第7話 ギャルと見送り
(外。雨の中、同じ傘に入って歩く)
「いや、ごめんねー。駅まで送ってくれるなんて、マジで感謝だよー」
「しかも相合い傘ってヤツ? やば、ガチの恋人みたいなんだけど」
「キミもよく考えるね~。そんなにあたしとくっついて歩きたかった?」
「え? 一人暮らしの家には一本しか傘がないから仕方なくって? 相変わらず素直じゃないんだから~。そういうとこだぞ」
「でも今日はありがと。キミの話、いーっぱい聞けちゃった」
「正直さー、今日までキミのことよくわかってなかったからね」
「ただの真面目な、かたーい人だとばかり思ってた」
「まー。そういうトコもあるんだけどねー、でも、それだけじゃなかった」
「いきなりおしかけた女の子が相手でもちゃんと相手してくれてさ」
「あたしのめんどくさい話聞いても、嫌な顔しなかったよね?」
「あれ、マジで嬉しかったんだから」
「キミみたいな男子って、他に知らないからさぁ」
「てか、もっと寄らん? そんな離れてちゃ肩濡れちゃうっしょ?」
「それとも、これ以上近づくの恥ずかしい?」
「あたしと寝ても、そういうところは変わらないかー」
「あはは、ごめんごめん、言い方ぁ、だったね」
「もしかして、くっついてくれないのは、まだノーブラだと思ってるから? 安心してよー、ちゃんと着替えるところ見せたでしょ? 背中だけだけどさ」
「ああ、キミも背中向けちゃったんだっけ? じゃ、何も見てないかー」
「ふふふ、そういうところが可愛いんだから」
「じゃあさ、雨で体が冷えてきちゃったあたしを助けるために、もっとこっち寄ってくれない?」
「こう言ったら来てくれるんだよね。キミの扱い方、だいぶわかってきちゃったかも」
「あ、駅見えてきた」
(駅前に到着。人の流れで、周囲が騒がしくなる)
「やっぱこの時間は混むよねー」
「傘? えっ、借りていいの?」
「でも、キミはどうすんの? 一本しかないんじゃ、濡れて帰るしかなくなるよ?」
「……ふーん、そ。キミって、たまにあたしをその気にさせること言ってくれるよね」※照れくさそうに
「いつもそういうの、やってくれればいいのに……」※小声
「なーんでもないよ!」
「じゃ、またキミの家に行かなきゃだよね。借りたものは、ちゃんと元の場所に戻さなきゃだもん」
「明日また学校でね!」
「……あー、ごめんもう一個忘れ物あったわ~」
「ちゅっ」※頬にキス。リップ音。
「んふふ、びっくりした?」
(跳ねるような足音が離れていく)
「今日は楽しかったからー、これくらいはタダで追加サービスしちゃうよ~」
「じゃーね! 明日、ぜーったい風邪なんか引かないで学校来るんだよ?」
(去っていく足音。駅構内の喧騒の音が少しずつ薄れていってフェードアウト)
甘やかしギャルは真面目で頑張りすぎちゃうあなたを癒やしたい 佐波彗 @sanamisui
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