第6話 甘やかしギャルは雨が苦手

(ベッドから跳ね起きる音)



「……うわ、やっぱ意識飛んでた」


「よかった。まだ20分しか経ってない」


「雨、止んできたかな?」


「って、キミ、ガッツリ寝てんじゃん~。ほら、起きる起きる。今寝ると、夜寝れなくなるよ?」


「んもう、よだれ出てる。なんか拭くものない?」


「ちょうどベッドの近くにティッシュあんじゃん」



(ベッドの軋む音)



「ほらほら、よだれ拭いてあげるから、一旦起き上がって? そーそ、ガチ寝モードに入ってるっぽいから起きるのダルいだろうけど、頑張って~」


「はーい、よくできたね~」


「よだれなんて。学校では真面目なくせに、家では結構だらしなくね?」


「でも、そーやって気が抜けてるところ見せてくれるの、あたしとしては嬉しいよ?」


「せっかくだし、キミのこともう少し教えてほしいな。弱点探るため? あはは! そ~いう発想が出てくるところ、マジウケるんですけど!」


「だって、もう一緒にベッドで寝た仲じゃん? お互い無防備で、丸裸なところ見せ合ったようなもんなんだから、今更警戒する必要なくない?」※囁き声


「じゃあね、あたしから先に教えてあげる」



(少しトーンを落として話す:開始)



「実はね、雨の日ってちょっと苦手なんだよね」


「湿気強いしさー、髪はクセついちゃうわでー、もう最悪~。こういう日にお出かけの予定があったら、マジでテンションだだ下がりっすわ」


「まー、それもあるんだけど……さ」


「ごめん、ちょっとシリアスな感じになっちゃうけど、いい?」


「あたしの家、実はママしかいなくてさぁ」


「小学生の時かなぁ。ちょうど、雨の日に両親から別れるって話聞かされたんだよね」


「それからだよ。雨の日になると、なんか嫌なことがあるんじゃないかって身構えるようになっちゃったの」


「あたしはパパのことも好きだったし、だから今でも会うんだけど、あたしはパパとママにも仲良くして欲しかったから、やっぱ寂しいんだよね」


「だから、雨が降った日は絶対に友達と一緒にいるようにしてたわけ。パーッと盛り上がって忘れちゃえば、寂しさだって消えるかもって思って」


「ま、でも1日中友達と一緒ってわけにもいかないからさ、みんなと別れたら余計に寂しくなっちゃうんだよね」



(少しトーンを落として話す:終了)



「っていう、それだけの話!」※気持ちを誤魔化すような明るい声


「あーあ、やっぱ良くないね、雨の日は。テンション下がって変なこと言っちゃう。ごめんね、バッド入っちゃうようなこと聞かせちゃって」


「……うん、ありがとー。そう言ってくれると助かるかも」


「やっぱキミ、優しいじゃん」


「次はキミの番」


「ふふふ、キミが話してくれるまで、あたしはここを出ていかないからね?」


「それとも、お泊りして欲しいの?」


「冗談だって~。あはは、耳まで真っ赤じゃん。さっきまでお互いの心臓の音わかっちゃうくらい近くにいたのに、もう忘れちゃったの?」


「でも、キミの話を聞きたいのはガチだから」


「どれだけちっちゃいことでもいいから、もっとキミのこと教えてくれると嬉しいな」

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