褒めて伸ばす幽霊

天川裕司

褒めて伸ばす幽霊

タイトル:褒めて伸ばす幽霊


ある日、学校から帰ってくると

部屋のリビングに知らない男の人がいた。


「ん、誰だろ?」

きっとお父さんかお母さんの友達か、

あるいは近所の誰か?

またはどっかのお店から来た人?

保険か何かの人かな?

と思っていたら、

今日はお父さんもお母さんも出かけていなかった。

そもそもお父さんは仕事だ。


「ん、誰なんだろ?」

本気でそう思い始め、僕はその人をじっと見ていた。

その人はいきなりお茶をすすり始め、

ほんとに自分の家かのようにくつろぎ始めている。


テレビをつけて笑い出し、当たり前のように

冷蔵庫からビールとかツマミとか持ってきて、

それを楽しみながら、テレビを見てまた笑ってる。


かと思いきや、いきなり服を脱ぎ出し、

「え?ちょ…」とか思っていると、風呂に入っていった。

浴槽に湯船は張らず、どうやらシャワー派らしい。

また出てきてリビングにずっと居る。


「泥棒か?」とも思ったが、

何の目的も無くこんなにのんびりしてるわけがない。

そこでハッと思いつく。

「もしかしてアレか?ぬらりひょんか何かの類か?」

僕はこう見えて『ゲゲゲの鬼太郎』を精読しており、

『ぬらりひょんの孫』も何度か見ていた。


こいつの特徴は、

まさにそれに当てはまるように見えた。


僕はリビングに入り、彼の横にチョコンと座った。

さすがに存在感のない人だ。

横にいてもその人の気配を感じない。

でも彼は僕の気配を感じたらしく、

横に座った僕をじーっと見てくる。

そこから少し会話が始まった。

そこで僕は、前々から思っていた事を彼に告げた。


「あの、ぬらりひょんさんでしょ?当たってるよね?」

何も言わないところを見るとそうなのかもしれない。

そうだと決めて、

「ぬらりひょんさんって妖怪の総大将とか言われてるみたいだけど、別にこれと言って何の特技とかもないですよね?能力とかってあんまり無いですよね?」


そう言うとそれが気に障ったらしく、

いろんな特技を見せ始めてきた。

・いろんな料理を作って僕に差し出す。

・トイレや廊下の掃除をして金ピカにしてみせた。

・その年齢にしてはちょっとだけ高いジャンプをして見せてくれた。

・早口言葉を少し喋ってくれた。

・僕がいつもしてたゲームを途中までスムーズにやって見せた。でもクリアはできなかったけど。

・アイスの早食いをして見せた。

・自分が知ってる昔の話を沢山してくれた。


「………でもそういうのって、誰でもちょっと努力すればできるのでは?」


そう言うと又それが気に障ったらしく、

今度はちょっとマニアックな事をして見せてくる。


・耳だけを異様に動かしてそれを見せつける。

・五指すべての第一関節だけを曲げて見せてくる。

・さっきより2センチ高いジャンプをして見せてくれた。


「おぉ〜これはちょっとすごいですね」

と少し調子を合わせて言ってあげると、

ぬらりひょん?「こんなの序の口に過ぎないんだけど」

と初めて喋ってくれた言葉はそれだった。


どうやらプライドだけは本当にすごく高いらしい。

でもこんなにいろいろしてくれるとは思わなかった。

その人は僕だけに見える様子。

そのうちお父さんとお母さんが帰ってきたけど、

その人はまだ部屋にいて、僕だけに向けていろいろして見せてくる。

お父さんもお母さんも彼の姿は見えないようだ。

あるいは存在感がなさ過ぎてそうなるのだろうか。


でも1つ分かった事は、

妖怪も褒めて伸ばせばいろいろするようになる?

と言う事。


それから彼はずっと僕の部屋に居候している。

それから毎日、彼の事を1つずつ褒めてあげると、

彼は1日ずつ、いろんな事をして見せてくれるようになった。

初めに見た時に比べ、彼の特技は破格に増えている。

ちょっと不安だったのは、悪い方向へ突っ走らない事。

だから良い事だけを教えてやろうと思った。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=ErPwq16LN1E

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

褒めて伸ばす幽霊 天川裕司 @tenkawayuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ