二章 新しい生活
2-1
(ここは……どこかしら)
目を開けて、バラの模様が
王都から
月が出て間もなく出立した馬車が
リリーベルは生まれて初めて体験する長時間の馬車の移動で疲れ果て、ほとんど
美しい小型のシャンデリアがカーテンの
(……
つらつらと考えていると、
「キャッ! キーッ」
「ゴランちゃん……? あっ!」
ようやく完全に目が覚めて、ガバッとリリーベルは起き上がった。
「ここは、そうだわ。辺境伯様のお屋敷……のはず!」
上体を起こしたリリーベルは、あまりに大きくふかふかのベッドに、まず
疲れもあったが、こんなにぐっすり
「どっ、どうしよう。ぐーぐー眠ってしまったわ。今、何時なの?」
キャッキャッと楽しそうにしているゴランを
「このお日様の様子だと、もうお昼だわ!」
初めて
リリーベルが
そしてようやく、自分が下着姿で眠っていたのだと気が付く。
「
真っ赤になりながらワンピースを着たリリーベルを、肩に乗ったゴランがよしよしと、頭を
「あなたが
リリーベルは、そっとゴランのすべすべした後頭部を撫でた。
「私には、荷物はなんにもないけれど、あなただけが大事なお友達よ。何があっても、ずっと一緒にいましょうね」
リリーベルが言うと、ゴランはキャッと
そして、ぴょいと肩から
「え? 何か見えるの……?」
そう言って窓を開いたリリーベルは、そこに広がる景色にびっくりした。
どうやら裏庭らしく、
部屋は二階にあり、手前に
それは鉄の
柵の中に放たれていたものは、馬よりも大きく、銀色に光るふさふさとした体毛で額に角を持つ、赤い
(ひいいい! ままっ、魔獣っ! あれが! ……こっ、
リリーベルがいる建物から
それほど魔獣たちは、ごく
口から
ところが、そのとき。
「キューキュッ!」
なんのためらいもなく、窓枠からゴランがすぐ手前まで
「っ……きゃあああ!」
そして自分も夢中で窓を乗り越え、決死の
はずみで
(パーティーのときとはわけが違うわ! 今度こそ本当に、食い殺されてしまうかもしれない!)
半泣きになりながら、リリーベルは草を
ゴランは滑るように地面を移動し、あっという間に部屋の天井ほどの高さがある、鉄柵にたどり着いてしまった。
「
両手を突き出して
しかし願いも
「ゴランちゃーんっ!」
はあはあと肩で息をしながら、ようやくリリーベルは柵に飛びついた。
そうして中の様子を見て、ぞっとする。
巨大な魔獣がゴランの目の前まで歩み寄り、長い鼻先を近づけていたのだ。
ゴランの大きさは、魔獣の鼻先ほどしかない。
さらにはその後ろからも別の魔獣が、ゆっくりと近づいてきている。
「やめてーっ! ゴランちゃんを食べないで!」
リリーベルは必死に、人が通るには
ゴランが魔獣に食い殺されてしまうかもしれない、という恐怖の前には、自分の身に危険が
どうにかずるっと隙間を通ったリリーベルは、つんのめって転びそうになりながらもゴランのもとに駆けつける。
そしてゴランに
「ゴランちゃん、
「キュッ、キー?」
いつも通りのゴランの様子に
恐る恐る
「――っ! あ……ああ……っ!」
至近距離でこちらを見つめる、魔獣の顔面だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます