1-2
(えっ! そんな、まさか!)
ぴょこんとエンジ色の
リリーベルが手塩にかけて育てた、伝説の存在である植物。
ゴランと名づけた、マンドラゴラだった。
(ゴランちゃん! ついてきたら
これほどリリーベルが
マンドラゴラは魔獣と同様、太古の時代に生息し、現在では
マンドラゴラの体の部分は根菜なのだが、人間の体形にとてもよく似ている。
頭は丸く、目も口もふにゃりと笑ったような
大きさは生後二カ月くらいの子猫といったところだろうか。
頭の上には大きな
ゴランはこちらに向けて、ぷっくり
そして、てけてけと歩き始める。
(隠れていないと駄目よ! 見つかったら
リリーベルは慌てて
そして
魔草のゴランは、簡単な
今使った魔法は、リリーベル以外から姿を見えなくするというものだ。
これなら見つからない、とリリーベルが安心したのも
(ちょっ、ちょっと待って! 何してるの、そっちは大広間……!)
足元をすり
「……の中に、予備の髪飾りがあるとおっしゃっていました」
「そうでしたか! では、すぐに取ってまいります!」
ドアの
(ああああ! 大変、どうしよう!)
リリーベルは青くなり、大急ぎで後を追いかける。
「あっ、あのっ、申し訳ありません、急用が……!」
女官に言い訳をしながらリリーベルも大広間に足を
( ――な……なんてすごいお部屋……!)
部屋などという規模ではない。
何しろ、王宮における国王
同時にそれらはリリーベルに、自分があまりに
(
リリーベルは
(……なんだか自分が、宝石箱の中に落ちた
リリーベルはなるべく目立たないよう必死に
なんだろう、とちらりと視線を向けてくる貴族もいて、そのたびにリリーベルはひやひやする。
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい、申し訳ないです、ご
幸い
リリーベルが床をのそのそ這い回る間にも、控室の侍女たちと同様に、令嬢たちの噂話が耳に入ってくる。
「陛下のご招待だから参りましたけれど、本音を言うとあまり気乗りしませんわ」
「ですわよね。兄に聞いたのですけれど、辺境伯のエリアス様といえば、王立学校にも
「あら。
「たまにみえても誰とも話さず、近寄りがたい生徒だったそうですわ」
「なんだか変わった怖い方ですのねえ。辺境伯は、国の護りの要。……そう言うと聞こえはいいですけれども、実際は
「ええ、
「そのときは一カ月だけ
(エリアス、っていうのが、辺境伯様のお名前なのね、きっと。……ああ、それよりどうしよう。ゴランちゃんが見つからない)
リリーベルがそうして、なおもテーブルの下をごそごそと這い回っていたそのとき。
高らかにラッパが鳴り、衛兵が大きなよく通る声で、国王の来場を告げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます