第5話 雨の音と心音 添い寝編

(大雨。雨粒が窓を叩く音)



「いや~、あのまま帰る感じのノリだったじゃん? まさかこんなことになるとは思ってなかったよね」


「でもさぁ、雨宿りさせてくれて、ありがと」


「いや、嬉しいに決まってんじゃん! 通り雨だろうし止むまで家にいろよなんて、あたしが来た時にはぜーったいキミが言いそうにない言葉だったからさ」



(ベッドに乗り上げて、軋む音)



「だからね、やさしーキミには、追加で特別サービスしてあげちゃう」


「雨宿りのお礼だからぁ、キミは何も気にしなくていいんだよ?」


「ほら、ごろーんってして。今度はあたしの膝じゃなくて、このベッドに寝っ転がってね」


「せーの、ごろ~ん」


「よくできましたー。それじゃ、あたしも、ごろ~ん。あーんど、こうだ!」



(正面から頭に抱きついて心音を聞かせる怜奈。声は囁き)



「……どう? 聞こえる? とくんとくん言ってるのがわかるでしょ?」


「こら~、逃げないの。せっかくあたしの心臓の音を聞かせて、究極のリラックスタイムを味わってもらおうとしてるんだから」


「は? おっぱいに顔が当たってる? あー、マジか。でもしょうがなくない? 胸の音だよ? 音聞かせようとしたら、どうしたってそうなるっしょ?」


「そりゃあたしだって恥ずかしーけどさ、これもお礼だからね。ほーら、逃げないの。こっちおいで~」


「そーそ。どうせ逃げたって追いかけちゃうんだから。素直に従うのが一番だよ?」


「どう? 落ち着くでしょ? 鼓動が落ち着くのはね、まだママのお腹に入ってた時のことを思い出すからなんだって。面白くない?」


「だから、今だけは、あたしはキミのママなんだわ」


「あれ? てかヤバくない? これだとブラが邪魔して心臓の音あんまし聞こえないじゃん」


「あたしはもっとクリアな音をキミに聞かせたいんだよね」



(ベッドが軋む音。一旦、体を離す)



「てことで、ちょっと向こう向いててくんない? え? いやぁ、ブラ外すからに決まってんじゃん?」


「そこまでしなくていいってなによ。ここまで来たら、徹底的にあたしのサービスを受けてってば」


「ほーら、キミが背中向けてくれないと、あたしの恥ずかしいとこ、全部キミに見せちゃうことになるよ?」


「ま、あたしはそれでもいーんだけどね。おー、背中向けた。じゃ、ボタン外して、っと」



(衣擦れの音)



「ごめーん、そこのスクバ取って~。ありがとー」


「いくらあたしでも、ブラまで公開する気ないからね。ここにしまっちゃいま~す」


「見たい?」


「ふふふ、ダメだよー。そこまでサービスする気はないからね」


「で、でも、キミの今後の態度次第ではぁ、どんな格好のあたしでも見せる気になれちゃうかも……」※照れ声


「なんて! ほらほら、またベッドにごろーんってして~。本当の鼓動の音っていうのを聞かせてあげちゃいますよ」



(衣擦れの音とともに、頭を抱きしめる)

(語りかけるような囁き声:開始)



「ん~? なにじたばたしてんの?」


「あはは、流石に生乳じゃねーし。シャツの下はちゃんとエアリズム的なの着てるから安心して?」


「あー、ちょっとぎゅってしすぎちゃったかも。苦しくない? だいじょぶそ?」


「うん。じゃあ、しばらくあたしの体から出てくる音、聞いててね?」



(語りかけるような囁き声:停止)



(数十秒くらい鼓動のみ。テンポ早め)



(鼓動をBGMに囁き声:開始)



「え? なんか早い? それはさぁ、着替えでベッドの上動いたからだし! 別に緊張してるわけじゃないから!」※焦り声


「てか、キミだってドキドキしてんじゃん。キミの胸に手を当てたらわかるんだからね? なんか勝ったと思ってー、エラソーにしないように」


「……てか、別に勝ち負けじゃないよね。あはは」


「こんなドキドキしてたら、キミの癒やしになれないかな?」


「……そ、そっか。なってるなら、いいけど。ていうかキミも言うようになったじゃん」


「雨、止むかな?」


「別に止まなくてもいーんだけどね。このままでも」


「……なんでもないってば」



(鼓動をBGMに囁き声:停止)



(鼓動穏やかになりつつ、眠そうな声:開始)



「やば。なんか寝ちゃいそう……」


「え? キミも眠いの?」


「あたしもキミも寝ちゃったら、このままお泊りコースじゃん……」


「……初めては、こういうなんとなくじゃなくてさ……もっと……」


「ブラもかわいくないし……」


「……やば、意識飛びそー」



(鼓動穏やかになりつつ、眠そうな声:停止)



「……」※呼吸音


「……」


「……すー、すー」



(以降、数分間寝息)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る