第4話 点はグラフ上を不規則に動き続ける
「へぇ、こういうことだったのね。確かにやってみれば簡単だわ」
「そうだね。でもやっぱり
ダイニングテーブルの上で勉強道具を開いてから三十分も立たないうちに、
「元々二人とも勉強苦手じゃないだろ。そっちの覚えが速いんだよ」
「なんだ、分かってるじゃない」
「こら、
「えー? 別にこんなのいつものことよ?」
「いつものことでも、だよ」
人差し指を立て、
「いつものことだからって感謝を忘れちゃ駄目。それが他の誰かにとっては普通じゃなかったり、相手にとっては普通じゃなかったり、いつか普通じゃなくなったりすること、
優しい声音ながらもぴしゃりと言われて、
「それもそうね。……一応感謝しておくわ、
どこか気恥しそうに、それでも目を逸らさずに
「ん」
「ちょ、もっと何かないわけ?」
「何かって?」
「どういたしましてとか、そういうの」
「ああ、そうだな。どういたしまして」
「……ああもう、私が馬鹿みたいじゃない」
そう言って頭を振った
「まあ、とにかく分からないところはもうないから部屋に戻っていいわよ」
「そうする……っと、待った。二人に聞きたいことがあるんだった」
「なに、珍しいじゃない」
「私で力になれることなら、なんでも聞いて」
「まあ、たぶん二人なら分かると思うんだけど」
きっとしばらく悩んでいたのだろう。口に出そうとしてやはり理解できなかった
「女子と一緒に出掛ける時って、何着ればいいんだ?」
その問いに、場は騒然とした。
「……え、どうしたんだ?」
「あ、あああああんた!」
詰め寄った
「彼女出来たの!?」
「嘘……
「ねえ! いつから!? どんな子!? 住所は!? 今からカチコミに行ってくるわ!」
「二人とも落ち着けよ……というか
「彼女じゃない。
「はぁっ!? 何なのそいつ! デート!? なに、彼女でもないのにデートのお誘い!?」
「デート……私だって一緒にお出掛けなんてもう何年もしてないのに、デート……しかもインターネットのお友達……」
「ああ
そして事の顛末を事細かに
「なるほどね、被告人の言い分は分かったわ」
「で、顔合わせもしたこと無いのに合いたいなんてほざく不埒物はどんな人なの?」
「なあ
「何もないよ? うふふ」
「別に、おかしなやつじゃないよ。ちょっと変わったとこはあるけど、普通の人。……たぶん」
「そこはちゃんと庇ってあげなさいよ……一年以上の付き合いなんでしょ?」
「いや、悪い奴じゃないのは確かだ。確かなんだが……」
普段のスプリングの様子を思い出し、
「変人なのも、確かなんだよなぁ」
「そんな人と会うのは止めなさいよ……」
「ごもっともだ」
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