未来転校生~未来からやって来ましたけど、何か?~

タヌキング

未来から来た男

 私の名前は桜庭 玲奈(さくらば れいな)、高校二年生。もずく酢が好きなだけが取り柄の女の子です。

今日は朝のショートルームの時、40歳独身の担任の女教師の水樹先生が、こんなことを言い始めたのでクラスがざわつきました。


「今日は、なんと転校生がこのクラスに来てくれました。」


ざわ・・・ざわ・・・。

そんな擬音が聞こえてくるぐらいに、ざわつくクラス。

もちろん良い意味でざわついているのですが、こうやって転校生に期待を膨らませ過ぎて、普通の子が来た時にテンションを露骨に下げるのはなんなんでしょうね?

転校生の子も気を悪くしそうです。


「皆、しかもただの転校生では無いのよ。なんと未来からやって来てくれたの♪」


 水樹先生のこの爆弾発言に、クラスのみんなはざわつくのをやめて、みんなして「えっ?」という顔になりました。

未来からの転校生??もちろん信じたわけではありませんが、ボケにしてもつまらないので、私は婚期を逃し続けた水樹先生が狂ってしまったのだと、可哀そうな気持ちでいっぱいになりました。


「ちょ、ちょっとみんな、憐みの目を私に向けないの‼本当なのよ‼本当に未来からの転校生がやって来たの‼厳然たる事実なのよ‼まぁ、政府の人たちの圧力で詳しいことは言えないけど・・・それでも未来から転校生がやって来たの‼」


 水樹先生が弁明すれば弁明する度に虚しくなります。誰か彼女を抱き締めてあげられる度量のある男の人は近くに居ないモノでしょうか?


「もう分かったわ‼百聞は一見に如かず‼転校生に入って来てもらいましょう‼どうぞ‼ミゲル君入って来て‼」


 ガラガラと入口の引き戸が開いて、そこから入って来たのは、変わった姿の人物でした。


「皆さんこんばんわ、田中ミゲルです。どうぞよろしく。」


 ミゲル君は挨拶してくれましたが、みんなは彼の挨拶なんて頭に入って来ません。あまりに奇抜な格好に度肝を抜かれているのです。

簡単に言えば潜水服でしょうか?それも体の体型も分からいぐらいにしっかりと着こむタイプの、海を深く潜るヤツです。丸いヘルメット丸い窓から、あどけない少年の顔がチラリと見えますが、一体どれだけの人が彼の顔を視認できているのか?私には分かりません。


「未来から来ました。ゆえあって仔細は語れませんが、これから仲良くしてください。」


 ミゲル君はにこやかに笑っている様ですが、私も含め、クラスのみんなは状況把握に頭をフル回転しているので、彼の笑顔に応えることが出来ません。


「もうミゲル君、いつまでそんな服着てるの?この世界の地球は大丈夫だって言ってるでしょ?ほらこんなの外して。」


 水樹先生が後ろからミゲル君のヘルメットを掴みます。それに対してミゲル君は非常に焦った様子です。


「わっ‼やめて下さい‼自分のタイミングで脱ぎますから‼」


「いやいや♪先生が脱がしてあげるから♪」


「や、やめろーーーーーー‼」


 ミゲル君の必死の抵抗虚しく、ポーンとヘルメットは脱がされ、彼のパーマがかった栗毛と綺麗な青色の瞳が露わになりました、あどけなく幼さ残る顔は美少年と呼んでも過言は無い様に思えます。この時、ショタ好きの多い私のクラスの女子が少し湧きましたが、ヘルメットを取られたことでミゲル君は悲鳴を上げました。


「ぎゃあああああああああああああ‼体が内側から溶けるゥうううううううううう‼」


 地面をバタンバタン‼と、のた打ち回りながら暴れ始めたミゲル君。その様子に恐怖を感じなかった人はいないと思います。

水樹先生も戸惑っている様子でしたが、すぐに気を取り直しました。


「だ、大丈夫だから‼ちゃんと息できてるでしょ⁉」


「ぎゃああああああああああ⁉・・・はぁはぁ・・・ほ、本当だ。呼吸出来てる。」


 まるで呼吸が出来ているのが信じられないといった感じですね。先程は体の内側から溶けるとか言ってましたし、彼のリアクションは芝居には見えないリアル感があって、メチャクチャ怖いです。


「息が出来るなんて・・・うぅ、ここは本当に汚染される前の地球なんですね。」


 目に涙を浮かべるミゲル君。どうやら呼吸できることに感動している様ですが、ちょいちょい怖いワードが挟まって来るのが怖いです。

仮に彼が未来から来たと仮定して、どのぐらい未来から来たのでしょうか?

・・・近い未来で無いことを祈ります。






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