【連載 vol.2】悪女:金成絵莉朱の幼少期


〈前回の記事は こちら〉



 その悪行とたぐまれなるぼうから、インターネット上では〈たいの悪女〉とも呼ばれてい

かねなり

 彼女は、一体どのような幼少期を過ごしたのだろう。


 東京都内で生まれ育った絵莉朱は、三歳のころに父親であるゆうさんをくしている。

 優也さんの死因はでき 。酒にった優也さんが、誤って川に転落したことによる事故死だったそうだ。


 生前、優也さんと親交の深かったという男性はこう語る。

ぼんのうやつだったんですけどね、なんせ酒には弱くって。事故の少し前に『もう酒は飲まない』って言っていたんですよ。それなのに……」

 優也さんの死によって、絵莉朱は母親のあささんと二人で暮らすようになる。一家の大黒柱をとつぜん失った二人は、どのような生活を送っていたのか。

 麻子さんの当時を知る人物はこう語る。

「高校卒業後すぐに家庭に入った麻子さんをやとってくれる場所は、なかなかなかったみたいで。優也さんが亡くなってすぐはしょうすいしきっていました」


 しかし、転機はすぐにおとずれたという。

「優也さんの知人が、二人を手厚く支えてくれたみたいです。だいぎょうに勤めている方だと聞きました。世間知らずなところがある麻子さんは、彼をとてもたよりにしていました」

 この人物こそが、後に絵莉朱のけいとなるおおじゅんさんだ。

 今回我々は、潤さんのもとどうりょうからくわしい話を聞くことができた。


――潤さんは、どのような方ですか?

「太田とは同期入社なのですが、当時から彼は飛びけてゆうしゅうな営業マンでした。頭が切れる上に人当たりも良くて、それでいてさわやかなふうぼう。女性社員からも、かなり人気がありましたよ」


――麻子さんとのけっこんは、いつお知りになったのですか?


にゅうせきの数日前だったと思います。連れ子もいるし、前の旦だん那な さんが亡くなってそれほど時間も経たっていないからという理由で、結婚式はしないと言っていました。そういうはいりょもできる人間なんですよ、彼は」


――結婚後、絵莉朱については何か?

「結婚したばかりの頃は、『わいいけど、なかなかなついてくれない』って言っていました。仕方ないよなって、笑っていましたけどね。その後は……あまり。酒の席で『手がかかる』とこぼしていたのは覚えています。しかし、まさか〈悪女〉と呼ばれるほどに、とんでもないむすめだったとは。太田も苦労したんでしょうね」


――絵莉朱の起こした事件について、どう思われますか?

「まあ……故人を悪く言うのは気が引けますけれど、ちょっとね。あの事件のすぐ後から、太田が入院していると聞いています。責任感の強い彼のことだから、義理とはいえ娘が起こした事件に、責任を感じているのでしょう」


 父親である優也さんの死は、幼い絵莉朱にとってはしょうげき的な出来事だっただろう。

 しかし、その後は潤さんという養育者にも恵めぐまれ、さんな幼少期を送っていたとは思えない。

 そしてその潤さんまでもが、絵莉朱の行いによって心を痛めているという。

 関わる人間をことごとく不幸におとしいれる〈悪女〉、絵莉朱。

 次回は、絵莉朱が学生時代に起こしたという事件について、二回にわたって取り上げていこうと思う。





【連載vol.3】に続く


 取材/山田


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