第14話 生存ゲーム。
とうとう大会が始まった。
王国御三家の主力の面々が集結し、重々しい雰囲気を醸し出している。当然、経験の浅い僕はそれに押し潰されそうだった。
日本であらゆる大会に参加した経験はあっても、ここまでの気迫はあり得ない。緊張感も次元が違う。
気を引き締めなければ、続かないだろう。
「でも、アルセイダー家の出場者は僕とタルラ姉さんだけか……まぁサクナ姉さんは、去年相手をフルボッコにしたらしいし、出る必要はないか」
僕は出場者を確認しながら呟く。
一応サクナ姉さんも出たがってはいたのだが、御三家の話し合いの果てに、今回は出場が見送られたらしい。
どうやら去年ボコされた人達が恐怖しているようで、姉さんの出場が大きな障害になっているのだとか。
その人たちも可哀想だが、姉さんも気の毒だな。
あ、出場者と言えば。さっき仲良くなったセノアはどこにいるのだろうか。
控え室にいたと言うことは出場選手に違いないのだろうけど、僕らが集められたこのフィールドのどこにも姿は見えない。
トイレにでも行っているのだろうか。
「ま、いずれ会えるか」
僕は一旦気にしないことにした。
慌てて探さなくても、どこか出会える気がしているから。そんな確証なき予感を信じ、僕は今すべき事に目を向ける。
「王国御三家の皆様、大変お待たせ致しました!!とうとう開催目前に迫りました本大会。司会を務めますは、王国酒場ヴェディアの泉の看板娘──シディアで御座います!!」
大会の開催時刻が近くなったからか、開会式らしきものが開かれる。司会には王国で有名な酒場の女の子を招いている。
ただ、ここに集まるのは荒くれ者……とかじゃなくて、王国の有名貴族。一般人からすれば豪華ゲストだとしても、ここでは大した声援は上がらなかった。
まぁ、女たらしも多少いるらしく、仲間内で「良いところ見せるぞ」とか、「あの子今度堕とそうかな」とか話しているやつはいる。
僕はそんな彼らを横目にその場に突っ立っていた。え?僕は彼らとは違うのかって?ち、違うに決まっているだろう。
だって……僕がそんな事を言ったら、あの人が……来るだろう?
別に魔法界のエグい人じゃない。この異世界の、エグい人だ。ブラコンの。
多分今も、僕の近くにいる。……え、普通に考えて、ヴォル◯モートより怖くね?
「ではでは皆様!!定刻になりましたので、予定通り、王国御三家大会を開催致します!!つきまして、第一種目を開始します」
会場からおー!!という声が上がる。
なんで看板娘登場の時より声出るんすかねぇ。
「第一種目は生存ゲームです!」
「はて、生存ゲームとは?」
生存ゲーム。カナハ姉さんが言っていた、競技種目の中には無かった。では、順当に考えて今年からの新種目なのだろう。
対策の意味がなくなってしまったが、まぁ恥をかかない程度に頑張るとしよう。
「では、生存ゲームの説明をします。ルールは簡単、このフィールド内で乱戦をし、生き残った八名が次の種目に進出できます」
結構、雑い……全種目で一番雑じゃないか?
でも逆に、ルールが簡素な方が僕も勝つ術を考えられるか。やるだけやってみよう。
「では皆様、適当な距離をお取りください。十秒後に第一種目を始めます!」
「だから雑だって!!」
司会の宣言に応じ、全員が一瞬で距離を取る。何なんだこの反応速度は!!僕だけ出遅れてしまっている。
配置についたかと言えば、全員が最初に誰を狙うかの目星をつけ始めている。早い、何もかもが早い。
誰もが自分の武器を引き抜き、何人かは【魔力障壁】などで身を守る。
僕は一旦準備体操。やっぱり、日本人って何でか自然と準備体操しちゃうよね。まぁ、怪我したくないし。
さて、そろそろか。
「では!開始です!!」
大会の開始が宣言された。
同時に全員が、僕の方へ駆け出した。
「ま、倒しやすいのは僕だよねぇ」
何となく分かっていたので、即座に【魔力障壁】で身を守り、拳に魔力を纏わせた。
最近は剣術や遠距離チクチク戦法を使っていたし、今回は新しいインファイター戦法で勝ち抜いていこうかな。
「クルフ・アルセイダー、覚悟ォ!!!!」
さぁ、典型的なやられ役が参戦だ!!
「取り敢えず、最初は打撃だよね!!」
やられ役としているウィルムンド家の一人を、打撃の構えで迎え撃つ。これで通用するかは分からないけど、試してみる価値はある。
「さぁ、一人目!!」
彼は勝ちを確信したように僕へ剣を振り下ろす。それを上手く回避すると、僕は魔力の纏った拳を振り上げる。
「あぁ……っ!!!!」
僕の拳は彼の腹部を直撃し、強烈な一撃を見舞った。
「なかなかいけそうだな」
試したい技は幾らでもある。
さぁ、次はどうしようか!!
『あ、あぁ!!聞こえるぅ!?』
僕の気の高まりを押さえつけるように、フィールド内に一人の声が轟いた。
全員がその声を聞き攻撃の手を止め、不審そうに声の主を探し始めた。
「おい、あいつだ!!」
一人の選手が声の主を見つけた。
『えー。今から君たちにはぁ、少し協力、してもらうよぉ?』
聞き覚えのある喋り方だった。
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