【連載 vol.3】悪女:金成絵莉朱の学生時代①

 

〈前回の記事は こちら〉


 関わる者を次々と不幸におとしいれる、〈たい〉の悪女〉こと|金《かねなり


 おお じゅんさんをけいむかえ、やがて東京都内の公立中学校に進学した絵莉朱は、〈悪女〉としてのへんりんを示すようになる。

 絵莉朱は入学当初から派手な見た目ではあったものの、しばらくは特に問題を起こすこともなく、静かに生活していたという。


 しかし、三年生に進級したばかりの時に事件は起こった。同じクラスの男子生徒との間で発生した金銭トラブルだ。

 我々は、当時絵莉朱と同じクラスにざいせきしていたという女性に話を聞くことができた。


――当時の絵莉朱は、どのような人物でしたか?

「見た目こそ目立っていましたが、特に印象に残るような子ではありませんでした。仲が良い子もいなかったんじゃないかなあ。いつも一人で、机にうつ伏していた気がします」


――絵莉朱に関して、何か悪いうわさがあったりは?

「噂はありました。さきほども言いましたが、派手な見た目でしたし、当時から整った容姿をしていましたから。『がらの悪い仲間と夜遊びしているらしい』とか、『えんじょ交際しているのを見たって人がいるらしい』とか。どれもしんぴょう性に欠けるものばかりでしたけど」


――〝金銭トラブル〞とは、具体的にどのような?

「クラスの大人しい男の子に、絵莉朱がお金を要求していたのです。顔面そうはくのその子が、ふるえる手で絵莉朱にお金を差し出しているのを、私もこの目で見ました。一万円という、中学生にとっては大きな額だったので、クラス全体がそうぜんとしたのを覚えています」


――つまり、〝カツアゲ〞ということでしょうか?

「まあ、本人達は否定していましたけどね。男の子の方も、多分報復をおそれていたのでしょう。その後、当事者の親を交えた話し合いが行われたみたいですが、どういう形で決着がついたのかまでは知りません」


――事件後の様子は?

「絵莉朱は学校を休むことが多くなりました。大問題になりましたから、さすがに居づらくなったんだと思います。学校の先生達も、絵莉朱がいる時にはピリついていましたね。そういえば、その時のがい者の男の子が、少し前に弁護士になったと聞きました。この事件がきっかけで、目指すようになったとか」


 我々は、事件の被害者である男性の家にも取材に向かったが、男性から話を聞くことはできなかった。

 しかし、対応してくれた男性の母親が「あの事件については思い出したくない」と言っていたことから、今尚事件が被害者家族の心にかげを落としていることが伝わってきた。

 いっぱん的に見れば、金銭的にもめぐまれたかんきょうにあった絵莉朱が、なぜこのような事件を起こしたのか。

 本人がいない今となっては、知るよしもない。

 子どもの頃ころから周囲を巻き込み、多くの人間の心を傷つけてきた〈悪女〉、絵莉朱。

 次回も絵莉朱が学生時代に起こした事件について、引き続き取り上げようと思う。


【連載vol.4】に続く

 

 取材/山田

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