2-2
燃えるような赤い瞳。リリーベルの手のひらほどもある牙。銀色に波打つ
頰に熱い、魔獣の
(た、助けて……お母様……!)
頭から食べられるかもしれない恐怖に、ぎゅっと目を閉じたリリーベルの耳に、よく通る声が飛び込んでくる。
「おい、何をしている!」
リリーベルは
ひらりと黒いマントを
と同時にゴランの頭の実がくるりと一回転したのは、
「……グルル……?」
魔獣は驚いたように、赤い目をぱちくりさせた。
「下がれ、ローズ。……よしよし、いい子だ。……あちらに行っていろ」
エリアスが
それを見送り、エリアスは呆然としているリリーベルに、厳しい目を向けた。
「勝手にここに入るな! 魔獣は
「は……はい、申し訳ありません!」
ゴランがここに
近くで見るエリアスは、顔は整っているが
今度は柵の隙間ではなく、エリアスに
ところが屋敷に
こちらは裏口なのだろうが、ここから見てもスターリング家の屋敷は、
王宮のような
屋敷の中に一歩入ると、前を歩いていたエリアスはふいに振り向いた。
リリーベルも足を止めると、エリアスはつかつかと近づいてきて言う。
「よくわかったと思うが、この屋敷の裏庭には魔獣舎がある。
「はい……。申し訳、ありません……」
「さっき一度謝っただろう。もういい」
「こんな事情を
「……わかりました」
「本当のお
「は、はい」
「同居だけはこのお試し婚のしきたりで
こくりとリリーベルがうなずくと、エリアスはわずかに
そして、つぶやくように言った。
「……昼食を済ませたら
エリアスの言葉を聞いた途端、かあっとリリーベルは首から上が熱くなるのを感じる。
これまで
(無理もないわ。ぼさぼさ頭に、やせっぽちの手足。あちこちほつれて
リリーベルがしゅんとしていると、エリアスはなぜか困ったように顔を
「わからないことがあったら、
そう言って、
リリーベルは肩を落とし、途中で会った侍女に行き方を教えてもらって、元いた部屋へ戻った。
(このパン、ふっかふかだわ! ハチミツを
リリーベルの部屋に食事を運んでくれたのは、
丸顔で
人目があるので、相変わらず姿を消しているゴランも、テーブルの上でにっこりと
美味しい昼食を食べながら、明るい日の差し込む部屋を、リリーベルは改めて見回していた。
(こうして見ると、とっても
うっとりとそんなふうに考えたが、なぜ自分がここにいるのかを思い出し、慌ててその考えを否定する。
(いくらお部屋が素敵でも、辺境伯様はすごく怖い人だった。……お試しとはいえ、私、一カ月も同居なんてできるのかしら……)
不安になりつつ食事を終えると、侍女頭は浴室に案内してくれた。
リリーベルはたっぷりの湯に
(お風呂も立派だわ。どこもかしこもピカピカにお
リリーベルは首を
(……それにしても、なんて美味しい昼ご飯だったのかしら! あんなに
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