表の数字を見て
「あら、予想が外れたわね。てっきり高いだ何だと言うかと思ってたわ」
「言うかよ。値段に見合っていると思ったからな」
「お、嬉しいこと言ってくれるね。また来ておくれよ」
「
「ええ、そうしてね。それじゃあ、またね!」
そんな風に見送られて美容院を後にした
「お腹空いたわね」
「いやまあ、そうだとは思うんだけどな」
「なに、何か文句あるの?」
「文句って言うか……ああもういいや」
「ん? 何なのよ。とにかく、フードコートに行きましょう」
先程美容院への人の入りが無かったのにはちゃんとした理由があったのだと
「で、何食べるんだ」
「皆勝手に選べばいいでしょう? そのためのフードコートじゃない」
「それじゃあ、私はおうどんにしようかな」
四人用の席を取るために
「置いて行かれてしまった……まあ、いいか。どうせ順番は回って来る」
なんて呟きながらスマホを開く。何か面白い情報はないだろうか。SNSを数分巡るうちに、あー、スプリングに待ち合わせの場所と時間でも確認するかと思い至る。特段焦る事ではなく、どうせ今晩も一緒にゲームをするのだからその時でいいのだけれど、思いついたことをその場でやり終えなければ気が済まない自分の質を
少しだけ、面倒くさいと自覚している。
「えっと、どこだっけ」
チャットアプリをスマホで使うのは慣れていない。どこにあっただろうか。
「ああ、あった。って、ん?」
アイコンの上に5の文字を見つけた。
「通知?」
どうせスプリングからだろうなと思いつつ、あいつがどんな用だろうと首を傾げながらにアイコンを触ると、少し見慣れない光景が見えた。
「
そういえば連絡先を交換して、アニメをおススメしたっけか。返信、見ていなかったな。そんなことを考えながらなんと返信があったのか読もうとしていると、すぐ隣から声が聞こえた。
「えっ?」
その子としばらく目が合った。ボブカットで、綺麗な顔立ちをしているように見える。肌白で、唇の淡いピンクが映えていた。
「
「あ、うん、待って!」
どうやら連れがいたらしい。呼ばれて、慌てた様子で駆けて行った。彼女の名前のような物を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、一瞬のことで聞き逃してしまった。結局、誰だったのだろうか。それともただの勘違いだったか。
「ま、いいか。えっと……」
そんなことは置いておいてスマホの画面に視線を戻す。そこにはありがとうの文字とスタンプ、その後に二日くらいの間をおいて今朝方に送られたこの作品面白かったよと画像の添付とスタンプが並んでいた。
そういえばあれ以来話をしていなかったか。面白いと思ってくれたのなら何よりだ。
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