未来を見据えて

 桜庭 玲奈です。クラスの厄介ごとを任される私は、なんと田中 ミゲル君のお世話係に任命されてしまいました。これからどうなることやら。


「桜庭さん、学校案内ありがとうございます♪」


「あはは・・・どういたしまして。」


 私の笑顔はさぞ引きつっていることだろう。けれど田中君の笑顔は満面の笑みであす。

 お世話係に任命されて何もしないわけにはいかないので、私は昼休みに田中君を連れて学校見学をすることにしました。田中君は何を見ても新鮮な様で、まるで古代美術館を見に来た子供のようにはしゃいでいます。

 ちなみに田中君は防護服を脱いでおり、こうしていると普通の栗毛の美少年なので、何だか連れて歩くと私の格が上がった気がします。


「田中君、ちょっとそこの中庭のベンチで休まない?」


「分かりました。」


「ジュース奢ってあげるよ。何が良い?」


「汚染されて無い物ならなんでも。」


「・・・分かった。」


 逆に汚染されている飲み物が何なのか知りたいですが、ここを深堀すると私の方が火傷しそうなのでやめておきました。

 二人でベンチに座りオレンジジュースを飲んでまったり、すると田中君が空を見上げてポツリとこんなことを呟きました。


「空って青いんだなぁ。」


 未来の空・・・青く無いんだろうか?

 私は田中君の未来人発言に恐怖を覚え始めました。だって先のことが怖くなることしか言わないんだもの。もっと空飛ぶ車があるとか、世界から戦争が無くなって平和になったとか言って欲しいですね。

 ここは話題を変えましょう。


「田中君、学校は楽しい?」


「はい、見るもの全てが新鮮で、更に新鮮な空気も吸えて幸せです♪」


「あぁ、そうなんだ。」


 ここまで来るとこの人は本当に未来人なんだろうなぁって思います。だって汚れを知らない青い瞳をしているんですもの。この瞳が嘘をついているとは到底思えません。


「あっ、けど一つ困ったことがあって。」


「えっ、何?何でも話してよ。」


「それがですね、水樹先生がしきりに『私は未来に結婚してるの⁉ねぇ‼答えてよ‼』って聞き迫った声で聞いて来るんです・・・僕、あれが怖くて。」


怯えた顔になる田中君。怖いよな四十の人から鬼気迫った顔されたら。


「分かった、先生には私からきつく言っておくから、二度とこんなことが無い様にするよ。」


「ありがとう、桜庭さん。過去に来て、君のような人に出会えて良かった。」


 美少年の笑顔が眩し過ぎて、危うく私は失明するかと思いましたが、何とか耐えました。ここでまた未来人発言があったので、我慢出来なくなった私は田中君に聞いてみることにしました。たとえ世界政府から消される恐怖よりも、高校生の知的好奇心の方が上回りました。


「田中君の未来はどうなってるの?どうして田中君は過去に来たの?差し支えなければ教えて欲しいな。」


 私のこの質問に田中君は少し黙った後、真剣なまなざしを私に向けました。


「大気汚染、放射能汚染にまみれた世界を変える為、その為に僕は未来から過去にやって来た。愚かな人間に警鐘を鳴らすのが僕の使命なんだ。」


 ・・・お・も・い。メイウェザーの右ストレートより重い一撃に私は頭がくらくらしました。大気も汚れ、放射能まみれって夢も希望も無いじゃない。


「地球クリーン装置を何としても完成させないと。全てが手遅れになる。」


 地球クリーン装置て、全くどんな機械か想像も出来ないけど、地球を良くする装置ってことだけは分かりました。

 さて、更に突っ込んで聞いてみますか。


「あと何年後に地球は駄目になるの。」


 私のこの質問に田中君はすんなりと答えてくれそうでした。


「じゅう・・・」


「分かった‼私の進路は今決まった‼私も地球クリーン装置を作るの手伝うよ‼」


「本当ですか⁉嬉しいです♪」


 私と田中君はガッシリと右手と右手で握手し、ここに地球クリーン同盟は結成されたのでありました。十数年ってのは流石にショッキングでしたが、やればなんとかなるでしょう。私は身を粉にして頑張る所存であります‼

 明るい未来は私達の手で掴みとるんだ‼




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未来転校生~未来からやって来ましたけど、何か?~ タヌキング @kibamusi

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