第30話 僕だけの武器の力
『向こうに落ちたぞ』
『追うか? 追うか?』
コボルトたちが話し合っているね。ここでダークを追撃するのは得策ではない。皆、止まれ。止まってくれ。
「待つんだ皆! ダークは必ずこっちに向かってくる! そういう性格だ! だから、ここは奴を追撃するんじゃなく、待ち受けるべきだ!」
僕の言葉にコボルトたちが、ざわつく。彼らも興奮している。話を聞いてくれると良いんだけど。
『待ち受ける? 本気か!?』
『だけど大将の言うことは聞いとくべきだぜ』
『大将が待てというなら俺は待つよ』
コボルトたちは僕の話を聞いてくれた。助かるよ。きっと、僕と彼らのこれまで築いてきた信頼のおかげだ。彼らが待ってくれるなら、僕には作戦がある! 敵は怖いけど、勇気がわいてきたぞ。
「皆はダークが動き出した時に備えて、防御を固めて欲しい! ジンから離れず、彼の指揮を受けられるようにしておくんだ! その間に、僕とジャムで上空の鷹を全て撃ち落とす!」
『全て!?』
コボルトたちは驚いているが、僕とジャムなら、というか銃の力があれば可能だよ。近代兵器の力を大鷹の騎士団に分からせてやる! 絶対に、いける気がする!
「ジョー、本当におまえに任せて大丈夫か!」
少し離れたところから、ジンが僕に聞いてきた。心配してる、というよりは僕を信じてくれている。一応の確認って感じの聞き方だ。彼から信頼してもらえてると、凄く嬉しい!
「兄さん、任せといて!」
「そっちは任せた!」
ジンは手振りで防御指揮をとっている。魔物会話のスキルを持たないジンでも、身振り手振りである程度コボルトたちの指揮が可能だ。彼の指揮とバフによって強化されたコボルトの集団は、そう簡単に倒すことはできないぞ! 頼もしい限りってわけ。
「……さ、ジャム。空の的を狙うよ」
『あいあい! 任しといて!』
上空で旋回する大鷹の騎士団は、まだ動揺しているのか、大きな動きを見せない。リーダーを撃ち落とされたからな。困惑しているのかもしれない。ま、空を旋回してるだけなら狙いやすいってもの。悪いが、ダークについてきたのなら、容赦はしないよ!
狙いを絞り、引き金を引く。直後、着弾! 大鷹がバランスを崩して落ちていく。向こうは何が起きてるかも理解できてはいないだろう。銃なんて武器を使うのはこの世界で僕だけなんだから! 僕は銃というアドバンテージを活かして勝つ。勝てるはずだ! いくらでも、お前たちを撃ち落としてやる!
『ジョーちん! 何体か大鷲がこっちに向かってきたよ!』
「だね、ジャム。落ち着いて撃ち落とすよ。いざとなれば、ミーミーが居るからね」
『らじゃ!』
ミーミーは僕の側で待機している。いざとなれば、ミーミーの助けがある。そう思うと落ち着くことができる。大鷹がこっちに向かってきているということは、それだけ距離が縮まっているということ。それなら、それで戦いようはあるのだ。クールにいくぞ。
「ジャム、散弾モード」
『あいあい!』
銃の形が瞬時に変形する。スライムの変形能力って本当に便利だ。なんて思いながら、接近してくる大鷹に向かって引き金を引く。直後、散弾が大鷹を襲った。どんなもんだい! さらに、引き金を引く!
弾丸はジャムがあっという間に生成してくれるからリロードの動作なんて考えなくて良い。次々に敵を撃ち落とせるのは、脳内麻薬がドバドバ出てくる。ヤバイな。ちょっとした快楽だぞこれ。
馬鹿正直に突撃を繰り返す大鷹の騎士団。彼らは僕の敵ではなかった。せっかく空を飛べるというのに、彼らがやることは勢いに任せた突撃だけ。銃が相手でなければ、それでも通用するのかな? でもね。僕は銃を使うんだよねえ!
地上へ落とされた騎士の中には、まだ動ける物も居るだろう。だけど、復帰には時間がかかるはず。僕とジャムは楽な気持ちで空の敵を落としていく。
やがて、僕に近づいても撃ち落とされるだけだと彼らも悟る。彼らは、逃走し始めた。おいおい、待てよ。あんたらのリーダーを置いて逃げるのか?
「ジャム、狙撃モード」
『やっちゃおう!』
銃の形が再び変形。今度はスナイパーライフルだ! 逃走を始めた騎士団の背中を狙い、発射! 命中! さらに大鷹を撃ち落とす!
やがて、フェンリル草原の空から大鷹の群れは姿を消した。群の全ては撃ち落とせなかった。流石に数が多かったし、結構早い段階で撤退の判断をされたからな……悔しい! が、これで良しとしよう。
「大鷹の騎士団が壊滅!? ありえん!」
遠くからダークの、困惑を隠せない叫びが聞こえてきた。良いねえ。そういう驚きを隠せない様子、好きだよ。たまらないねえ。
「ジャム、お疲れ様」
『やったね! でも、これで終りじゃないっしょ。ジョーちん』
「ああ、終りじゃない。これからだよ」
まだ、ダークが残っている。地上に落とされても、息のある騎士たちも居るだろう。それに、まだ嫌な予感はするんだよね。ダークはまだ戦力を隠しているんじゃないかな? そういう予感がある。
「とりあえず、ジンたちに合流だ」
『あいあい』
僕の言葉に賛同するようにミーミーが「うぉん!」と鳴いた。
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