第1話 入学式と1人目 (※残虐的な描写あり)

 俺が加賀剣人に転生してから数日が経った。ここ数日は何をしてたかって? そりゃ赤星学園に入学する前に色々と確認したいことがあったし、この体に慣れるためにも色々な場所に出掛けた。


 わかったことといえばこの世界がほぼあのエロゲーの世界で間違いないということぐらいだ。

 そんな事を考えていると部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。


「兄貴入るよ」


 そう言って入ってきたのは加賀剣人の妹であり、俺の妹でもある加賀璃乃かがりのだ。加賀璃乃は中学2年生で絶賛反抗期らしく、前までおにいと呼んでくれていたのに兄貴と呼び方を変えている。


「珍しいな璃乃が俺の部屋に来るなんて。最近では滅多に来てくれなくなってお兄ちゃん寂しかったよ」


「な…何言ってんの! き…きもいんだけど! 」


 そう言う璃乃は顔を赤くしている。とても可愛い。こんな可愛い妹を持ってるなんて加賀剣人許さんぞ。まぁ、今は俺がその加賀剣人なんだけどな。


「おにいじゃなかった…兄貴は明日から学校が始まるんでしょ? 」


「そうだけど。それがなんか関係あるのか? 」


「別にないけど…どうせ兄貴には友達ができないだろうから寂しくなったら私が相手してあげてもいいよって思って……」


「璃乃はそんなことを言うために俺の部屋にきてくれたのか? 本当に可愛いな」


「か、可愛い! うへへ…じゃなかった。妹に発情するとかきもい! 」


 目の前にいるのは天使だろうか? いや天使に決まっている。こんなに可愛いのに天使じゃないわけがない。転生する前の俺は一人っ子だったので兄妹であるということがとても新鮮に思えてしょうがない。

 しかも、こんなに可愛い妹が出来たんだこれだけで転生したことがうれしく思える。


 加賀剣人の元の人格には悪いけど、存分に楽しませてもらうよ。




 ◇




 そうして俺は赤星学園の入学式当日を迎えた。

 起きてから朝食を終え、制服に着替えるのだが、この制服には見覚えがある。あのエロゲーの赤星学園でも主人公達が着ていた男子用の制服だ。


 この制服を着られて嬉しいような嬉しくないような気持ちもあるけれど、ここまで来たからには頑張らなくてはならない。


 さてと、準備もできたことだし向かうとしましょうか――夢の赤星学園に。




 ◇




 俺は赤星学園に着いたのだが、感動のあまり絶句してしまった。ゲーム内ではほとんどの生徒の顔が見れないし、人数もどれくらいかわからなかった。けど、ここはゲームではない現実なのだ。1人1人に顔がしっかりとあり、声もある。好きなように喋っていて、これぞ学校という感じがする。


 またしても、転生できてよかったと思ってしまった。前世では高校生活なんて適当にやってたからな。そしてこの高校生活を楽しむぞという目標がどんどん大きくなっていく。


 この赤星学園ではクラスメイトとの顔合わせをするということで、入学式の前に教室に行くことになっている。


 俺のクラスは3組。何かの因果が働いたのか、ほとんどのヒロイン達と同じクラスである。俺としては都合がいいのだが、あんなに可愛いヒロイン達を直視できる気がしない。だって…なぁ前世では女性というものにとてつもなく縁がなかったんだもん。美少女は目に毒だよ。


 そうして教室に入った瞬間俺は目を引かれることになった。なぜならあのエロゲーで主人公が最初に出会うことになるヒロイン――相田春菜あいだはるなが目の前にいたからだ。


「す、すみません! 」


 そう謝る彼女の声を聞いて俺は正気に戻った。


「いや…俺の不注意だったから謝るのは俺の方だよ」 


「それじゃあ…おあいこということで私は相田春菜。あなたは? 」


「俺は加賀剣人だ」


「ふふふ、加賀くんね。覚えたよ。よろしくね」


「ああ、こちらこそよろしくな」


 そう言うと彼女は自分の席へと戻っていった。いや…めっちゃ緊張したんだが? というか前世でも女性と関わりがなかった俺からするとあんなん反則としか言いようがない。画面で見るよりも顔面強すぎ。それでいて、十分あるといえる胸。

 さすがプレイヤーが最初に攻略するヒロインなだけはあるな。


 まぁ、そのせいであのエロゲーをやめる人が続出したんだけどな。となると語らないといけないな。――彼女の不幸を。


 相田春菜あいだはるなについて

 

 肩まで伸びた髪に、絶世の美少女と言うに相応しいルックス。そして艶めかしい唇。胸は大きすぎず小さすぎずといったところで、男を満足させるには適していると言えるだろう。

 彼女は『ひとかけらの幸せ〜A piece of happiness〜』において主人公が最初に出会うヒロインであり、物語序盤では何の変哲もないただの絶世の美少女である。

 そんな彼女の最初の不幸は赤星学園に入学して1ヶ月経ったぐらいに事故で両親を亡くし、精神が壊れることだ。それもそうだ。今まで当たり前にいた人達が突然いなくなれば誰でも精神がおかしくなるだろう。俺だって転生してからまだ数日しか経ってないけど、もう今の家族は失いたくないと思っている。

 まぁ、それに関しては主人公と関わっていくことて徐々に治っていくことになる。そしてそれをきっかけに彼女と主人公は付き合うことになり、ヤるべきこともヤッてしまう。

 ここが彼女の最後の幸せと言っていいだろう。彼女の不幸はここから加速する。

 彼女は両親を亡くしたことで叔父の家にお邪魔することになった。その叔父も最初は優しく、いい人だと思っていたのだが、彼女が主人公と付き合っているとわかると何を思ったのか彼女を監禁してしまう。叔父曰く「俺が最初にあいつに目をつけたんだ。それを別の男に取られるなんて許せない」ということらしい。うーん…本当にクソだ。

 そこから彼女は無理矢理叔父の性処理の道具にされたり、叔父の仕事場の上司へのはけ口として暴力を振るわれることになる。

 主人公は学校に来ない彼女のことを不審に思うが、どうすることも出来ない。なぜなら家の場所すら知らないからだ。これから仲良くやっていこうと思った矢先彼女が来なくなってしまうので本当に何も出来ない。そこでサブヒロインと出会うことになるのだが、それはまた別の機会に語ろう。

 主人公が何も出来ないまま数ヶ月が経った頃、叔父は彼女が妊娠しているとわかった。クズな叔父が子供を産ませるなんて考えるわけが無い。

 そうして叔父は彼女の膨れ上がった腹を何回も何回も殴り続けた。その結果日頃の暴力などで弱っていた彼女はお腹の中にいた子供と共に亡くなってしまう。そんな彼女が最後に言った一言「助けてもらいたかった…」がとてもの心に刺さる。


 これが彼女の不幸なのだが、今考えてもクソだと言える。これを考えたシナリオライターに人の心は絶対にない。イラストレータもイラストレーターだ。最後の彼女か死ぬシーンをとても鮮明に描いている。俺はそれで吐いてしまった。


 それに主人公も主人公だろ。血反吐を吐いてでも彼女を探すべきなのにそれをせず、なんなら別の女と出会いその女のルートに進むことも出来てしまうのだ。本当に救いようがない。


 そしてこの世界があのエロゲーの世界であるなら、この結末を迎えるのは必然と言えるだろう。しかし、ここには俺というイレギュラーがいる。シナリオも全て知っており、これ程彼女を幸せにするのに適した人材は居ないだろう。


 だったらなんとしてでも彼女を幸せにしてやるよ。誰だか知らないけどこの世界に俺を送ってくれたヤツ見とけよ。なんたって俺は彼女だけでなく全ヒロインを幸せにするんだからな。


 そうして、俺の『ひとかけらの幸せ〜A piece of happiness〜』というエロゲーの全ヒロインを幸せにする物語が始まった。






 ―――あとがき―――

 どうもにんじんさんです。

 とてつもなく久しぶりですね。本日からまた不定期ではありますが、投稿していこうと思います。長く待たせてしまってすみません

 とりあえずこんな感じで悲惨なヒロイン達が多く登場します。これが軽めなのか重めなのかは私にも分かりません。私自身は中の上くらいなのかなって思ってます。

 シナリオライターに人の心がないと言っていますけど、真に人の心がないのはこんな設定を思いついてしまう私でしょうね。

 今後も頑張りますのでもし面白いと感じたらフォローや☆、感想を書いてくれるとモチベに繋がります。

 至らぬ点などがありましたら、その報告もしてくれるとありがたいです








 







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