第34話:副会長の実力2
神巫さんの降霊したヤマタノオロチが火を吹いた。
その前に、俺は【瞬間移動】の能力を発動し、神巫さんの前へと姿を現した。先ほどの件があるから使いづらくはあったが、背に腹は変えられない。
戦いが始まる前に起動していた【波動支配】の能力によって、ヤマタノオロチが放つ技が相当なものであることはわかっていた。俺の周辺の波が大きく揺らめいたのだ。だから、全く波の蠢かない神巫さんの位置に移動するしかなかった。
【瞬間移動】を発動するには、場所を知らなさすぎる。
「そう来ますよね」
俺の考えがわかっていたかのように神巫さんは構えの姿勢をとる。
近接戦闘をする前に、神巫さんの後ろにいるヤマタノオロチをどうにかする必要がある。
「【脳内模倣】インベリダム・ファクルタス」
唱えることで俺の半径数メートルで発動する能力が無効化される。降霊の媒体である神巫さんが無効化範囲内にいることで、ヤマタノオロチは呆気なく姿を消し去った。
強敵がいなくなり、安堵したのも束の間、神巫さんは俺に回し蹴りを繰り出した。
素早い蹴りに交わす暇がなかったため、蹴りの飛んでくる場所に腕を添え、攻撃を受け止める。蹴りの強さは凄まじく、あえなく吹き飛ばされる。
「【脳内模倣】ヴァリッド・ファクルタス」
吹き飛ばされながらも、俺は自分の攻撃に徹することにした。
能力を有効化する。そこで、【波動支配】が有効化されたことで可視化される自分の元にやってくる3本の波に目を瞬かせた。
【瞬間移動】の能力を発動し、神巫さんの背後に移動する。
移動した瞬間、先ほど俺のいた場所を3本のクナイが通過した。
堂前さん同様、神巫さんも武器を持っている。能力を無効化しての近接戦闘は自分を不利にするだけのようだ。
中距離から仕留める。俺は彼女の背に手を翳した。
【空間爆撃】を彼女の両サイドに設置する。しかし、爆破する前に彼女は地面を蹴り、その場を離脱した。
「ちょこまかと動かれるのは非常に面倒ですね」
俺の方を向いて両手を合わせる。
「【幻獣召喚】ハヌマーン」
能力と幻獣名を唱えると、俺と彼女を分つよう大きな猿のシルエットが浮かび上がる。ハヌマーンは持っていた棒を巧みに振るいながら俺に攻撃を仕掛ける。
ハヌマーンの攻撃に対抗するために【多様剣聖】の力で2本の剣を生成。両手に持ち、けn剣をクロスさせて棒を受け止める。
それだけではない。柄を握った手の人差し指をハヌマーンに向けることで、異空間から放出された剣がハヌマーンを突き刺す。
ハヌマーンは悲鳴をあげながら姿を消し去った。
幻獣とはいえ、異能力を持ったこちらに部があるようだ。
一体倒したことで気が抜けそうになったのを、周辺を蠢く波が食い止める。
慌てて体を前に倒す。
その瞬間、背中が熱を帯びる。俺の後ろを炎が通過していった。
前転しながら炎の出所を確認。そこには翼と尻尾を生やしたドラゴンの姿があった。
前転し、体制を整える。
地面に映る俺の影が大きく塗りつぶされる。上を見ると、二足で立つ狼の姿があった。
狼男は俺に狙いを定め、鋭い爪を生やした腕を振り下ろす。狼男の手に剣をぶつけて攻撃を受け切り、【瞬間移動】の能力を使う。
出現先は神巫さんの頭上。
2本の剣を構え、一気に振り下ろす。
影に気づいたのか、神巫さんは地面を蹴って大きく後退する。
逃すわけにはいかない。
着地したところで、持っていた1本の剣を神巫さんに向けてぶん投げる。剣は手裏剣のように横回転しながら神巫さんに近づいていく。
「ふっ!」
迫り来る剣に対して、神巫さんは胸ポケットに手を入れ、小刀を取り出した。タイミングをうまく合わせて俺の投げた剣を弾いていく。
まだだ。
俺は持っていた剣の先を神巫さんにかざす。しかし、それは彼女の前に現れた狼男によって阻まれた。狼男はそのまま俺に向けて攻撃を繰り出す。
「【脳内模倣】」
【透明成化】の能力を発動。
姿が消えたことで狼男の攻撃は止まった。
一旦、退却した方が良さそうだな。
俺は近くにある建物に目を向ける。ほとんどの建物はヤマタノオロチの攻撃によってやかれてしまっていた。無事なところを標的とし、【瞬間移動】によって一気に近づく。
「マジかよ……」
神巫さんから距離をとり、ようやく安心して全体を見渡せるようになったところで、俺は驚愕の声を上げた。
空を舞うグリフォンやワイバーン。地上を歩く狼男、マンティコア、ケルベロス。自分たちのいる都市は完全に幻獣の巣窟となっていた。
俺がハヌマーンと戦っている間に、神巫さんは大量の幻獣を召喚したみたいだ。これは【瞬間移動】で彼女の元に近づいて【能力無効】で召喚した幻獣を蹴散らすしかない。
しかし、これは非常にリスキーだ。
先ほどの近接戦闘によって彼女は小刀を握りしめるようになった。近くに行って【能力無効】を使うということは俺は無防備な状態で彼女の剣術を受けることになる。
肉弾戦には自信がない。
ここは一旦、隠れて作戦を立てるしかなさそうだ。
俺は隠れるのに最適な場所を探す。思いの外すぐそれは見つかった。
電車の通っている地下のエリア。
そこであれば大きな生物は入ってこれないだろうし、万が一ドラゴンが一斉に火を吹いて俺を蹴散らそうとしても避けられる。
アイディアが浮かんだところで早速行動だ。
俺は視界に映った地下に繋がる階段のあるところまで【瞬間移動】で一気に近づき、階段を降りて地下エリアへと入っていった。
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